リフトドライバーに挑戦!60才になったので新しい冒険をします。

ウィークエンドだけトライします。Driveしたらジャーナルを書きます。よろしくお願いします。

サンフランシスコの幽霊-6-

2023-06-18 13:55:07 | サンフランシスコの幽霊
ゴルフ場の遊歩道でジョギングをしていると辺りが急に静かになりました。
芝生の緑が鮮やかでとても美しい早朝です。
川から上ってくる霧が幻想的な雰囲気を醸し出しています。
朝早いという事もあり人はあまりいません。

ふと見ると大きなワニが朝靄の中から現れました。
ゆっくりと川に向かって芝生の上を進んでいます。

音のない世界だからか、ワニが全く周囲に無関心な様子だからか、恐怖感はゼロです。
大きなワニはゆっくりゆっくり川に向かって進んでいきます。

フロリダに行った時水際には野生のワニがちらほらいましたが、驚くほど大きなワニはいなくて
黒っぽい色をした大きなトカゲという印象でした。
それでも目は獰猛で口を開くと人間でも飲み込めそうな程でした。

今、目の前を歩いているワニは恐竜の様です。

川からゆらゆらと立ち上る朝靄の中で、私は声も出せず棒立ちのままワニの行方を見ていました。
5分か10分か、もっと長かったのか、、、その後ワニはするりと川に入ってそのまま泳いで行きました。

周囲の霧が晴れ、ゴルファー達の話し声が聞こえ出し、私の足も魔法が解けたように動き始めジョギングを続けました。

途中でゴルフ場のジャケットを着た人に、
「さっき、大きなワニを見ました。」と、いうと、
彼は微笑んで、「怖くなかっただろ?」
「Mighty Moはこのゴルフ場を散歩するのが日課なんだ。姿を見れて君はラッキーだよ。
僕はまだみた事がないんだ…」と、言いました。

あんなに大きな姿を見過ごすわけがありません。
つまり、見える人と見えない人がいるようです。

ちなみに、Mighty Moというのは空母ミズーリ号のニックネームで、アメリカで一番大きな空母です。



サンフランシスコの幽霊-5-

2023-06-07 04:39:51 | サンフランシスコの幽霊
私はサンフランシスコ公立図書館で日曜日にボランティアをしています。
無料の日本語クラスで常連は5-6人です。
昔日本に住んでいた人やこれから日本に行きたい人、大学で日本語の勉強をしている人etc. 色々な人がいます。

因みに全五か国語の無料クラスがあり、私もフランス語のクラスに在籍しています。
先生は元フランス語の教授でとてもやさしく教え方が上手いです。
生徒にはフランス人の奥さんがいるフランス語ペラペラ(に見える)おじいさんとパリが大好きで
フランス語を6-7年勉強しているのに全然話せない丸顔の日本人のおばさん―それは私ですーがいます。
シャンゼリゼの屋台のクレープ屋さんでチョコレートクレープを注文したら、
屋台のおばさん以下並んでいた周囲のお客さん達に大爆笑されたという輝かしい実績があります。

屋台のおばさんは、
Would you like a chocolate crepe?
と流暢な英語で言いました。

私の無料クラスにはホームレスの人達も来ます。

図書館はホームレスの人たちの憩いの場で
朝の開館時にはトイレやシャワーを使い身だしなみをととのえ、
PCでテレビや映画を楽しみます。もちろん本も読み放題です。
館内の空調は暑いにには涼しく、寒い日には暖かく整えられているので、
皆大好きです。

私のクラスの常連ホームレス、ジョナサンは年齢不詳だが、
一見大学生くらいに見えます。
とても勉強熱心で
毎回来るたびにノートにびっしりと書いた漢字を見せてくれます。
少し角ばった強い字です。

ジョナサンはハンサムで優しい目をしています。
一つだけ困るのは彼の身体から強い異臭が放たれていることです。
嬉しそうに漢字ノートを見せてくれる時、鼻も曲がりそうになりますが。
目も痛くなり、涙が溢れます。

