カップ&ボールのカップ中心にいろいろ紹介

自分の持っているマジックの道具をカップを中心に紹介。

Phoenix Cups and Balls by Tom Frank

2022-12-25 11:41:00 | カップアンドボール

 2000年にTom Frank氏がリリースしたPhoenix Cups and Ballsです。カップとボールとウォンド、そして証明書が専用ケースに入ったセットでした。銅合金(COPPER-ALLOY)のカップセットが1000セット(価格199.5ドル)、ニッケル・クロムメッキ(NICKEL CHROME-PLATED)のカップセットが100セット(価格299ドル)リリースされました。銅製カップの材料として純粋な銅ではなく他の金属を混ぜたのは強度を増すためです。カップの高さは約7.6cm、口径は約8.6cmと書かれています。重さは私が購入したNICKEL CHROME-PLATEDカップの場合、175gから188gとカップによって結構差がありました(;^ω^)重量感がありますが重すぎることはないです。発売時の広告らしき画像がありました。

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 形はRoss Bertramのカップの形を継承しており、ポールフォックスのように球形を最大限に入れることができるる形ではありません。テニスボールは微妙でマジックカフェでは入らないという意見がありました。私のカップでは入るけど一緒に持ち上がってしまいます。しかし、氏のDVDではファイナルロードとしてテニスボールを使ってますので空気の入り方やメーカによっては入るかもしれません。

 この形にはファンも多いです。ポールフォックスよりも好きだ!と書かれたコメントを見たこともありますし、チャーリー・ミラーも「男のカップ」と呼んで気に入っていました。ただし、この意味は「強さ」の意味合いも含みます。

 フェニックスカップの問題点としては、ショルダー・ビード「shoulder beadside bead)」(カップの中央部にあるライン)が低い、もしくは、ショルダービードより下の部分の広がりが大きく、故に口径が大きくなっているため、スタックしたときに「attic」(スタックされたカップ間の空間。「屋根裏部屋」という表現をされます)が狭くなってしまうという事です。なので、付属するTAYADE-STYLEのボールは入っても、1インチの完全球のボールは入りません。TAYADE-STYLEのボールも完全に入っているのか?と思うくらいです。また、スタックしたときにぐらつきがあることも問題点として言われています。あと、リムの隙間がDanny Dewのポールフォックスカップのように広いですね。

 ボールはTAYADE-STYLEと呼ばれるボールで先に述べたように完全な球形ではなく、長軸1インチ、短軸7/8インチです。さらに、ボールの周りに紐が巻かれており、転がりにくくなっています(このボールの作成は大変で1個当たり45分かかると氏はビデオで言っています)。ちなみにTAYADEというのは1970年代にマジック用品を作成していたインドの方の名前だそうで、彼が作ったこのタイプのボールをセットに含むヒンズーカップも有名です。

Indian Style Cups, Balls and Wand by D.A. Tayade

 ウォンドはアイアンウッド(IRONWODD)で作られており、長さは約32.1cm、太さ約11mmです。アイアンウッドは枕木にも利用されるような、硬くて水などに強い木です。残念ながら私がeBayで購入したカップセットにはウォンドが付いていませんでした。

 以上のように、このカップセットは非常に強いコンセプトに基づいて作られています。それはストリートでの過酷な演技に耐えうる強いカップという事です。

 Tom Frank氏がマジックキャッスルでカップ&ボール演技をしているを下記に示します。氏はもともとストリート系であったこともあり、観衆を惹きつける力強い演技をします。従って、強く叩くことに耐えうるカップとウォンド、転がり過ぎないボールが必要だったんですね。


 一般的なバーノンの手順とは違うオリジナルの手順ですね(とにかくバンバン叩きますね(;^ω^))。演技の途中でカップの貫通や指のマジックを入れているところも観客を惹きつけ続けるための工夫だと思います。ヴァーノンのて順に慣れてしまっているので違う手順を見ると少し新鮮に感じますよね(;^ω^)

 Tom Frank氏はカップ&ボールのDVDを自身のサイトを通じて販売しています。

https://tomfrankmagic.com/products/

 DVDでは、氏の手順の解説や、いくつかのパターンでの演出、具体的には、音楽だけで喋らない演技、喋りながらの演技、ストリートの演技などが収録されています。また氏が集めたカップの映像やカップ&ボールの歴史についての映像もありました。自身の持っているカップの紹介映像では、一般的なカップの作り方などについても説明していて興味深いです。そこでは素晴らしいカップ職人としてJim Reiser氏の名前が出てきます。氏のカップも1つだけ持っているのでいつか紹介したいと思います。

 DVD購入時に少しやり取りがあり、2つほど質問をしてみました。それについて丁寧に解答して頂けたのでここにそれを記します。私の素人質問に丁寧に答えてくれた氏に感謝します。

<質問>

Your cup is similar to the shape of Ross Bertram's cup as well as Charlie Miller's cup. I would like to know if there is a reason you chose that shape instead of the Paul Fox type other than you like the shape.

