カップ&ボールのカップ中心にいろいろ紹介

自分の持っているマジックの道具をカップを中心に紹介。

Cups and Balls Set by Bluether Magic and Raphael(Large)

2024-03-30 22:02:00 | カップアンドボール

 Bluether Magicがリリースしたカップ&ボールセットです。いつものようにRaphael氏がプロデュースしているようです。とりあえずPVを示します。



 私がこのカップを知ったのはGINさんで販売されたからでした。

【お取り寄せ】Cups and Balls (パーフェクトバランス・カップセット) by Raphael and Bluether Magic-マジックショップGIN

※ご注文確定から1週間前後でのお取り寄せとなります。 他の商品と合わせてご注文の場合、本品入荷時の一括発送となります。テニスボールが入る、削り出しのカップセ...

マジックショップGIN

 

GINさんからこのカップが販売され始めたときに、まだ本家のBluether MagicのHPには商品は無く、なんでそんなことになっているのだろう?と思っていました。その後、今年の2月の後半ごろ、Bluether MagicのHPで販売が開始されました。GINさんで私は購入したので、まあいいかと思っていたら、Bluether Magicのサイトでは私がGINさんで購入したLargeサイズとは別に、MediumサイズとSmallサイズがあるではありませんか…。もう頼むしかないですよね(笑)。というわけで、3サイズ揃いましたので、紹介させて頂きたいと思います。Bluether Magicの商品ページを示します。

Cups and Balls Set by Bluether Magic and Raphael-Bluether Magic

Description: The Cups and Balls trick has remained a global cornerstone of magic for centuries. Mastered and refined by legendary magicians, this trick has be...

Bluether Magic

 

商品ページにありますように、かなりバラエティを揃えてきました。まずLargeサイズにはステンレスと真鍮の2種類の素材があり、それぞれに対して、その素材だけで作ったカップと中をマットブラックで塗ったカップの計4種類があります。一方、MediumサイズとSmalサイズには真鍮素材のカップはなく、ステンレスのみですが中は通常とブラックマットの2種類があります。まあCNC加工ですので、3Dデータがあればその正確な縮小版を作成し、縮小版データで削りだしを行う事で同じ形のミニカップを作ることは、スピニング加工で各サイズの作成用道具を用意する事に比べるとかなり容易だと思います。

 今回私はステンレスのMatt Black Innerを各サイズ1つずつ購入しました。このブログではサイズ別にカテゴリ分けしていることもあり、今回は「Large Cups and Ball Set」について紹介したいと思います。次回、Medium、Smallサイズの紹介をします。




 というわけで、今回はラージサイズの紹介です。同じHP上でも表記サイズが微妙に異なりますが、その一つに基づくとカップのサイズと重さは

Height 73.1mm x Width 76.8mm (mouth opening 68.4mm),Weight 260.6g(268g?)

とあります。

 カップはCNC加工で作られており、手作業で磨き上げられた表面はとてもきれいです。また重量感もあります。なんでこんなに重さが必要なんだろうと思いますが、ファイナルロードで中に非対称なものを入れてもそれが倒れることや、ひよこなどの生き物を入れることでロード後に勝手にカップが動くことがないことが利点だとHPには書かれています。確かにそうですね。またCNC加工なのでカップ同士を打ち合わせた時の音はきれいです。

 形に関しては、いわゆるポールフォックスタイプ(どこまでをPFタイプと言っていいかわかってませんが(;^ω^))で、テニスボールがちょうど入る大きさです。ショルダービードはジョンソンカップのように3本あり、トップにかけての傾斜が少し急でサドル(トップ)の面積が少し小さいです。つまり、通常のPFに比べて少し「尖った」感じです。このことは大きなロードボールをトップに置いたときに、カップに対してより大きく見えるため、不思議に見える効果があると思われますが、トップの面積が小さいため、3つトップにボールを置いてスタックしようとすると、対応できるボールがどうしても小さくなってしまいます。



実際、このカップに付属するボールのサイズは約7/8インチ、約22mmであり、通常もう少し小さなサイズのカップで使われるボールサイズとなっています。というわけで、付属のニットボールと、Barallel Vaseで使われているボール、マイク・ロジャー(7/8インチ)をトップに3つ置いた写真を撮影してみました。

