大好きな山元加津子さん(かっこちゃん)の『本当のことだから』という本のなかに、
李政美さん(ミュージシャン)のこんなお話が紹介されています。
「自分の中に宇宙があって、フタが開くときがある気がするの。
いい詩や自分の中にある、これと思った言葉に触れたときなどにフタが開いて、
メロディーが聞こえてくる。
だから、そんなときは自分で作ったという気がしないことがある。
そのフタは、自分で開こうと思っても開けなくて、あるとき、開かれるの。
きっと、その瞬間というのは、
自分の中の宇宙と外の宇宙とがつながる瞬間という気がして、とても不思議。
歌ができるのはそんなとき・・・」
なぜ、絵や曲を作る時に、宇宙とつながることができるのか、
かっこちゃんはこう語っています。
「人と人が出会って、影響しあい、いろいろなことに気がついて変わっていけるのと同じように、
絵や歌や、文章や彫刻なども、人の心を動かすことで、
人を変えていく力を持っているからだという気がするのです。
そしてそのことが未来を変えることにつながっていくからじゃないかと思うのです。」
かっこちゃんのいう「宇宙」とは、ガイアの純粋意識のことであり、
それは神やカムイや great spirit とも呼ばれ、
私たち一人ひとりにも内在する 同じひとつのものなのだと思います。
宇宙の“大きな力”は、「一人ひとりの人を信じてくれているんだなぁと思う」
と、かっこちゃんは言います。
信じてくれているから、このような機会を与えてくれたんだ、とも捉えることができます。
今、目の前で起きていることが、今の自分たちにとってすべて必要なことならば、
「宇宙が伝える心の声にしっかり耳を澄ませること」
先ずは、このことが一番大事なことなんだと思います。
先日、
結城幸司さんが twitter で語られた『白いふくろうになったカムイ』のお話は、
そんな「宇宙」につながって汲みとられた「メッセージ」だと感じました。
ここに語られたカムイたちの想いが、ひとりでも多くの人の内なるカムイに届いてくれますように。
そして共鳴し、環となり染み渡っていきますように。
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結城幸司さん 『しろいふくろうになったカムイ』
私が目覚めると なんだか空のカムイの様子がおかしい
樹の祠から空に向かい 私はその理由を空のカムイに聞くために近づいて見た
フームフームバサッバサッ
「偉大なるカントコロカムイ(天の神様)よ 貴方ほどの神がいったい何を嘆いてなさる」
カントコロカムイは言った
「森を見守り 森を愛してやまない梟のカムイよ
あの山のおくの山の向こうの方で 人間の作りし火の産む化物が暴れて暴れて仕方ない
雨を降らそうが風を吹かそうが 怒りを沈めんのじゃよ」と言った
見てみると 向こうの山のほうで白い煙をあげ 空のカムイを追い上げるように激しく音をたて
火をはく何かの様子が見えた
梟のカムイは恐ろしかったが勇気を振り絞り その山の向こうに飛び立つ決意をし、そこに向かった
しばらく梟のカムイは飛んだ
疲れたので途中の森に羽を休める為に森の中の桂の樹に降り立つと
その樹のカムイが梟のカムイに話しかけてきた
「これはこれは遠くの森を見守る梟のカムイさま、遠路遥々来ていただき有難うございます」
「空のカムイが困っていたので、あの煙を上げている所まで出向くつもりなのだが…」
すると桂の樹のカムイが
「おやめなさい、あそこにあるモノは皆もう毒にまみれていますよ 、行くのはおやめなさい」
どういう事だと聞き返すと
「人間たちは、いつしか自分たちの事だけ考える様になり 夜も眠らない街をつくり、
森を切り刻み、火の神をも自分達で造れると考え違いをおかし
合わせてはいけない神々たちを掘り起こし 引き合わせていかりに触れてしまった」
桂の樹のカムイは続けた
「カムイ同士は喧嘩をしてしまい、人間はなだめる事もできずに
その喧嘩で流れた毒の咳、毒の血をあたり一面に撒き散らしたのです
咳は風に混ざり、血は土から水に混ざりおかげで…」
「私の足元からもう毒が沁みて来ています
命に限りある生き物は 水を飲まないわけにもいかず、空気を吸わない訳にもいきません
仕方ないのでその水を飲んでいます
だからせめても遠くの森に住む生き物のため あなたは引き返し知らせてやってください」
梟のカムイはよく考えて
「いやこの様子なら、その合わせてはいけないカムイたちの喧嘩を止めなければ
やがて私の住む森にも染み込んでくるだろう
あの咳も空のカムイを脅かす力がある
困ったものだ、一体どうすればよい」
「あのぉもし」
その時梟のカムイに語りかけるモノがあった
「誰だ」
と振り向くと 桂の樹の隣に それは綺麗な花を咲かせた桜の樹のカムイがいた