<回答>

When I was a young man, my cup of choice was the Charlie Miller cups made my Magic Inc. It wasn’t so much the design that I liked but I liked the sturdiness and durability of the cup as well as the price. Later Both the Miller and the Bertram cups stopped being made. I asked Jay Marshall of Magic Inc., if I could replicate the design of the Miller cup as I loved them and and gone through more than a few sets by that time.  He said yes. I made the Phoenix cups stronger than any other cup on the market, by adding lead to the copper. I hope this answers your question.

<質問2

what do you consider most important in your cup and ball act that may have been discussed on the DVD?

<回答2

As to the most important aspect to my cups and balls routine, is a more difficult question. I suppose a genuine love of magic, misdirection, the rich history of the effect and the impact it has on an audience. I spent half of my life as a street performer and it never failed to build a crowd.

 上記のTomの回答にありますように、このカップの歴史的流れは、ポールフォックスとはまた違った面白さがあります。ポールフォックスほど普及しませんでしたが、一部のファンには好まれています。大きくは4つほどのカップがシリアルに作られています。

 まず、原点となっているのがロス・バートラム(Ross Bertram)のカップです。

https://www.bidsquare.com/online-auctions/potter-potter/bertram-cups-847728

このオークションのカップは1965年に作られたカップのようですね。ページでは中は映っていませんがRBの文字が刻まれていると思います。ロス・バートラムがこのタイプカップを始めた手作ったのは1940年頃だそうで、ポールフォックスはその少し前に作られていたようです(世に出るのはもう少し後になりますが

 ロス・バートラム(Ross Bertram)の演技映像もありましたので貼り付けておきます(Egyptian Cups and Balls)。

Ross Bertram performs Egyptian Cups & Balls | Magicana

 上記演技はロス・バートラムのDVD2巻の最後収録されています。

https://www.frenchdrop.com/detail?id=1381

 次に、チャーリー・ミラーカップ(Charlie Miller Cups and Balls)です。

 ロス・バートラムのカップの形を継承してチャーリー・ミラーカップというカップがJay Marshallが経営するChicagoMagic Inc.から発売されました。本商品は1970年代と書かれてますね。銅製です。

Lot Detail - Charlie Miller Cups and Balls.

 チャーリーミラー自身は Greater Magic Video LibraryVol.29Charlie Miller & Johnny Thompson)でカップ&ボールについていろいろ話したり演技をしたりしていますが、銀色のカップ(銀とかクロムのメッキでしょうか?)を使っていて、ビデオの中では、ニューオリンズのBrad Holbrook(綴りまちがってるかもしれません)からもらったもので、ロス・バートラムカップだと言っています。また、この形や強さが好きだと言っており、ラフに扱っても大丈夫な「It's a man's cup!」だと言っています(多分)。ビデオではちょっと確認できませんでしたが、彫刻されているかもしれません。

Charlie Miller & Johnny Thompson, Volume 29 GMVL (DVD)

 このビデオで上手くチャーリーミラーから話を引き出しているジョニートンプソンのカップも実はロス・バートラムタイプのカップです。銅カップ(チャーリー・ミラーカップ)にシルバーのメッキがされており、エジプト風の彫刻がされています。

Lot Detail - Johnny Thompson’s Engraved Cups and Balls. Set of three fin...

 そして、Tom Frankが作ったフェニックスカップ(Phoenix Cups and Balls)です。

上記質問への回答にあるように、Tom Frankは丈夫で強いチャーリー・ミラーカップを好んで使っており(デザインはそんなに好きでなかったと書いてますが(;^ω^))、販売されなくなったので、Jay Marshallにその形を使ったカップを作ってもいいか?と問い合わせ、許可をもらったので作りました。ただ、さらに「強い」カップにしたかったため、純粋な銅ではなく、他の素材を混ぜることでより硬く、丈夫に作ったとのことです。このカップの特徴(悪い点も含め)は上で記した通りです。

 最後に、Phoenix II cupsです。

 Tom Frank氏が作ったフェニックスカップの問題点を改善するため、RNTIIPhoenix II cupsを作りました。Mad Jake氏がRNTIIのプロジェクトとして12個のカップを作りました。変更点はショルダービードを少し上げてスタックしたときの屋根裏部屋の空間を広くし、1インチのボールが3つ入るようになりました。またテニスボールも入るようになりました。形としてはロス・バートラムスタイルの広がりが大きいカップに比べると、ショルダービードから口までの広がりを抑えた形になっています。Mad Jake氏はTom Frank氏に許可をもらってこのPhoenix II cupsを作りました。