とはいうものの、実は1インチのボールも多分使えると思います。後で紹介するTCCのMaster Cups and Ballsに付属するボール(HPでは27mmと記述)も3つ乗せた状態で何とかスタックできました。しかし、同じくTCCのチョップカップで使われている革製ボールは流石に3つ入れた状態でスタックはできませんでした(;^ω^)。なので、付属のボールがちょっと小さいと感じる方はもう少し大きなボールでも使えるボールはあると思います。

 ボールについて話が出たので、付属ボールについて書きます。付属ボールは直径22mmのニットボールなのですが、中にはゴムボールが入っており、重量感があります。ちなみにTCCのMaster Cups and Ballsに付属するボールも同じニットボールですがこちらは無垢材(solid wood)がコアになっているので、ゴム芯に比べると軽いです。ビデオにあるようにゴム芯なのでボールをテーブルの上ある程度の高さから落とすと跳ね返ってきます(だから何?とは聞かないで(;^ω^))。網目も細かく、重さもあるので、個人的にはこれまで扱ったニットボールの中では、最も扱いやすいニットボールだと思います。このボールは単体での販売も行っています。色のバリエーションがあるので興味のある方はHPで確認してください。20ドルです。個人的には、大きさのバリエーションがもう少し、例えば1インチとかあるといいのにと思います。

Small Balls-Bluether Magic

Each packet comes with four hand-stitched crochet ball, ideal for Cups and Balls magic and the classic Three Ball trick. The core is made of rubber, giving it th...

Bluether Magic

 

 カップに戻ります。このカップの特徴の1つとして内部がマットブラックにコーティングされています。これは、Bluether Magic と Raphael氏が出しているトミー・ワンダーカップのv2で行われた処理と同じであり、底にはRaphael氏のRが印刷(?)されています。内部を黒色にコーティングすることで、カップを上向きにした状態でボールを入れたときに反射でボールが見えることがありません。以前紹介したエルムズレイの手順などでこの状態が発生します。ちなみに、中が黒色になっているカップはこれまで紹介してきた中では、DPグループのPM カップ&ボール(銅)やCollectors' Workshopのカップがありますが、数は少なく貴重です。Bluether Magicのコーティングはとてもきれいです。使っていくうちにどれだけはがれていってしまうかはわかりませんが、もし剝がれてしまうなら、ちょっと見栄え的に良くないかもしれませんね。実際、私のCollectors' Workshopのカップは淵の近くのコーテイングが少し剝がれてしまってます。

PM カップ&ボール(銅) by DPグループ - カップ&ボールのカップ中心にいろいろ紹介

ディーピーグループから販売されている銅製のカップです。日本のマジックメーカーで金属カップを量産しているのはこのDPグループさんのみではないでしょうか…。PMカップ&ボ...

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Cups and Balls by Collectors' Workshop - カップ&ボールのカップ中心にいろいろ紹介

コレクターズ・ワークショップがリリースしたカップ&ボール用のカップです。何年にリリースされたか、正確な年を見つけることができませんでしたが、90年代後半から2000年...

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 ステンレスの削りだしカップといえば、以前紹介したTCCのMaster Cups and Ballsが最近リリースされてますよね。

Master Cups and Balls by TCC - カップ&ボールのカップ中心にいろいろ紹介

TCCは毎年アニバーサリー商品をいくつかリリースしていますが、今年(2023年)の13周年アニバーサリー商品の1つに「MasterCupsandBalls」カップがリリースされました。リリー...

