道尾さんの本を読もうとして「どれを読もう…」と迷った時に、
質問に何個か答えていくとおススメの道尾作品を選んでくれるというサイトがあって、
今回はそれに頼ってみたものです。
『ノエル』なので、クリスマス感強いのかと思いましたが、時期はあんまり関係なかったです。
孤独と暴力に耐える日々のなか、級友の弥生から絵本作りに誘われた中学生の圭介。妹の誕生に複雑な思いを抱きつつ、主人公と会話するように童話の続きを書き始める小学生の莉子。妻に先立たれ、生きる意味を見失いながらボランティアで読み聞かせをする元教師の与沢。三人が紡いだ自分だけの〈物語〉は、哀しい現実を飛び越えてゆく――。最高の技巧に驚嘆必至、傑作長編ミステリー。
「光の箱」「暗がりの子供」「物語の夕暮れ」という3つのストーリーがあって、
その3つを最後につなぎあわせる形で「四つのエピローグ」があります。
現実のお話と、童話とが交互に出てくる形で語られていき、
全てのエピソードは童話でつながっているという感じです。
どのエピソードも暗い雰囲気で始まるのですが、
最後にはどんでん返しというか、仕掛けがちゃんと用意されていて、
ほんわかと心温まる展開で終わります。
仕掛けと言ってしまうと人為的な感じがしちゃいますが、
特に、四つのエピローグですべてがつながった時に、
奇跡の物語だ、全体が大人に向けて作られた童話だったのかも…と思いました。
子供の頃、本(おとぎ話)の世界に没頭して入り込んだという経験がありますが、
そういうことを思い出させてくれるものでもありました。
「光の箱」は、長い間いじめられてきた圭介が、
同じような目をする時がある級友の弥生とともに絵本を作るお話。
二人だけの世界がある日突然壊れ、長い月日が経ちます。
大人になった二人が、昔を思い出しながら同窓会に向かうのですが、
最後に驚きの仕掛けがありました。
圭介は童話作家になっています。
「暗がりの子供」は、その圭介と弥生の絵本を読んでいる莉子という女の子のお話。
この子も自分の体形のことで学校にお友達もいなくて寂しい思いをしています。
間もなく赤ちゃんが生まれるお母さん、そして大病で入院しているおばあちゃん。
絵本の主人公・真子と会話しながら絵本の続きを書き始めますが、
もうこのままではどんどん自分の中の悪いものに染まっちゃうよ…という時に
絵本の本当の続きを読むことによって立ち直ることができます。
この時生まれた妹は真子という名前を付けてもらっています。
“いるもの”と“いらないもの”とについて。
弟が生まれた時の、自分の子供の頃と重ね合わせてしまう部分もありました。
最後は妻に先立たれた元教師の与沢のお話。
ボランティアで児童館で読み聞かせをしています。
ある雑誌で、昔自分が住んでいた家に若い童話作家の夫婦が住み始めた記事を見つけ、
そこから過去を思い出すかのように物語を紡ぎ始めます。
与沢さん、生きる意味を失い自殺しようとしていますが…
四つのエピソードで明らかになるのは、
この与沢の教え子が圭介であり、その圭介が作る絵本を読む子供が莉子。
莉子の妹として生まれた真子は、与沢が読み聞かせをしている児童館に通っています。
童話を通して緩くつながり、そして最後には救われていく…
そんな奇跡の物語です。
現実にはこんな奇跡があるわけではないのですが、
人と人とはどこでどういう風につながっているかわからないものだなぁと思うことはあるはず。
また、物語の世界に入り込むことによって救われるということもあるはず。
だから私たちは本を読み続けているのかもしれません。(もちろんそれだけじゃないけど)
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