先日そのジョナサンが友達を連れてきました。
赤いビーニーを被ってニコニコしています。

ジョナサン、お友達を紹介してくれないの?と私が聞くと
ジョナサンはキョトンとしています。
右に座っている赤いビーニーの彼よ、というと、
ジョナサンは少しキョロキョロしてから、

Did you say a red beanie? と聞いてきます。

そして、それなら親友のダンカンだよ。大学で同級生だったんだ。
いつも一緒に日本語の勉強をいてた…
と言います。

僕ももう一度 ダンカンの笑顔が見たい。
と言って右側の空間をジッと見つめていました …。

サンフランシスコの幽霊 -4-

2023-06-04 10:47:37 | サンフランシスコの幽霊
サンフランシスコで一番古いチャイニーズレストランは、チャイナタウンの真ん中あたりにあります。
チャイナタウンの入り口にある緑の門をくぐって真っ直ぐ進み、急な坂を左に登って行くと右側の奥まった所にあります。
気を付けていないと見逃してしまうくらいひっそりとした佇まいです。
見逃して通り過ぎてしまうと、2,3件のお店の後交通量の多い道に出てしまいます。

レストランに入ると可愛らしい高校生くらいの女性が挨拶してくれてテーブルに案内してくれます。

その日は日本からの留学生と3人連れだったので、3人掛けの丸いテーブルにつきました。
私は良く日本からのお客さまや留学生このレストランに招待します。
雰囲気や、サンフランシスコの歴史、本当の中華料理を味わってもらいたいからです。
ピカピカの高級レストランではなく
ちょっと時代がかっているので驚く人もいますが、
美味しいので最後は大満足の様子です。

そしてこのレストランには高齢のオーナーマダムがいらっしゃいます。
見た目は初老の美しい女性で髪もきちんと整えきびきびと立ち振る舞っていらっしゃいますが、
実際はあと数年で100才を迎えられるとの事です。
100才のお誕生日には一日中お酒が無料で振舞われ一番人気の大根餅が食べ放題となるので、
皆楽しみにしています。

立ち働くオーナーが時々椅子に腰かけると、
どこからともなく大きな白い猫が現れて、マダムの膝に飛び乗り、
きれいな紫水晶のような瞳で店内を見まわします。
その瞳はマダムを守る様に強い光を放ちます。
時々マダムを見上げてナーゴ ナーゴをないている様なのですが、
声は聞こえません。

時々マダムを見上げています。
マダムは、Mei Yu … Mei Yu …と口を動かして、白い猫の頭を撫でます。

初めて行った時には気づかなかったのですが、レストランを出て目の前にある小さな花畑に、
丸い石があり、Mei Yu と書かれています。
石には猫耳があり、紫の花冠が置かれています。

私は両手を合わせて、マダムをいつまでも宜しくとお願いしました。


サンフランシスコの幽霊 -3-

2023-06-02 09:07:50 | サンフランシスコの幽霊
先週末久しぶりにハイキングに出かけました。
サンフランシスコ郊外の静かな森です。
サンフランシスコ周辺20分辺りには何十という自然公園があって選び放題です。
この地に20年住んで、
Huddart Park
Crystal Springs Walk
Sugarloaf Park
Waterdog Park
Big Canyon Park
Hidden Canyon Park
Edgewood Park, etc...
と数多くの自然公園に行きました。
空で上げても次々と名前が出てきます。

何処の公園も自然に溢れ、木々が生い茂り、花が咲き乱れています。
サンフランシスコは人口80万人余りで大きな都市ではありませんが、
シリコンバレーを始めとするIT企業、そして大規模な農業、酪農業が盛んで、活気のある街です。

日本人にとって有り難いのは、空港から地下鉄でダウンタウンに直行でき、
レストランやショッピングも気軽に楽しめますし、
ホテルも数多くあります。
何泊かして旅行を楽しみ、帰りもまた地下鉄で空港にスッと行けますから、
車などの心配がありません。

