■ 2025.2.8 WEB開催
毎年2月の恒例行事「チョウ類の保全を考える集い」に参加しましたので様子をレポします。冒頭の代表挨拶の時点で277名が参加していたとのこと。この人数をリアルに集めるのは会場の確保含めて大変なのでWEB開催で正解の気がします。
集いの表紙(左)とギンボシヒョウモン(右:当方在庫写真より@2016)
毎年思うのですが、チョウの数が各地で年々減っており保全の効果が追い付かない状況になってきています。これがチョウだけの話なのか、自然環境の全体の劣化なのか、更には人間の存続にどんな影響があるのか?とかいろいろ考えさせられる機会となっております。(チョウ類保全協会は目にとまりやすいチョウが環境評価のバロメータになるとの理念で活動しています。)
今回のメイントークはここ数年昆虫に大きな打撃を与えている農薬「ネオニコチノイド/フィプロニル※」の話でした(いずれも浸透性殺虫剤)。2000年代に入ってミツバチが激減した原因として脚光を浴び、その後日本では普通種であるはずの赤とんぼ(主にアキアカネ)の激減の原因ともいわれています。1990年代から使われ始めており、チョウの減少に拍車がかかった一因とされています。その影響は水生甲虫にも多大な影響を与えておりゲンゴロウの仲間の激減につながってるとのこと。また、特徴として昆虫のみを減らす薬であり、植物や景観には影響を与えないので一見無害ということがあげられます(虫だけを大量殺戮する)。また化学的に丈夫な組成であり、地下水や雪や雨で周囲に拡散するという性質もあるとのこと。今のところ人には無害の範囲で使用されていますが、巡り巡っての人体への影響も気にしないといけなくなるかもしれないとドキドキしてきました(ちょっと調べた感じだと既にいろいろ研究は始まっていて、一部の地域では細かい規制もあるようですね。)。
※フィプロニルは厳密にはネオニコチノイド系ではないようで、その違いは「ネオニコチノイドはアセチルコリン受容体と結合するが,フィプロニルはガンマアミノ酪酸(GABA)受容体と結合して,神経伝達を妨害する」ということのようでした。
富士山周辺のギンボシヒョウモンの分布の変化は以前チョウの保全のボランティアでお世話になった渡邊先生からの講演でした(このボランティアへの参加がきっかけでチョウの撮影を始めたのである意味恩人😓)。2003年以降その分布が急激に変化し、もともと標高1300mを中心としていたものが2013年には標高1600mまで上がったとのこと。また雄の発生も約1ヶ月早まっているとのことで、温暖化の影響かなーと聞いていたら、それもあるが、伐採地や皆伐地を追うように分布が変わっているようにも見えるし、標高の低いところからじわじわ高標高に進出している鹿害(鹿がチョウの幼虫の育成に必要な草を食べてしまう)の影響もありそうとのことで、単純な話ではないかもとのことでした。いやー、奥が深いです。
あとの2件は、農作エリア周辺でのミヤマシジミの保全や今では希少となってしまっているゲンゴロウが残っているエリアを戦略的にしっかり守っていこうという話でした。
次のセッションはチョウの保全の作戦を考えるために必要なモニタリング調査に関するお話。私も参加している「庭のチョウ」と「トランセクト調査」の事例紹介です。東北のビジターセンタではトランセクト調査でエゾミドリシジミやムモンアカシジミが見られるという超うらやましい環境に驚きましたが、それだけ自然が残っているということで、こういうところこそしっかりモニタリングを続けてほしいと思いました。
最後は保全協会からのいつもの活動報告。ヒョウモンモドキ、ツシマウラボシシジミ、ヒメチャマダラセセリなどの保全の様子が紹介されました。
というわけで、今年も大変勉強になしました。
そうそう、ネオニコチノイド系は家庭用の園芸薬剤にも普通に使われており、成分で言うと「クロチアニジン」と書いてあるとそれがネオニコチノイド系の成分だそうです。要チェックですね。
・前回の「集い」は:第20回 チョウ類の保全を考える集いレポ
・ギンボシヒョウモンの紹介ブログは:ギンボシヒョウモン
・ミヤマシジミの紹介ブログは:ミヤマシジミ
・当方のトランセクト調査報告は:2024トランセクト調査まとめ
・本イベントの主催は:日本チョウ類保全協会
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