 Tom Frank氏がPhoenix II cupsについて書いたページです。RNTIIから申し出があったときにこれまで言われていた問題点を改善するようお願いしたそうです。

PHOENIX II CUPS • COPPER • ANTIQUE BRONZE FINISH - The Genii Forum

 Mad Jake氏は最初12個のセットを作ったとマジックカフェでは述べてますがその後どういう商品展開をしていったのかはわかりません。ただ、現在RNTIIを後継したDonnie Buckley氏のRINGS-N-THINGS MAGICでは、Phoenix II cupsを現在も販売しています。

Phoenix 2 Cups | Copper | Polished Finish

 以上、フェニックスカップの紹介とその元カップと後継カップでした!







The Two-Cup Routine By Tommy Wonder(Limited Edition)presented Rahael & Bluether Magic

2022-12-10 13:18:00 | カップアンドボール

 2022年も12月となり、残すところわずかとなりました。予定では年内に今回を含めあと2つのカップを紹介する予定です。共に個人的にはとても気に入っているカップです!

 今回紹介するカップはTommy Wonderの家族が認めている唯一のカップという事で衝撃的なリリースだったRahael & Bluether MagicTommy Wonder Two-Cupのステンレス製リミテッドエディションです。Limited Editionは真鍮(Brass)製とステンレス(Stainless-steel)製の2種類がそれぞれ25個ずつ作成されて、証明書(Certificate)付きで販売されたものです。木製ケースに入っており、色の異なる袋とボール(ポンポン)が2セット付属しています。しかし、Regular Editionに付いている映像へのURLなどは付いていません。

 まず、ケースですが紙のRegular Editionとは異なり木製のケースです。トップには紙製の箱(あれもカッコいいと思います)と同じカップとポンポンつき袋などの絵が彫られた形で表現されています。ちゃんとStainless Steel Versionとも彫られています。木のケースは素敵ですが、写真でご覧になってわかるかもしれませんが、使われている木や中のクッションの生地はそれほど高級感はないです(;^ω^)

 次にカップを入れる袋ですが、赤と青の2種類入っています。ボールに対応するポンポンも、袋に対応して黄色とオレンジの2色が入っています。トミーワンダーのカップ袋は青というイメージが強いので赤というのは少し新鮮ですよね。作りはRegular Editionのものと同じだと思います。

 次にCertificateは木製のスタンドに入っており、立てて飾ることが出来るようになっています。フックで吊り下げることも可能なスタンドでした。そこには限定25個のステンレス製カップであることが作者のサインと共に証明されています。サインしているのはBluetherMagicの創立者で実際にカップなどを作っているのはRashaun Chan氏です。Rahael & Bluether MagicRahaelRashaun Chan氏の英名なんですかね私のカップは05/25とのことなのでNo.5という事ですね(実はこれはちがうんですけどね)。



 最後にカップです。私が購入したのはステンレス製の方で重さは182gと通常の真鍮製のものより40g50g重いです。ズシっと重みを感じれます。とはいえ、Auke Van Dokkum氏のカップに比べて元々のサイズが小さいので、Auke Van Dokkum氏のカップのように重すぎるという感じではありません。個人的にはやや重めのいい感じの重さです。ちなみにこのカップの形はAuke Van Dokkumのカップへのオマージュ(尊敬、敬意、賞賛)からだとTCCの商品ページに書かれていますね。

 Regular Editionとの重みの違いが素材の違い(ステンレス製)であるためか、Limited Editionであるためかは真鍮製同士で比較しないとわからないのですが、カップは同じものではないとBluether Magicからは言われています。厚みなどが違うのかもしれません。カップの底にはRahael氏のマークが刻まれています。Regular Editionのカップの底に刻まれていたか、ちょっと手元に今ないので確認できませんが、以前ブログを書くときに撮影した写真では無いように見えます。ただなんか刻まれていたような記憶もあるんですよねまた、レギュラーエディションを引っ張り出してきて確認していつか追記したいと思います

 ということで、Limited Editionは、ケースはまあまあで、カップはいい感じというレビューでした。購入できたのがステンレス製だったというのもRegular Editionとの区別がつきやすく良かったです。真鍮製もとてもきれいなんですがどうしてもクスんできますよね。そのクスミが銅ほどいい感じの色にならないというか。それともやったことないだけで上手くクスませるといい感じの色になるのでしょうか。銅は古くなった感じが私は好きな色で、歴史のあるマジックだしピカピカのステンレスはどうかと思っていたのですが、最近はそれもありと思い始めてきました(;^ω^)。数は少ないですがツイッターでアンケートした結果は真鍮よりステンレスの方が上でしたし



