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鬼平犯科帳と池波正太郎_その2_造語編

2012年09月01日 | Weblog
山の案内 歩き日記 今日の猫たち You Tubeでみる『山の案内』 鬼平犯科帳

◆鬼平犯科帳の造語

 池波は造語の名人です。その造語が実に妙を得ており、読者は「なるほど」と納得させられるのです。たくさんある造語の中からいくつかを紹介します。

◆造語

つとめ・おつとめ
 盗賊が使う盗みのこと。
本筋・本格の盗人
 盗みの三カ条をまもる盗賊のこと。盗みのため何年もかけ下準備をする。
盗みの三カ条
 一、盗まれて難儀をする者へは手を出さぬこと。
 二、つとめするときは人を殺傷せぬこと。
 三、女を手ごめにせぬこと。

流れ盗み(ながれつとめ)
 諸方の盗賊の首領に頼まれてはたらくフリーランスの盗賊
独(ひとり)ばたらき
 首領もなく仲間も手下もいない盗人。
畜生働き
 盗みの三ヶ条守らない盗みのこと。急ぎ働きがおおい。

急ぎ働き
 入念な準備をする「盗み」ではなく、急いでやる盗み。証拠隠滅のために殺傷することがおおい。
密偵(造語ではないが・・・)
 もと盗人や口合人、嘗訳が、盗賊改めに協力して、盗賊の情報を流す役(スパイ)のこと。
狗(いぬ)
 密偵を盗賊たちが蔑んで言う言葉のこと。

口合人(くちあいにん)
 独りばたらき、流れ盗めの盗賊を諸方の首領に紹介・斡旋し斡旋料をもらう。嘗役を兼ねているものが 多い。

嘗役(なめやく)
 盗みに入る商家などの間取りや奉公人の数などの内情を探る探索人のこと。
 嘗役が記録した覚え書きを嘗帳(なめちょう)という
盗人宿(ぬすっとやど)
 盗賊たちの連絡所、隠れ家、盗んだ金品の隠し場所のこと。 堅気の商家や料理屋や装っていることがおおい。
引き込み
 盗みに入る家の奉公人になって、盗みの日、内から鍵を外し、仲間を引き入れる役目のこと。
 (数年かけて押し込み先でまじめに奉公し、信頼を得る。本格的盗賊の盗みには欠かせない。)

たらしこみ
 盗に入る家の男に女が色気を使い、家の間取りや金品の場所を調べためにたらしこむこと。
 または、目星をつけた家の妾や女房になり、スキをみて金品を盗み消えてしまう手口。
牝誑(めたらし)
 盗みに入る家の女を言葉巧みにだまし、家の間取りや金品の場所を調べるためにたらしこむこと。
 若く、美男で愛嬌にある者がこの役目を引き受ける。
盗み細工
 盗賊が大工になり、新築や改築の家に簡単に侵入できるように細工をすること。

(十三巻)熱海のみやげものより

 「江戸にすみついた久太郎を見のがせとは、虫のよいはなしではないか」
 「そ、そのかわり・・・・・・・・その、かわりに、これを・・・・・・・・」
 と、利平治は懐中から、袱紗に包みを出し、平蔵の前にひろげて見せた。

 中には、縦四寸、横五寸、厚さ一寸五分ほどの帳面が二冊入っていた。
 「これが、お前の隠しておいた宝物か」
 「よ、よくご存じで・・・・・・・」

 この帳面こそ、盗賊の嘗役が、
 「いのちよりもたいせつに・・・・・・・・」 
 にしている[嘗帳]というもので、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ことに馬蕗利平治の嘗帳はたいしたもので、二冊合わせて二十余件におよぶ商家の家風・行事から、財産、奉公人の人数、主人夫婦の嗜好までが、くわしく調べあげられ、店舗や住居(すまい)の絵図面まで添えられているではないか。場所は北陸から近江、上方、中国すじばかりでなく、江戸にも数件あった。・・・・・・・・・・

 熱い茶をだしながら、久栄が、
 「何をみておいでなされます」
 「この帳面か」
 「はい」・・・・・・・・
 「この帳面をあの男が役に立てたなら、おれも、ひどい目にあうところであった。」
 「いったい、それは・・・・・・?」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 以下、鬼平犯科帳と池波正太郎_その3_平蔵と密偵編へつづく


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