ところで、自然公園に主人と二人で行った時、
おかしな男性を見かけました。
ジグザグに登っていくトレイルの折り返し点の空き地に、
初老の男性が座っていたのです。ディレクターチェアに座り、何か書かれたポスターサイズのボードを膝の上に載せています。
男性は白いセットアップのテニスウェアを着ていて、下からくる人達に何かを伝えたがっているようです。

深緑の中に光るほどきれいなホワイトのウェアです。

私と主人が通り過ぎてもこちらを向かなかったので、ポスターに何が書いてあるのかはわかりませんでした。

私たちがそのまま山道を登り続けていると、さっきのテニスウェアの男性が走り下りてきました。
ポスターを抱えて全力疾走です。

トレイルはエスカレーターのように登りと下りが分かれているのでぶつかりはしませんでしたが、
音もたてず周囲も気にせず物凄いスピードで降りて行きました。

少しして私たちが山道を降り始めると、テニスウェアの男性がポスターを掲げて山道を走って登って行きます。

約一時間山道を歩き回って停めてあった車に戻り水を飲みながら、主人と私は顔を見合わせました。
「彼は何か心残りがあったんだろうねぇ…」





サンフランシスコの幽霊たちー2-

2023-05-16 10:03:25 | サンフランシスコの幽霊
サンフランシスコの真ん中に新しいラーメン屋さんができました。
凄く大きくてきれいで、ランチタイムには長蛇の列です。
私は長い列に並べるほど時間に余裕がありません。
通りかかるたびに行ってみたくてため息をついていましたが、ついにチャンスがやって来ました。
夕方のイベントが決まったので、ランチタイムに3時間程のお休みができたのです。

さっそく新しいラーメン屋さんに行きました。早めに行ったのに既に長い列ができています。
もしかすると1時間位待つのかもしれないと思いながらも物凄く美味しいらしいラーメンに思いをはせワクワクドキドキしていました。

あっという間に時がたち、店内に通され、注文しました。

回りを見ると店内のお客さんは皆嬉しそうにラーメンを食べています。

頭にハチマキをしてはんてんを着たウェイターさんが、お盆にラーメンをのせ私に近づいてきました。

嬉しくて、私はどんぶりを両手で持ち上げふーッと息を吹いてからスープをグイッと飲みました。

いえ、飲み干そうとしましたが、叫び声を上げて盛大に吐き出してしまいました。
周りの人はびっくりして見ています。
私は恥ずかしくていたたまれなくなりお店を飛び出しました。涙がボロボロこぼれました。
だって、それはめんつゆだったのです。 喉が驚いてスープの侵入を拒否し逆噴射したのです。

お店を走り出て隣の教会の中庭に入りました。小さな中庭ですが、木が生い茂り花々が見事に咲き乱れています。
そこは100年以上前からある古い教会で、昔はホテルに泊まれなかった外国からの渡航者が宿泊していたそうです。
中庭には色々な国の人達が残していった手作りの木彫りや石像が飾られています。
木に描かれたカラフルな絵画もあります。動物も並んでいます。

私はショックから立ち直れず、めんつゆで汚れた服のまま、まだ落ちてくる涙にグシャグシャの顔で、ベンチに座りました。

どこかヨーロッパ風の木彫りの前に花を置いて目を閉じている女性や、日本風の小さな石像、お地蔵さんの前に膝まづいている着物姿の女性もいます。
黄色と青が鮮やかなウクライナ風の模様が描かれた木の幹の前で、肩を抱き合うカップルもいます。
皆さん静かに頭を垂れジーッとしています。

私は落ち着いてからハッと気づき、隣のラーメン屋さんに料金を払っていない事を思い出し、中庭の出口に歩いていくと、
ラーメン屋さんのマネージャーらしき男性が立っていました。
Are you OK? Anything wrong? と心配そうにたずねてきます。
私は、(ラーメンのスープがめんつゆで … )と言えず、できるだけニッコリして I'm OK. と答えました。
後ろを向いて中庭を見ると、もう誰もいませんでした。