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なかなか勝てない馬がいる。今日もその馬が走る。
がんばれ、と声が出る。
まなざしは、ゴールの先を見つめている。

希望という名のアナログ日記 角田光代/著

2022年04月03日 14時07分19秒 | 読書・文学
少女時代から作家としての半生までを振り返る感動的な回想から、愛してやまない忌野清志郎論、シャネルN°5のドキュメント、そして、恋愛と結婚、美味しい旅の記憶までを鮮やかに描いた充実のエッセイ集。珠玉の名短篇『それぞれのウィーン』を特別収録。

1 “希望”を書く(“希望”を書く世界の事実だった
どうしても暗くなる ほか)
2 旅の時間・走るよろこび(それぞれのウィーン(短篇小説)
永遠、という美。
台北ブックフェア、ひとりフードフェア ほか)
3 まちの記憶・暮らしのカケラ(ともに年を重ねる
恋と相性
町に沈む記憶 ほか)

充実しきった日々を夢中で過ごして、そうすることで、ずっと遠くに、ずっと高いところにいくことが以前の私は幸福だと思っていた。
でも、そうではない、と思うようになった。

猫は毎日毎日、戸惑うくらい同じように暮らす。
それを見ているとだんだん、昨日と同じというのはむなしいことではなくて、大いなる平穏に思えてくるのだ。ささやかな奇跡のようにすら思える。

私は太宰治が好きだ。
けれども私が金木の町巡りでいちばん興奮し、感動したのは、雲祥寺だった。
「思ひ出」に描かれている。
子守のタケが幼い太宰を連れてきて、お堂のなかの地獄絵を見せて説くのである。
この地獄絵は今も見ることができる。
地獄に落ちた人間が鬼に焼かれたり、煮だった釜に入れられたり、切り刻まれたりする光景が、緻密に精巧に描かれた巨大な絵だ。
私はこの絵を見るまで、自分が斜陽館より疎開の家より、こうしたものに感動するとは思っていなかった。たぶん、だれかと一緒だったら気づかなかったろう。圧倒も感動も、だれかと言葉を交わすことで薄まってしまうように思うのだ。

河原地蔵尊




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