so far, not so bad

"unselfconsciousness"

gathering no moss

2016-11-07 22:57:49 | 
もやもやしていたものがしっくりと収まった気がする。

『つながりの作法 同じでもなく 違うでもなく』綾矢紗月 熊谷晋一郎 著

アスペルガー症候群の方と脳性麻痺の方との共著の本で、
それらの症状の方々が世の中とどう向き合って生きていくか、というのが主な内容。

ただ、著者もそう書いているが、
病気や症状に留まらず、コミュニティの中で他者とどう"つながって"いくか、に着目している。
そして、著者の意図とは違うところかもしれないが、それがとても参考になり、
ぼんやりと想像していた事が、言葉を経由して、かなりはっきりとした像を結んだ印象を持った。

何についてかというと、現代社会として不可欠な要素のように言われる「変化への適応」。
時間がかかった上での100%より、60%程度の精度でも構わないから事を進めていく方が良しとされる雰囲気。
次々と新しい分野への適応が求められる中で、反応と要約とアウトプットの速さがもてはやされる風潮。
その中に身を置いていると、落ち着かず、自分の居場所が無い感じ、ただただ通り過ぎるだけで何も残らない感じがずっとしているのだ。

さらに、周りを見渡しても、
コミュニティの中で何らかの理由で内向きの悩みにしてしまい、もがいている人がいる。
それを病気と認定されるまで抱え込んでしまう人もいるし、
そうは見せないまでももやもやとした霧の中で右往左往している人もいる。

もちろんそれらは恐らくこの本で説明されているタイプの症状を持っているからではないし、
コミュニティが極端に威圧的、閉鎖的、排他的等々の性格を持っているからでも多分無い。
にもかかわらず、個人的にも違和感を感じたり、身の回りを見てもそれなりの数のそういう方がいるのはなぜなのだろう、と、ずっと引っかかっていたのだ。


本自体はどの章も興味深い。
それぞれの病気に対する自分の無知もさながら、
著者が意図した通り、病気に対する情報に留まらず、様々なものに対して広い意味で応用が利く気がするのだ。

ただ実は、一番なるほどと思ったのは最後の「あとがきにかえて」だった。
上記の問題点をぼんやりとだが意識していたために、
それをまさに理路整然と言語化し説明されたような気がして、なるほど、と唸ってしまった。


「転石苔むさず」ということわざにも、異なった解釈があるそうだ。
苔はむした方がいいか、むさない方がいいか。
そしてどちらがあなたには向いているのだろうか。


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