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評価も高いこのカップと少し比較してみます。重さは同じくらいです。形としては、Master Cupの方が口径が少し大きく、丸みを帯びた形となっています。ショルダービードは高さは同じくらいですが、本数が異なります。


あと、個人的にちょっと違うなぁと思ったのはリムのところで、Bluether Magicのカップはまるでスピニング加工をしたリムのような形をしつつ、それが途中で切れてるような感じ(すいません、上手く表現できていないかも)に対して、TCCのカップはマウスの底は「たいら」になっており、リムのところも角は丸まっているものの四角(立方体?)となっています。


形的にはこんな感じの違いですが、実は、スタックしたときの安定感はBluether Magicのカップの方が圧倒的に良いです。多少のぐらつきがあるのは普通ですし、それによって手順上困ることは無いと思うので、TCCのカップに少しぐらつきがあっても、それが問題点というわけではありませんが、Bluether Magicのカップはかなり安定しています。ボトムの面積の大きさは、ほぼ同じで、先に書きましたようにギリギリだとは思いますが、Bluether MagicのカップもTCCのボール3つをボトムに乗せたままスタックできました。

 もちろんどちらが良いか?はいろんな面での比較となるので一概に言えませんが、あくまで個人的な意見ですが、細かい作りとしてはBluether Magicのカップの方がよさそうに見えます。まあ、値段がTCCのカップは150ドル(購入時は100ドル以下)でBluether Magicのカップは200ドルなので、その辺は差が出てくるかもしれません(逆にTCCのあのカップを100ドル以下でGetできたのはラッキーだと思っています)。重さに差があまりないので、あとはカップの形の好みでの判断になるかなと思います。

 最後に、このカップの形を見たとき、以前紹介したWONDER HOUSE'S CUPSと形は同じだと思いました。実際比べてみるとほぼ同じでした。3Dデータをそのまま使ってるかもしれません。WONDER HOUSE'S CUPSは3つ中2つがChop Cupであるとか、ショルダービードとリムにエンボスライン(?)を入れてあるとか、スカート(Skirt)の部分にカップ&ボールを演じる人が彫ってあるとか、袋が革製で凝ってるなど、いろいろこだわりがあって450ドルしましたが、そのあたりのこだわりを取り、純粋にカップとしてこの形でリリースしてきたという感じですね。そのため大幅にコストダウンができて、半額以下の値段で提供できてるんですね。

WONDER HOUSE'S CUPS(Brass) by Wonder House & Bluether Magic & Raphael - カップ&ボールのカップ中心にいろいろ紹介

前回紹介したTommyWonderCups&BallsSetを作成・販売しているメーカーのBluetherMagicから購入した「WONDERHOUSE'SCUPS」です。ちょっとややこしいですよね(笑)。...

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 というわけで。今回はBluether MagicのCups and Balls Set(Large)の紹介でした。私はPFのようにもう少しポテッとした形が好きなのですが、形が好みで削りだしのステンレスカップが欲しい!という人には、品質的にかなりお勧めのカップです。



フランク・ガルシア(Frank Garcia)

2024-03-25 16:35:00 | マジシャン別
 今回は「100万ドルの手をもつ男(The Man With The Million Dollar Hands.)」がうたい文句のアメリカのマジシャン、フランク・ガルシア(Frank Garcia)の紹介です。プロマジシャンでギャンブラー(イカサマ・ギャンブルの研究科)とされてます。1927年に生まれ66歳で亡くなっています。様々なジャンルの多くの著書を残していますが、やはりカードマジックのイメージがあります。有名どころとしては、

 彼の手順としてルー・タネンから発売された、有名なパケットトリック「ワイルドカード」があります。非常に人気のある商品となりました。ただし、オリジナルとなるピーター・ケーンのクレジットを書かなかったため、いろいろあったようです(;^ω^)

Wild Card - Magicpedia

 他には、たとえば私も根本さんのお店から購入しましたが、タネンのニュー・スターズ・オブ・マジックシリーズのマクドナルドの4Aも有名ではないでしょうか。

 その他カードマジックの手順も多く発表していますが、カードマジックの他にも、スリーシェルやスポンジボールなど有名なマジックも多くあります。もちろんここでは、カップ&ボールについて紹介します。

 フランク・ガルシア氏は「The Very Best of Cup and Balls」というカップ&ボールの本を出しています(1979年125ページ)。なんと大胆な名前でしょう…(;^ω^)。何を持って「ベスト」と定義するかはありますが、少なくともこの手順が現在において、バーノンの手順のように広くマジシャンに実演されていることもなく、またトミー・ワンダーの手順のように皆が憧れる手順でもない気がします。もちろん素晴らしい手順ではありますが今見ると名前負けしている感は否めません。

