恐怖日和 ~ホラー小説書いてます~

見よう見まねでホラー小説書いてます。
たまにグロ等閲覧注意あり

山路譚【きょうも山道を走るのだ・4】

2021-03-08 11:47:03 | 山路譚




 山道をよくドライブする。
 トンネル内を走っていた時、歩道用通路にそこそこ大きな黒い塊が置かれているのを目にした。
 それが何なのかはすぐ通り過ぎてしまったのではっきり見えなかった。黒い布をかぶせていたように思えるが、それもはっきりわからない。
 誰かが置き捨てたゴミなのか、それとも凍結防止剤なのか。
 まったく何かはわからないが、誰かがうずくまっているように見えなくもなかった。
 んなことないか。
 進む道にはトンネルがいくつもあり、次のトンネルに入っても同じような塊があった。次もその次も。
 いやこれもう、真冬に向けて準備された凍結防止剤に決まりでしょ。
 そう独り言ちるも、気になるのが、その黒い塊の高さが見る度に伸びていることだ。まるでうずくまる人が立ち上がっていくかのように。
 最後のトンネルに入る。
 ずっと先にいる黒い布を被る人のようなものが遠目に見え、思わずスピードを緩めてしまった。
 激しくクラクションを鳴らしながら追い越す後続車に瞬間気を取られ、視線を戻した時にはトンネル内にもう何もいなかった。


山路譚【きょうも山道を走るのだ・3】

2021-03-08 11:39:28 | 山路譚




 山道をよくドライブする。
 昼間でも深夜でも、どこの山道を通っていても今まで怪異に出会ったことはない。
 だが、「ん?」というようなことは多々ある。気のせい、目の錯覚、そう言ってしまえばそれまでだが、さっきのは何だったのだろうと後々まで気になって仕方ない。あの時あの場で確かめておけばよかったと後悔するが、もしそうしていたら無事では済まない怪異に出会っていたかもしれない。
 ドライブコースのほとんどが心霊スポットと呼ばれる場所のある地域を通る。知って通っていたわけでなく、後になってそこがそう呼ばれていると知るのだが、すぐそばを通っていたと思うと感慨深い。
 だからと言って、明らかな怪異に出会うことはないだろうが。

               *

 山中には殺人事件の遺体遺棄現場もあり――後に心霊スポットになっている――やはりこれも知っていて走るわけでなく、こちらのほうのドライブコースに遺体を遺棄する事件が発生するのだ。山中はいろんな意味で怖い場所だと痛感する。
 だが、ドライブし始めた頃は狭く険しかった山道も今や広くきれいに整備されずいぶん走りやすくなった。その分、怪しさは薄れた。
 最近、家の近くで今までいなかったカラスを見かける。付近の自然が開発され消えてなくなったからだろう。
 深い山も開発され、畏怖が消えた時、追われた怪異が街に流出するのはもうすぐかもしれない。