目の前に収納庫がある
まさか・・・・この中に
心の底からぞっとした
夫から聞いた事があった内田さんは夫の同僚だった
奥さんが行方不明となって結局は見つかってない
キッチンの血痕があったので事件性も視野に入れての捜査もしたが、血は調理していた魚と判明
何らかの事情で家出したものと処理されている
夫の会社に電話した
『ねえ貴方、変な事を聞くけど引越しした、この家に内田さんも住んでたの?』
『何だ藪から棒に、奥さんが蒸発してからも暫く住んでいたよ会社を辞めるまで』
『早く帰ってきて欲しいの、蒸発した奥さんの遺体が和室の下に埋まってるかもしれない』
『何だって?』
ビックリした夫は、とるものも取り合えず自宅に向かった
同僚だった内田の名前を出した事があったが、引っ越した家に住んでた話はしていない、嫌な予感がした
帰宅した卓也は唖然とした
何台ものパトカーが住宅の前に停まってた
ものものしい雰囲気に包まれた引っ越したばかりの自宅
玄関に震えて座ってる美和子を見つけた
『美和子、いったいどうしたって言うんだ?』
その時だった
『出ました』
一斉に捜査官が自宅に入って行った
そして、1人の刑事が卓也に同行を求めた
『聞きたい事があるので署に連行します』
『俺?何で俺が警察署に?』
『話は署でゆっくり聞きます』
パトカーで連行されて行く夫の卓也を悲しそうに見つめる美和子
夢には続きがあった
内田の妻、幸子と不倫していた卓也
ちょうどその頃、美和子は妊娠していた
十年も前の事だったが、美和子が妊娠中に内田夫妻の、この社宅に遊びに来た事があったのだ
そんな昔の事などすっかり忘れてた
回りの景色も変わり家の壁の色も変わっていた
同僚の内田からの夕食の招きだ、美和子のお腹の子を労わる卓也に嫉妬の眼差しで見つめる幸子の強い視線を感じてた
笑顔で迎えながらも目の奥には冷たい中かがあった
美和子は気付いていたが気には留めなかった
その直後に失踪事件があったのは聞いていた
まさか夫が・・・
そのまさかだった
美和子の妊娠に内田の妻、幸子は卓也を責めた
『奥さんと別れて私と一緒になるって言ったじゃない』
詰め寄る幸子に卓也は冷たく言い放った
『旦那と子供を捨てて平気なのか?』
その言葉に逆上した幸子は庭に撒く除草剤を一気に飲み干した
救急車を呼べば不倫がバレる
和室の下に穴を掘り生きて苦しむ幸子を投げ入れ偶然にあった社宅の修繕に使うはずのセメントを流し込み隠蔽した。
そして誰にも気付かれる事なく今日まできた
社宅は無人のまま数年が経った
会社で誰も住まない社宅を取り壊し売り地にする話しが出て卓也は焦った
庭のある一軒家に住みたいと言っていた美和子の事を思い出し
『妻の為に庭のある社宅に住みたいので何とか1年でも良いので貸して下さい』
願い出たのだ
卓也は、1年もあれば、遺体を掘り出し別の場所に移動できる
その考えは、幸子の怨念が美和子に乗り移り暴かれた
夫の卓也はパトカーの中から美和子を振り返った
美和子に幸子が抱きついているのが見えた
予想は当たったかな?
美和子はどうしたかって?そのまま、社宅で暮らしてます