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And This Is Not Elf Land

Steel Magnolias

「マグノリア」のように美しく、「鋼鉄」のように強い女性たちの友情物語。

今でも「泣きたくなったら観る」映画。


※映画「マグノリアの花たち」の筋書き書かれています。

もう、古い映画の部類に入るんですね。(1989年)この頃は、いわゆる「女性映画ブーム」で、同じくアメリカ映画の「フライド・グリーントマト」、フランス映画の「エミリーの未来」なども観た記憶があります。

マグノリア(モクレン)はミシシッピ州、ルイジアナ州の州花。華やかで、眩しい陽光に映える、南部を象徴する花でもあります。


「マグノリアの花たち」はもともと舞台劇、オフ・ブロードウェーで上演されていました。映画のほうも、ルイジアナの小さな町の美容院を舞台に、そこに集う女性たちのやりとりが印象的で、「いかにも舞台」という感じがする場面もいくつかあります。ブレイク前のジュリア・ロバーツが健気な難病の女性を演じています。

ルイジアナの小さな町の美容院。町の人たちが復活祭の準備に追われていた頃、結婚式を控えたシェルビー(ジュリア・ロバーツ)が母親のマリーン(サリー・フィールド)と髪を結いに来ています。ちょうどその日、複雑な過去がありそうなアネル(ダリル・ハンナ)も職を求めて美容院にやって来ます。オーナーのトゥルビー(ドリー・パートン)は、多少の不安を感じながらも、アネルを雇うことにします。トゥルビーは夫や息子との関係が上手くいかず悩みの多い毎日で、良い話し相手を求めていたところでもあったのです。

晴れの挙式を前に、華やいだ雰囲気が漂う美容室でしたが、突然シェルビーが発作を起こします。シェルビーは難病患者でした。結婚しても、子どもを持つのは無理だと言われていました。

こうやって物語は始まります。復活祭、クリスマス、次の年の独立記念日、ハロウィン、そして、再び復活祭。南部の美しい自然と年中行事、そんな小さな町に生きる人々の生活が淡々と描かれます。

シェルビーが身体に負担がかかるのも覚悟のうえで、それでも「自分の子どもを産む」と告げたときの、母マリーンの不安と怒りは例えようのないものでした。激しくシェルビーを非難するマリーン。でも、頑としてきかないシェルビー。

やがて、男の子を出産し、心配されていた病状の悪化もなく月日が過ぎますが、子どもが最初の誕生日を迎えた頃、シェルビーは母から腎臓の一部の提供を受けなければならない状態になっていました。

このあたりの、シェルビーの父母の描写が興味深いですね。シェルビーが「子どもを産む」と決意した時は、母マリーンの心配と怒りは大変なものでしたが、父ドラムは楽観的で「初孫ができる」喜びに胸をはずませたりしているのです。しかし、生体移植の段になると、当事者である娘と妻は比較的リラックスしているのに、ドラムはやり場のない不安を隠せないのでした。

マリーンの提供の甲斐もなく、病状の悪化したシェルビーはやがて帰らぬ人となってしまいます。生命維持装置で生きている娘を献身的に看病するマリーン。やがて、決断の時が来ます。維持装置を外す書類にサインするシェルビーの夫。夫も父も最期のときを直視する勇気がもてず、病室から出て行きますが、母であるマリーンは最期の心臓の鼓動までしっかり見届けるのでした。そして、シェルビーの子どもに会うために車を走らせます。車窓はいつもと変わらないルイジアナの風景でした。親類に預けられていた男の子は、よちよち歩きで祖母に駆け寄ってきます。{泣きますよ~、ここ}

シェルビーの埋葬を済ませた後も、墓所から立ち去ることができないでいるマリーンのところに、美容室にいつも集まる女性たちが集まってきます。

とは言っても、どう慰めてよいか分からずに、皆が当たり障りのない言葉をかける中で、アネルが一歩進み出ます。彼女はこのところ宗教に没頭していて、周囲から多少煙たがられていました。一瞬、緊張が走ります。アネルは、いきなり「シェルビーの死は祝福すべきこと」なんて言って、マリーンの気持ちを逆なでしてしまうのですが、それでも彼女はひるまずに、自分の言葉で神の愛を語り、シェルビーを祝福し、マリーンを慰めようとしますます。最後には、マリーンは「ありがとう」とお礼を言うのです。{ここも好きだ}

シャーリー・マクレーンの演じるウィザーは偏屈なトラブルメーカーという役で、映画の最初から嫌われキャラが炸裂しているのですが、観ている側は次第に、実際はシャイで気の小さい純情なおばさんなのだと分かってきます。墓所で、マリーンが泣きながら、シェルビーが絶命する瞬間の話をするのですが、そういう話を怖くて聞いていられないのが、この嫌われウィザーなのです。

元町長夫人のクレイリーは人望も厚く、面倒見の良いおばさん。オリンピア・デュカキスにぴったりの役と言えるでしょう。一見、完璧な女性に見える彼女にも、実は子どもじみた一面があって、盟友(?)のウィザーにいつも突っ込まれているのです。このあたりのやりとりも、ベテラン女優の安定感のある余裕の名演技と共に、この映画の見所でもあります。

Steel Magnoliasは一昨年、ブロードウェーでも上演されました。今でも、全米のいたるところで上演されているようです。

この話は、アメリカでは「古典的な」劇とも言えるソーントン・ワイルダーのOur Townに近いイメージがあります。

最後は、ルイジアナの町に再び訪れた復活祭。結婚したアネルに子どもが生まれます。ウサギの衣装を着たまま病院に駆けつけるアネルの夫ユーモラスな姿から、だんだんカメラが引いていき、最後は街の俯瞰図を映してエンドクレジットになります。Our Townでは、舞台監督役の「全知の語り」が大きな役割を果たしていますが、この映画では「映像」がその役を引き受けているようです。

生まれて、愛して、命を終えて…繰り返される人間の営み。でも、一瞬一瞬を輝かせようとひたむきに生きる人間の命の讃歌。ありきたりだけど、それだからこそ、大好きな映画です。


最後に、主演のサリー・フィールド。今は「フォレスト・ガンプ」のママ役やドラマ「ER」でのマギー役などで演技派としての評価が高い彼女ですが、70年前後に「ギジェットは16才」というコメディードラマに出ていたのを覚えている人…います?

とびきりの美人ではないけれど、いきいきとした表情が印象的だったので記憶に残っているのです。

この映画に使われている音楽も美しく、サントラ盤を探したのですが、見つかりませんでした。ただ、日本のTV番組のBGMとして時々使われていることがありますが…。どこかに(サントラ盤としてではなく)CDがあるのでしょうか?
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