 以前ポール・ガートナー氏の紹介の時に少しこの本について触れましたが、Frank Garcia氏の手順だけではなく、あっさりですがPaul Gertner氏、Sam Horowitz氏の手順やその他ちょっとした話も載ってて楽しめる本です。カップ&ボールのみで1冊の本となっているのも珍しいのではないでしょうか。中古本として100ドルくらいで売られてることが多いですが、現在スティーブンスマジックさんで結構お安く入手できます。もしご興味ある方にはお勧めです。

The Very Best of Cup and Balls - Frank Garcia - Contento Estate

Frank Garcia's book "The Very Best of Cups and Balls" is considered by many of the best magicians as the bible of "The Classic Cups and Balls...

Stevens Magic Emporium

 

 ガルシア氏のカップ&ボールのフル手順は7段の手順から成ります。残念ながらすべての手順を実演した動画は見つけられてませんが、部分的な実演と解説はStars Of Magic #3 (Frank Garcia)に収録されています。

Stars Of Magic #3 (Frank Garcia)

Murphy

Penguin Magic

 

また、Cups and Balls Vol. 1 (World's Greatest Magic)にも収録されています

World

What can one say about the Cups and Balls? It

Penguin Magic

 


Youtubeに実演映像だけありましたので、示します。



 フル手順ではないので、ファイナルロードまでは行っていませんが、メインの手順は含まれていると思います。いかがでしょう?なかなかのテクニックですよね。チャーリー・ミラームーブを多く使ってます。実は本ではこの動作のクレジットは述べられておりません。ビデオではしっかりチャーリー・ミラーが考案した動作だと説明しています。このチャーリー・ミラームーブをするとき、口で音を出すんですね。面白いです。効果音ですね。他のマジシャンも音の種類は違うけど口で音を出していたような記憶があります(ジェニングスだったでしょうか…違ってたらごめんなさい)。この貫通の際に音を出すというは非常に興味深いです。音がある方が効果的なのでしょうか…

 Galloping Post Moveというムーブで積んであるカップを置くときに一緒にボールを持って行ったり、ボールが入っているカップをボールごと持ち上げスタックしたりしてます(;^ω^)。何度も行っている改めも上手いです…でも、ちょっとガチャガチャせわしなくカップを扱っているところは個人的には不自然というか、美しくはないと思いますが…。普通は気にならないのでしょうか…。また、途中に出てくるClick Moveですが、カップ&ボールを始めたころ、これを見て練習しようと買ったばかりのアルミ製カップを使ったところ、一発でへこんでしまったという苦い思い出があります(笑)

 ビデオでは、この手順のあと、Passing One through Another(カップの貫通)のバリエーションである、S. Leo Horowitzのコインをカップに入れて行うカップの貫通現象を紹介しています。これはアマ―氏のビデオでも解説されています。また、ビデオの違うチャプターでは、Elevator moveというムーブの実演と解説をしています(チャプター名:Elevator Cup & Ball Routine)。これは、「The Very Best of Cup and Balls」の本の中では述べられておらず、氏のルティーンの中にも入っていないのですが、後に知って気に入ったのかビデオに収録しています。またマジックハウスさんが出していた氏のレクチャーノートにも解説されています。(現在は正規で売られておりませんが、中古が出てる時があります)

フランクガルシアのクロースアップマジック-マジックファンタジア2号店

 日本語解説書英語解説書解説DVD付属品状態〇✖✖〇A備考...

マジックファンタジア2号店

 

レクチャーノートによると、「この技法はジョン・フォックス氏がセリーヌ氏に見せたものです」と書かれており、ガルシア氏オリジナルの技法ではないようです。なかなか巧妙な技法でカップを普通にスタックしたと見せかけて一つ上のカップに移動させる技法です。この技法は、上口龍生氏のカップ&ボールのDVDの中で使われており、解説もされています。

上口龍生のカップ&ボール(DVD)-セオマジックネットショップ

クロースアップはもちろん、サロンやステージでもできる、マジシャンならば絶対に覚えておかないといけないマジックの1つです。ダイバーノン氏の手順を元に上口氏...