 ここからはカップのレビューではなく、入手経緯ですので、あまり面白くないかもですが、記録しておこうと思い書くことにしました。以前のブログ記事で、TCCがこのカップをリリースしたことを速報的に書いたときに、『リミテッドエディションが3つだけ販売されてたようですが売り切れてました残念』と書きました。まさか手に入れることが出来るとは正直思っていませんでした。

 事の始めは「Wonder House's Cups」というカップを知って(キックスターターで知っていれば購入していたのに残念)それを探しているうちにちょうどBluether MagicがグランドオープンするということでそのWebサイトに辿り着きました。確かに「Wonder House's Cups」はそこで販売されていたのですが、TCCで購入したTommy Wonderのカップも販売されていました。そういえば、箱やビデオでBluether Magicと出てきてたなと思いながらでもそれは持ってるしという事で流してみてたら、Limitedエディションが販売されているではないですか!急いでポチっとしました。すると残りは0となりました。いくつ販売していたかはわかりませんが最後の1個のようでした。と言っても番号は5番ですが。ラッキーだったと喜んでいたのですが、数日経っても発送連絡が来ないそこで確認メール(チャット)をしたところ、「赤いポンポンを作るので来週送る」との連絡がありました。ところがその次の週になっても発送された感が無いまたメールで問い合わせたところ、「カップの中が汚れていて我々が販売する品質に至っていない」とのメールが写真付きで送られてきました。確かに中が汚れているというか作り損ねてるというか、きれいではありませんでした。何を今更と思いつつ、そのカップは通常のカップと違うのですか?と聞くと、「違う」という返事でした。お詫びにジャンボコインを送るから返金してキャンセルにしますか?との連絡が合ったのですが、「外から見たら汚れはわかりませんか?」とかいろいろ聞いているうちに(私の欲しいオーラが伝わったのか(笑))、「では工場に行って新しいものが作れないか確認してきます」との返事。そして「2週間くらいで新しいのを作りますが待てますか?」ときました。そこでもちろんOKと返事をしました。そして待つこと2週間。やっぱり連絡が来ないメールをして「どうなってますか?」と確認。「工場に確認に行きます」と返事あり。そして「コロナのゼロ対策で工場が動いていません。もう少し待ってください」とのこと。ここまで来たら待つしかない…10日経過して、「どうなってますか?」と確認のメールをすると、「作成者から動画が送られ来ます」と連絡。数日後、Rashaun Chan氏から短い動画(なぜか静止画ではなく動画)が送られてきて、きれいなステンレス製のカップが映っていました。とりあえずホッとして、入手できることがある程度確信持てたものの、その後もなかなか送ってもらえず、送ったという連絡と共に届いたEMSの追跡番号は間違っていて、何日経ってもその荷物は無いという状態だしそして、間違えていたので正しいのを送るよと言って送られてきた番号で送られていることがわかり、先日家に届きました。2カ月半かかりました(;^ω^)

 ちょっと苦労しましたが、いいカップを入手出来て満足しています。もともと購入を検討していた「Wonder House's Cups」はこのカップと次回紹介するカップを購入してお金を使い過ぎたので、ペインディング状態となりました。ブラックフライデーでだいぶ安くなっていたのですが、気が付かず、今は売り切れてしまってます。期間が2日だけで気が付かなかったのが残念です。ちなみに以前ブログで紹介したTCCKickstarterで出して、10分で100%、最終目標の1658%も資金を得たUntrammelledBall & Vase)の追加(オプション)販売としてカップ&ボールのバッグが売られました。これがおそらく「Wonder House's Cups」の袋です。Wonder Houseつながりでの販売だったのでしょう。しっかりしたバッグです。またいつか「Wonder House's Cups」も紹介できるといいなぁと思っております。


<参考>

Bluether Magicの本商品のページ

The Two-Cup Routine By Tommy Wonder(Limited Edition)

Bluether Magic

Bluether Magic

 

Bluether MagicRegular Editionのページ

The Two-Cup Routine By Tommy Wonder(Regular Edition)

Bluether Magic

Bluether Magic

 

TCCTOMMY WONDER'S CUPS AND BALLSのページ

TOMMY WONDER

TCC Clearance Sale Retails at USD 175. Clearance Sale Price USD 149. Only 5 sets Left. Discontinued after Sold Out. "This is an impressive set. The cups are...

TCC Magic

 

Wonder House's Cupsのページ

Wonder House's Cups

Bluether Magic

Bluether Magic