『ありがち日記』

寺地はるな『架空の犬と嘘をつく猫』

何かを守るための嘘は優しいけど、ちとやっかいなものでもあるね…



ストーリー:
空想の世界に生きる母、愛人の元に逃げる父、その全てに反発する姉、そして思い付きで動く適当な祖父と比較的まともな祖母。そんな家の長男として生まれた山吹は、幼い頃から皆に合わせて成長してきた。だけど大人になり彼らの《嘘》がほどかれたとき、本当の家族の姿が見えてきて――?これは破綻した嘘をつき続けた家族の、とある素敵な物語! 

一つの家族にまつわる話が5年ごとに綴られていきます。
羽猫家の一番下の弟の青磁が事故で亡くなったことが大きなきっかけとなって、バラバラに崩壊しかけた家族。重い話ではあるけれど、全体にまとっている空気は柔らかく優しいです。そこが寺地さんらしい…。

それが正しいかどうかはわからないけれど、みんな何かを守りたくて嘘をつく。子供の頃の山吹が、母のためにつく嘘がとても切ない。

30年の月日が流れ、すっかり大人になった姉弟と、両親がそろって遊園地へ行くシーン。当時できなかった家族らしいことを、ぎこちないけどやっとできるようになった大事なシーン。とても素敵だと思いました。

最後に。読むまでは「???」だったタイトルの意味も、「架空の犬」とは山吹がつらい現実から逃避したい時に頭の中で飼って撫でている犬のこと、そして「嘘をつく猫」は破猫家のことだとわかりました。山吹にとって「架空の犬」がいなかったらどうなっていたんだろう。そうやって彼の中で折り合いを付けながら大人になったんだなぁ…。うぅ…アキラくんもそうして何とか折り合いを付けられるようになると良いなぁ😭

はぁ…良い話だった。寺地さんの本はそっと背中を押してもらえたり、柔らかい空気で包んでくれたり、そんなところが魅力だと思っています。新刊がこれからもどんどん発売されるみたいなので、まだまだ追いつけないけど楽しみです🎵

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