第二話
丹波の里をあとにした僧が向かった先は北の「大江山」
鬼切りの太刀が最後に使われた場所です、戦でちりぢりになった鬼達が、密かに故郷に戻り、集落があることを知っていたからです。
その戦とは、・・・100年ほどさかのぼります。
都では、宮中の主導権争いや、守護代の反乱などで、町びとが戦に巻き込まれ続けていた頃の話です、悪いことは続きます、それに追い打ちを、かけるように、幾多の人々が亡くなる、はやり病が起きます。
宮中では、官職らの話し合いが毎日毎日もたれます、しかし、いつの間にか、病をおさえるすべよりも、流言飛語を恐れる意見が多く出てきます、
「このままだと自分たちの立場が危うくなる」との声が起こります。
「厄除けだ”」「祈祷だ”」とうとう「鬼のせいだ”」「鬼退治だ”」
そして、それを上皇様に進言すると、直答で許可されます。
官職らの次の仕事は、誰を将に?兵の数は?・・・と、具体化していきます、これらは、すぐに決まりました「将門の乱」を平の貞盛、繁盛兄妹と供に鎮圧した「藤原の秀郷」に、が一致した意見です。
上皇様は自ら下賜文を書き、山城国随一の刀鍛冶「藤原の信貞」に命じ、一振りの刀を打たせ、数か月後、上皇が直々に秀郷に授けました。
これが「鬼切りの太刀」、ですが、銘されたのは、ずっと後のことです。
さて、お上から拝領刀を受け取ったものの秀郷はといえば、気乗りのしない役目です。
「お役人の都合だけで、悪いこともしていないのに鬼退治など・・・」「何か策はないものか」「そうだ、和尚に知恵を借りよう」
秀郷が向かったのは、山科にある高野山系の、小さな庵です。
その人物は、師と仰ぐ人で、宮中にも影響力を持っていたが、今は花を愛で、鳥と戯れ、静かに隠棲されています。
問いに、和尚は即答します、「殺すなかれ”」
普段聞いたことのないほどの大声”で、そして無言になり、「少人数で攻めよ」「弓矢は使うな」「夜討ちを駆けよ、を約束すれば、ワシが手をうつ”」そう言うと、筆をもち巻紙にスラスラと長文をしたため、「最も信頼できる家来に、大江山の鬼村長に届けさせよ」そして「今日のところは人目を避けて、目立たなく帰れ」
「日を改め、陽が落ちてから、今度は酒を酌み交わそうぞ”」
秀郷は和尚の所業から、その考えは、すでに理解しています。
暗い夜道を帰りながら、その顔は久しぶりに明るくなっていました。
第三話につづく
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