セオマジックネットショップ

 

 カップの話を少しします。フランクガルシアは本の中で、カップ&ボールに適したカップとしてDanny Dewが作ったPaul Foxカップを薦めています。氏自身もPaul Foxカップを使っており、本の中で何か所かオススメしている箇所があったと思うので、かなりPaul Foxカップを気に入っていたと思われます。本の中では出てきませんが、ビデオで氏が使っているカップは銀色をしています。ある人の話ですとこのカップはDanny Dewが作った6つのシルバーセットの1つだとガルシア氏本人が言っていたとのことですが、Bill Palmer氏によるとDanny Dewは純銀のカップを作っておらず銀メッキだとのことです。メッキとはいえとても貴重なカップだと思います。

The Magic Cafe Forums - Garcia Cups and Balls

 ポールフォックスカップ関連でいうと、本の中に「フランシス・カーライルのお気に入りの賭け」というタイトルの章があります。Francis Carlyle氏がクラブでポールフォックスカップにラクロスのボールをおいて、「このボールがカップに入るか賭けるかい?」という賭けを行っていたと書かれています。ボールがカップよりはるかに大きく見えるため、多くの客は「入らない」と答えたようです(直接ここまで書いていませんがそういう流れの文章です)。今ではほとんどカップといえばPaul Foxタイプが多いですが、Paul Foxカップは多くの有名マジシャンに影響を与えたことがよくわかります。

 ちなみに、Stars Of Magicのビデオでエレベータームーブを使った手順が解説されていますが、このマジックをしている時にガルシア氏が使っているカップはポールフォックスではありません。モリッシーカップ(Morrissey Cups)のミニタイプで、Morrissey Mini Short Skirt Cupsと呼ばれるものです。Morrissey Miniには2種類のタイプがあり、Skirt(口とショルダービードの間)が狭いものとそうでないものです。このカップは狭いタイプで、つまりショルダービードから上が長いカップです。エレベータムーブに適しているのかもしれません。

 最後に「ガルシアカップ」なるものを紹介して終わりにしたいと思います。およそ2000年ごろに発売されたと思われるカップです。このカップが出たころ、私も買うか迷った記憶があります。Frank Garcia Cups and Ballsと書かれているものの、Frank Garciaはポールフォックス使ってるじゃん…と思い購入はしませんでしたが(笑)。形はかなり面白い形をしており、Garcia Cupsといいつつ、Garcia氏本人が製作に全くか関わっていないだろうこのカップはコレクションとしては面白いかもしれません。

CUPS & BALLS: GARCIA

Frank Garcia Cups and Balls. Tannen’s Magic, ca. 2000. Set of three chrome cups and balls cast with a ring of dimples.  Note: Balls not included

Tannen's

 

Magic Cafeで話し合われていたこともあります。やはり、マジシャンにはあまりウケは良くないですね(;^ω^)

The Magic Cafe Forums - Garcia Cups and Balls

いろいろ検索してたらフランク・ガルシア氏について書かれている興味深い記事を見つけましたのでリンク貼らせて頂きます

Better Late Than Never 100万ドルのカードの秘密











Hocus Pocus Junior by Unknown, Steve Burton

2024-03-09 08:42:00 | 本、DVD等
 Steve Burton Magicが1997に出版した「Hocus Pocus Junior」です。1638年、初版が発行された「Hocus Pocus Junior」をSteve Burton氏がカリフォルニア州にあるHenry Huntington Library(https://huntington.org/)の許可を得て「reproduce」したハードカバー65ページの本です。少し小さめの本です。
 完全に複製なのか、少し修正しているのか不明ですが、Jamy Ian Swiss氏のレビューでは「The publisher has painstakingly cleaned up the aged type」とあり、その作業は間違いなく大変な作業だっただろうと書いていますので、完全複製ではなく、整えながらの複製だったのかもしれません…

