『ありがち日記』

「台湾、街かどの人形劇」

どんな文化芸術も、たとえそれが人々の生活の一部であったとしても、必要でなくなる時があるんだろうか…


ストーリー:
台湾の民間芸能の一つ「布袋戯」の人形遣いチェン・シーホァンは、80歳を超えてなお世界中で精力的に公演を行ってきた。人間国宝に認定された彼が動かす人形たちの細やかで生き生きとした動きは、人々の心をつかんで離さない。1970年以降、現代風にアレンジされた布袋戯がテレビで人気を集めるようになるが、伝統的な布袋戯の観客は減少していく。チェン・シーホァンは何とか伝統を守ろうと奔走する。 

人間国宝に認定されているけれど、悠々自適な隠居生活とはいかないのが芸の道。伝統芸能の継承者問題は常々取り上げられる課題だけれど、ここでもやはり起きていた。しかもかなり存続は危うい…。

何とか守りたいという気持ちはあっても、人形劇だけでは食べていけないという弟子の言葉が重い。伝統芸能や人間国宝という肩書、それでもてはやされたとしても、政府からのお金をもらうことすらままならず、それでも存続が難しいという現状に、頭を抱えたくなる。これ布袋戯に限ったことじゃないじゃん!!と。

文化芸術は一瞬にしてできるものじゃないし、いったん途切れてしまったら、ほぼ完全復活は不可能と言っても過言ではないと思う。とにかく記録をしようという老師のお気持ち、痛いほどよくわかって、ずっと涙が出そうだった。

ついでに、父と子の関係など、複雑な想いも抱えてらっしゃるようだけど、それでもなお伝統を継承することに一生をかけているというその姿が美しくて。
人形の動き一つ一つも美しく、まるで本当に人間のような仕草に溜息が出るよ。どうか無くさないで欲しい。

いろいろ今の状況とかと重ね合わせてしまう箇所が多々あって、始終泣きそうだったな。貴重なドキュメンタリー、時間を合わせて観られて良かった。

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