KANZAKI'S WALK

real play records から神崎ひさあきの報告

JACKIE McLEANの想い出

2006-05-13 01:44:20 | Weblog
JACKIE McLEANが亡くなって一ヶ月が過ぎた。

高校生の頃、地元の大学のジャズ研に通って、初めて覚えたブルース曲が、McLEANの演奏するあのSONNY CLARKのCOOL STRUTTIN’だった。このアナログ盤は、今でも僕の部屋の壁に立てかけてある。McLEANのあの独特の音程感と歌い方は、真似出来るものじゃない。しかし、どうしても知りたかった。大学生の時にとうとうその機会が訪れた。McLEANが、確か新宿厚生年金会館ホールに来たのだ。やはり、あの音だ。

コンサートが終わり、僕は、一人で楽屋に向かった。誰の紹介もなくだ。まだ、セキュリティという言葉が一般的になってない穏やかな時代だった。一応、呼び止められたけど、図々しくも偉そうに、McLEANに用があるとか言って、その場を急ぎ去り、楽屋を探した。
関係者も誰もいない殺風景なバックステージだった。すると、ART FARMERとだったと思うが、笑いながら、2人が歩いている後姿が見えた。僕は、用意してきたつたない英語でMcLEANを呼び止め、どうやったらあなたのような音が出せるのか聞いた。McLEANは、僕を楽屋の中に招き入れて、ドアを閉め、僕の前に立って、じっと僕の目を見た。
その後、少し間があったのだけど(この間、怒られるのかなと緊張したのを覚えている。)、McLEANは、サックスを構え、(もちろん、二人きりだ。)目の前で、とてもスロウなブルースをとても大きな音で吹き始めた。PARKER’S MOODだ。あまりに素晴らしい音で、僕は、涙が出そうだった。2コーラス演奏して、あの LIVE AT MONTMARTREの時と同じ高笑いで、僕の肩をたたいた。僕は、拍手した。
後の事は、よく覚えてないのだけど、それが、McLEANの僕への回答なのだ。色々と質問を用意してたけど、間近で聞いたその音が全てだ。後は、どうでもよくなった。その時、僕にとって一番大事なのは、McLEANのハートだった。大事な事を教わった。