カップ&ボールのカップ中心にいろいろ紹介

自分の持っているマジックの道具をカップを中心に紹介。

ゆうきとも(プアマンズ・カップ&ボール→ツートーン・カップ)

2024-06-09 23:29:00 | マジシャン別

 今回は、ゆうきともさん(特に知り合いでもないのになれなれしく「さん付け」ですいませんm(_ _)m)の紹介です。ゆうきともさんのカップ&ボールといえば「紙コップ」のイメージが強く、もちろん通常のカップを使った手順もされておりますが、全てを紹介していると書ききれないので、代表作として、紙コップを使った大きく2手順を紹介します。個人的には「カジュアルに演じる」というゆうきさんの考え方・スタイルが紙コップを使ったカップ&ボールに非常によく表れていると思います。

 まずは、「プアマンズ・カップ&ボール」です。これは六段から成る、紙コップを使ったカップ&ボールの手順でカズ・片山氏著の「ゆうきとものクロースアップ・マジック」に解説されています。

ゆうきとものクロースアップ・マジック - 株式会社 東京堂出版 限りなく広がる知識の世界 ―創業135年―

洗練された気鋭のマジシャンゆうきとも氏の作品集を初めて一冊にまとめ,カズ・カタヤマ氏の懇切丁寧な図版と解説により初心者… カズ・カタヤマ 著

 

残念ながら、この本に付属する実演DVDにはこの手順の演技はありませんが、monthly Magic Lesson DVDで演技と解説を映像で見ることができます。

 前半2段は「monthly Magic Lesson DVD VoL5」で実演・解説がされており、


 後段は「monthly Magic Lesson DVD VoL15」で実演・解説されています。だたし、解説は後段のみです。


 時系列的には、monthly Magic Lesson DVD の方が先で、その後に本が出版されており、本には実演はこれらのDVDを参照してくださいと書かれています。というわけで、上記Vol.15の紹介映像を見て頂けるとこの「プアマンズ・カップ&ボール」が楽しめます。手順を学びたい方は本かDVDを購入してください。

 簡単に手順を追います。前段2段は紙コップ3つとボール3つを使った手順です。貫通現象と移動現象です。特徴としては、エクストラボールを必要としないので、準備が非常に容易である点があります。バーベキューやクリスマスパーティーなど紙コップが自然にある状況であれば、その場にある紙コップ3つ(ボールが必要なのでペーパーナプキンも必要ですが、お札などでも代用できます)を使って直ぐに演じることができます。もう一つの特徴としては、ぴったり重なる紙コップを使っているのでいわゆる「悟空の玉」に比べ貫通現象が非常にビジュアルになります。観客参加型になっているのも良いと思います。

 この前半はmonthly Magic LessonのNo5で解説されている(逆にNo15では解説されていませんので注意してください)ので、かなりマジック経験が浅い方向けに思えるのですが、演技力が結構必要ですので、ちょっとした動作なども含めて自然に行うには結構大変だと思います。練習あるのみですね(;^ω^)

 後半4段は、ポケットにしまったボールがカップの下に戻ってくるという現象がメインですが、後半の前半は、紙コップを1つ減らして2つで行います。カップ&ボールが3つのボールを使うのは人の目が2つであり、3つのものを追えないからという、納得してしまう理由でカップを減らし、より不可能性を上げるとともに、カップ&ボールの通常の状態を作ります。この自然な理由で自然に目的の状態に持って行く戦略が恐ろしいですよね…しかも演技を見て頂くとわかりますが、さらりと一度両手を改めています…。カードマジックでもそうですが、ゆうきともさんのさらりとした相手をだますための動きは非常に効果があります(恐ろしい…)。

 後半の後半は、さらに1つに減らして、テンポよく、コップにボールが戻ってきます。ボールがポケットにちゃんとあるというのを示しながら、起こすこの現象は、「本当と嘘」が上手く混ざっており、かなり説得性をあげています。最後は、大きなボールがでてくるので、大きなインパクトを与えますが「なぜか大きなボールが」ではなく、3つが同時に形を変えて戻ってきたという、一貫性も見事ですし、さらにそれを説明しつつのエンディングは、さすがと言わざるを得ません。

 通常カップ&ボールはファイナルロードで大きなインパクトを与え終わるということが多いです。なんでジャガイモ?(レモン?)と観客に喜んで頂けるエンディングが私も大好きなのですが、これらはびっくり箱的な驚きですよね。ゆうきさんのこのマジックのエンディングは、大きなボールが出てくるものの、それには理由があり(3つのボールが合体して戻ってくる)、さらにその後のエンディングで驚きが笑いに変わります。このエンディングは「なんで?なんで?わかんないからYoutubeで検索しよう!」という、そういう観客の対抗心的なものを消してしまい、お互いが平和に終われるすばらしエンディングではないかと思います。

 この手順の紹介の最後に、本でゆうきさんはこの手順をパトリック・ペイジ氏の手順から発想を得て組み立てた、と書かれているので、パトリック・ペイジ氏の手順映像も示します。9分17秒くらいからです。変わったカップデザインでカップ自体にも興味がでます(笑)。ゆうきさんの手順とは全然現象が異なるように見えますが…(;^ω^)