Hocus Pocus Junior

5

 
 この本は限定発売ですが、ノーマルエディション(300部)とデラックスエディション(25部)の2種類があります。共に、最後のページに番号とSteve Burton氏のサインが直筆で書かれています。両エディション共に表紙には金の文字とカップが箔押しされています。デラックスエディションは箔押しに22kを使っており、触感も滑らかです(革なのでしょうか?)さらに函がついてます。また、小さな説明カードも付いていました。
こっちがデラックスエディションで、
こちらがノーマルエディションです
 この本にはいくつかのトリックが解説されているのですが、表紙にはカップの絵が使われています!原本では表紙はないらしいので、Steve Burton氏の思いなのでしょう。世界最古の本格カップ&ボール手順の解説が書かれている、というのに加えてこの表紙のデザインに惹かれてこの本を購入しました(;^ω^)
 発売当初の値段はノーマルエディションが60ドル、デラックスエディションが150ドルと上記Jamy Ian Swiss氏のレビューにあります。氏は苦労して作った割に60ドルという値段に対して良心的だと述べています。恐らく当時(1990年代)は「Hocus Pocus Junior」を今ほど簡単に読めず、約300部とはいえ、この貴重な文献を読めるようにしてくれたこの本は価値があったのだと思います。また、この本は「Hocus Pocus Junior」の複製だけでなく、最後の11ページにSteve Burton氏の「EXCURSUS」が書かれており「Hocus Pocus Junior」に関する多くの情報が含まれており、興味深い内容でした。例えば、「Hocus Pocus Junior」は本当にタイトルなのか?など…
 出版当時「Hocus Pocus Junior」を読むことは簡単ではなかったかもしれませんが、今では割とお安く電子版が手に入ります。例えばLybrary.comでは7ドルで読むことができます…他の多くの古い本もそうですが、良い時代になったものです(;^ω^)

Hocus Pocus Junior by unknown

This book includes detailed work on the "Cups and Balls," and the first version of the "Stack of Pence" (i.e., "Stack of Quarters")...

Lybrary.com

 
 とはいえ、この本の内容は古い英語なので、私の英語力では正直理解ができませんでした…。そもそも表紙の「IVNIOR(Juniorのこと)」とか「Difcovered(Discoverdのこと)」からして、もう読めない…。どうしたものかと思っていると、カップといえばこの人、Bill Palmer氏が自身のサイトで「Hocus Pocus Junior」のカップ&ボールのところだけを現代風英語に直した文章(しかも複数エディションを足したもの)を作成して、ダウンロードできるようにしてくれていました!これでようやく、翻訳機の力も借りながら世界最古と呼ばれるカップ&ボールの本格的な解説を読むことができました…
 Bill Palmer氏のこのドキュメントの最後の「How this book came to be」にはSteve Burton氏との話も出ており面白いです。1993年に二人でHarry Ransom Research Libraryに行ってはじめて「Hocus Pocus Junior」を見たことがきっかけでSteve Burton氏は本を出版するに至ったという感じのことが書かれています。また、第2版と第3版にはカップとボールに関する追加資料があったと書かれています。
 「Hocus Pocus Junior」とその内容について少し書かせて頂きます。「Hocus Pocus Junior」は世界ではじめてカップ&ボールの技術を教えた本であり、その後に続く手順(ルティーン)も恐らく印刷された最初の「実際の」カップ&ボールの手順であるといわれています。世界最古のマジック種明かし本と言われることが多い(もうそんなことは無いですか?)レジナルド・スコットが1584年に出した「妖術の開示」(The Discoverie of Witchcraft)が「観察者」の視点からマジックを述べているのに対し、「Hocus Pocus Junior」は実演できる「マジシャンの視点」からマジックを解説しているのです。そしてそのカップ&ボールの技法・手順は現代にも通じます。
 このように「Hocus Pocus Junior」は本当のマジック解説本であったため、かなりのベストセラーとなります。先に述べましたように、初版から、第2版、第3版と進むにつれカップ&ボールに関する追加資料があったのですが、初版から第3版までの期間はわずか4年です。さらに第13版が60年の間に出版され、「Hocus Pocus」という言葉が含まれる派生作品は200年以上に渡り継続的に出版され続けたそうです。相当影響力があった本だと言えますね…
 次に書かれているカップ&ボールに関してです。まずカップについてですが、「真鍮製で作られ、曲がったレーンプレートのカップ(←ここちょっと意味不明です)で、すべて同じ大きさのカップを3つ持たなければならない。これらのカップは全て同じ大きさでならなければならず、それぞれのカップのそこはカップの中に少し入っていなければならない。」と書かれています。
図を示します。