そして梟のカムイにこう言ったのだ
「私に染み込んでいる水や空気の神様たちの代弁をさせていただきたいのですが…」
梟のカムイが黙って首をたてにふった
桜の樹のカムイは美しい花びらを散らしながら 心から話した
「水のカムイの言うことには、私たちはあの喧嘩さえ止めて下されば
時間がかかっても新しい水を運び 命の繰り返しに力を貸す事が出来ます
新しい水に毒が混ざらなければ 木々を育て空気を作っていけます」
桜の樹のカムイは続けた
「その事によって 生き物みな命の循環を繰り返し やがてもとの姿にもどるでしょう
しかし喧嘩を止めず 今までの様に人間しか住んでないように振る舞うなら
森の命は尽きていきます」
桜の樹のカムイは花を散らしながら心から話した
梟のカムイは考えた
「昔のように言葉を超えて私たちの心を受け取るモノが今の人間に居るのであろうか…」
暫く考えて梟のカムイは フームフームバサラバサラ と桂の樹から飛びだった
桂の樹のカムイは梟のカムイを見て
「ソッチは喧嘩をしている方向デスよ」と言うと梟のカムイは
「私に考えがある」と カムイの喧嘩する森へ飛びだって行った
フームフームバサラバサラ
近づくとカムイたちの喧嘩は激しかった
毒の咳を吐き 毒の血を撒き散らしていた
もはや梟のカムイの言葉など聞く様子もない
「やはりな…仕方あるまい」
梟のカムイは天を仰ぎ見た
「太陽のカムイよ…」
と言って 天高くバサラバサラと飛びだった
梟のカムイは太陽のカムイに近づいた
とても熱かった
いやもう火がついてしまった
太陽のカムイが言った
「梟のカムイよ そんな思いまでして なぜ私に近づいたのだ」
梟のカムイは太陽のカムイに言った
「もう昔のように人間たちの世界では、私たちの声を聞くものがいません
だから私は姿を変えて 目につくカタチで間違いを訴えたいのです
さぁ太陽のカムイよ、どうか私の姿を変えてください」
必死な梟の言葉に
「わかった」と梟の体を真っ白な姿に変えて赤い輝く目を与えた
梟は先祖から受け継がれた模様を無くす事に悲しい気持ちだったが
「ありがとうございます」と言って、空に大きく円を描き バサラバサラと
羽を三度鳴らすと 喧嘩するカムイ目掛けて急降下した
あいも変わらず興奮覚めやらず カッカッと温度を上げている
「人間が自然界から化け物造りだしたな。なんと罪深き事だ」
と呟くと梟は毒の血を呑み
「ふぉぉぉつ」
と声をだし羽を思いきり広げた
そして喧嘩するカムイの場を飛びだって上空で旋回した
「この姿を見よ、この苦しみの声を聞け、もの言わぬ自然界の苦しみをこの私の中に取り込み
人間に見せつけてその本当の事を知ってもらうぞ」
梟のカムイは力の限り人間の街の上を休む事なく
何日も何日もわざと目にとまるように飛び回った
時間が経過すると その事は人間界の話題となり 白い梟の話を皆がするようになった
「神の啓示だ」とか「なにか意味があるんだ」とか人間は言うようになった
しかし何日も飛び続けた梟のカムイは体に入れた毒のためもありフラフラになっていた
「最後に私のこの姿をみて総てを知る人間に会わなくてはダメだ」
梟のカムイは空から探した、
でも誰一人としてそんな人間はいないように見えた
「あきらめてなるものか…」
と言ってはみたもののもう力は使い果たした
空から梟のカムイは落ちて行くと 向こうから薄紅色の風がやって来て
梟を抱き抱える様に包み混んだ
あの桜の樹のカムイの花びらが 春の風に乗ってやって来たのだ
桜の樹のカムイの声が聞こえた
「ありがとう」
梟のカムイはゆっくり目を閉じた
すると太陽のカムイも金色の涙を流し その涙も梟のカムイを取り巻いた
美しい渦になり ゆっくりと梟のカムイを地上に運んだ
人間たちはその光景を見た
見たことのない光景だった
梟の近くに行くと 花びらに抱かれるように白い梟が死んでいた
ある人間が言った
「神など居ないと思っていたよ」
違う人が言った
「俺たちのかわりになってくれたんだよ」
「やっぱりあの原発は、すべての命を脅かすんだよ、この梟が教えてくれたんだよ」
と言っていた
白い梟のカムイは目と目の間から魂となり 人に見えない姿になり その光景を見つめた
『私のその体を調べなさい。毒の体を調べて役立てなさい』
と呟いた
何人かの人間がその声無き声を聞いたようだ
見えない私を見ようとしている
魂になった私はゆっくり空に吸い上げられて行く
詩を謡った
『銀の風が吹く時代をつくりなさい、命の声を聞きなさい』
『金色の雨を感じなさい、命の詩を謡いなさい』
と天に召されながら梟のカムイは語ったとさ
この話は過去にあるのか未来にあるのか
それは私たちの考え方次第
と梟のカムイは人間に託しましたとさ
(結城幸司さんの承諾をいただいて掲載しています。)