 つぎに「ツートーン・カップス」です。先の「プアマンズ・カップ&ボール」とは異なり、「色」の要素が入ってきます。「色」をつかうことで、これまでのカップ&ボールと一味違った手順となります。悟空の玉もカップの色は異なりますが、同色のカップでも現象としては同じですよね。本手順はボールも色が異なり、カップとボールのをマッチさせるということで新たな現象が生まれています。ゆうきともさんのショップで販売されています。単体で販売されていることからも、ゆうきともさんのお気に入りで完成度が高いとお考えの作品だと思います。

https://tomo-yuki.stores.jp/items/65280ccb5ab45e07fddc8074

 多くの手順が・そうかと思いますが、この手順もいきなりこの形を目指していたのでは無いのではないかと思われます。はじめは、3色のカップに3色のボールの手順をミルトン・コートの手順をアレンジすることで作成されたようです。その手順を「WISE-WORKS 5」で「カラーカップ&ボール」として発表されています。

https://ugmmagic.com/items/5e3a967a47fb447d60b8c7cc

基となったミルトン・コート(Milton Kort)の作品は「CHROMO CUPS AND BOALLS」というタイトルで、「Kort Is Now In Session」という冊子に書かれています。


この冊子には以前紹介した「Miniature Cups and Balls」も解説されています。冊子を買うこともできると思いますが、10ドルでデジタル版が購入できます。

Kort Is Now In Session by Milton Kort

One of America's finest close-up men has written a fine book on his work. Illustrated with excellent line drawings by Steranko. Makes all the tricks clear a...

Lybrary.com

 

このミルトン・コートの手順についてはいぜん、ゆうきともさんがブログで紹介しておりましたので、その記事も紹介しておきます。

ミルトンコートのカップと玉 : ゆうきともからのお知らせ 2

先日3色のカップと玉を使った手順のことをツイッターで話題にしました。 私の手順はマンスリーマジックレッスンの55号で紹介していますが、それを見た地方の友人が、原案に...

ゆうきともからのお知らせ 2

 

この手順では、ゆうきさんの手順のエンディングはミルトン・コートと同じ、全てのボールが同じ色のボールになるというものですが、少しずつ変化(進化)していきます。

 まず、「monthly Magic Lesson DVD VoL55」で「カラー・カップ&ボール」という同じタイトルで、同じく3色のカップと3色の紙コップを使った手順が解説されます。ですが、先程の手順とは少し異なります。映像です。


 前段は先に述べた「ノーエクストラのカップ&ボール」の3色版から入ります。すなわち、貫通現象です。紙コップの強味が出た手順です。続いて、ウォンド(ペン)を取り出し、今度は「ノーエクストラのカップ&ボール」とは少し違うやり方で、3つのボールが集まる現象を行います。色が異なるので、同色エクストラボールで実際やっている人が見ても不思議に見えるのではないでしょうか(笑)

 次のパートは先の手順にもあった「色」を使った最も面白い現象で、言葉では「同じ色のカップに同じ色のボールを入れます」といいつつ、異なる色のボールをカップに入れますが、おまじないをかけると同色のボールになっています。鮮やかです!つづく、エンディングが先程のWISE WORKSの手順と大きく異なります。実はカップ&ボールではなくなってしまうのです(笑)。最後はカップをしまってしまい、3ボールのトリックになります。しかし、これまで3つのボールを使っていますので全然違和感はありません。3つのボールが何度も手に戻ってきますが、最後は消えてしまうという強烈なエンディングです。カップ&ボールの演技のフィニッシュとして、大きいものを出すのでもなく、3つのボールだけのマジックにして、最後全てを消して終わる…。なかなか無い発想に驚きました。

 続いてというか、だいぶ時がたち、「monthly Magic Lesson DVD VoL129」でさらに大きな変化(進化)を遂げます。なんと先程の手順を2カップで行う手順、「ツートーン・カップス」が登場します。号数だけで単純に考えると5年以上経過してます…


 55号で発表された手順に比べ、2つのカップとボール(ノーエキストラ)にすることでより即席に行えて、より現象がわかりやすくなっています。究極のシンプルバージョンですね。とはいえ、貫通、移動、消失、さらに観客の参加と、笑いのとれるシーケンスがしっかりが入っており、シンプルでも「濃い」手順となっています。

 まあ、色の異なる紙コップとその色にあったペーパーナプキンがたまたまあるかというと、そこは難しいかもしれません。しかし、同じ紙コップとペーパーナプキンでも、笑いの部分はできませんが、その他の現象は起こせますし、赤ペンとかあれば、片方のカップと作った紙玉に少し赤を付けるだけでよい気もします。さらに解説では、色違いのカップ以外でもできるアイディアが紹介されており、目から鱗でした。是非マスターしておいて損のない手順だと思います。なお、このDVDでは、おめでたい紅白のボールとカップを使いますというセリフで始まってますが、確かに、そうするとおめでたい場所などでも使いやすいですし…いいですね!

 というわけで、大きく「プアマンズ・カップ&ボール」と「ツートーン・カップス」の紹介でした。関連情報として、ゆうきともさんがカップ&ボールに対してどのような考えを持っておられるのか、を記したブロブのURLを紹介します。「カップ&ボールの再考」ということで、もう15年以上前になりますが、その当時のゆうきさんの考えを知ることができます。URLは初めの「カップ&ボール再考」だけ示しますが、そのあと8まで続く、読み応えのある記事です。

カップ&ボール再考

カップ&ボール再考 : ゆうきともからのお知らせ 2

何度も言っていることですが、mMLにおける基本スタンスは、 「一般の観客 (ごく普通の知性を持っている人間) が普通に鑑賞でき、できれば楽しめるもの」 といったこと...

ゆうきともからのお知らせ 2

 




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