おlカップについては図を見ると今の紙コップのような形に見えます。現在の紙コップより少し傾斜が大きい感じでしょうか。「カップの底が中に少し入っていなければならない」のは手順において、さかさまにしたカップの底にボールを置くからかと思いました。そうでないと転げ落ちてしまいますよね。興味深いのはショルダーが無いことです。確かに古いカップ&ボールの演者を描いた絵や版画で使われているカップも昔はショルダーがありませんでした。いつからかステップのショルダーが作られ、現在ではショルダービードが主流となりました。ここに書かれている手順でもカップをスタックし、カップとカップで作られる空間いわゆる屋根裏部屋にボールを置きますので、カップは底までぴったり重なるような形ではダメなんですよね。でも、ショルダーが無いですので、ちょっと上から強く抑えてしまうと、抜けなくなるなんておとが起こりそうですよね(;^ω^)
 次に、ボールについては、「ナツメグほどの大きさのコルク製のボールを〇個用意しなければならない」(※〇としておきました(;^_^A))と書かれています。ボールはニットボールではありませんが、現在のニットボールの芯としてよく使われているコルクだったようです。テンヨーのカップの非常に初期なバージョンではコルクボールだったようですので、意外と最近まで純粋なコルクボールも使われていたのかもしれません。
 最後に手順ですが、大きく4つの現象で、体に入れたり、空中に投げ上げたり、カップに向けて投げ入れたりすることでボールが消えて、カップから出てくるというものです。1個ずつそれぞれのカップから現れるバージョンと、1つのカップに集まって現れるバージョンがあり、それが、テーブルに置いたカップの下か、積み上げたカップの底かの2バージョンあるため、計4つの現象となります。面白いなと思ったのは、カップを積み上げるので悟空の玉のように貫通現象なのかと思いきや、集まるという現象だということです。また、ウォンドを使わないのか、とも思いました。もっと古いカップ&ボールが描かれている絵や版画では多くのマジシャンがウォンドを持っています。しかし、この解説ではウォンドを使っていません。消すときには体を使ったり(口や耳に入れる)、投げ上げたりします。これはなぜなのか…、当時ウォンドを使うのは主流じゃなかったのでしょうか…少し気になります。
 と、ここまで来てよくある展開になります(;^ω^)。
 苦労してカップ&ボールの部分だけなんとか読んだのですが、日本語の訳があるではありませんか(T_T)。はい、ご存じの方も多いと思いますが、「誰得 奇術研究」の記念すべき第1号ですね。2023年3月18日発行です...。この中で「現代訳ホーカス・ポーカス・ジュニア①」という章があり、そこで「ホーカス・ポーカス・ジュニアとは」から始まり、カップ&ボールの解説手順が日本語に訳されています...。非常に読みやすい...(T_T)。ホーカス・ポーカス・ジュニアのカップ&ボールに関する記載に興味のある方には是非お勧めします。

誰得奇術研究1:冊子版

商品の説明 独自の視点でマジックと向き合う新プロジェクト、始動!面白いなと思ったマジックやデックに関する話を少しずつ書き溜めていきます。 ★こちらは冊子版になります...

プレイフェア

 
ちなみに、ホーカス・ポーカス・ジュニア関係は3号、5号、9号では「現代訳ホーカス・ポーカス・ジュニア②、③、④」として、ホーカス・ポーカス・ジュニアに書かれているいくつかのトリックの訳があり、5号では「『Hocvs Pocvs Ivinor』初版本と著者名の秘密」が書かれています。興味のある方はご覧頂ければと思います。
 私の調べれる範囲など非常に狭い範囲なのですが、いろいろ面白かったです。書けなかったこともたくさんあるのでまたどこかで触れられればと思います。