見出し画像

And This Is Not Elf Land

THE DROWSY CHAPERONE

思わぬ「拾い物」でした。面白かったです…♪

これを上演しているのが、今TKTSの仮ブースがある、Marquise Hotelの中のMarquise Theatre。10年以上前、ここでVICTOR/VICTORIAを観たのですが、襲ってくる睡魔に勝てずに散々な観劇になったこともあって、この劇場の印象は良くない。さらに、今回は「第一希望」「第二希望」のショーのチケットがなくて、仕方なく選んだ演目でもあり、まぁ、最悪の場合は寝よう~と開き直って観ました。(そんなら、ホテルに戻って寝れば~?…と言われそう)

これは、intermissionのない一幕2時間余りのショーです。

ミュージカルおたくの男性が主人公。彼の語りで話が進行します。「おたく」さんというのは、どこの国でも、ベージュ系のカーディガンを着て、いつも几帳面に裾を気にしているものなのでしょうか(笑)細かいしぐさが笑いさそいます。「おたく」ですね。彼の宝物はミュージカルのレコード。おじいさんが持っていたもので20年代に、現在は亡くなってしまった(ホテルになったらしい)Morosco Theatreで上演されていたTHE DROWSY CHAPERONEのLPレコードが特にお気に入りです。

どういうショーだったのか…今は観ることは不可能。手がかりはこのレコードだけなのです。このレコードを聴きながら(何せ古いので、時々針がとんだりします)この男性はどのようなショーだったの想像しながら至福のときを過ごしているのでした。

分かりますよ~この感じ!

そして、彼の居間でショーが始まるのです。ショーは結婚式の朝の人間模様を描いた、他愛のないものですが、そのショーには、その時代のミュージカルに取り入れられていた面白い手法もふんだんに取り入れられていて、それが男性の解説と共に、面白おかしく再現されます。

「水」をもらったつもりが、グラスの中身は実は「ウォッカ」で、飲んでビックリ、相手の顔にプーーーーッ!!!この時代、こういう「お約束な」笑いは数回繰り返されました。なんて、男性の解説が入ります。また、突然、大変な相談を持ちかけられたら、驚いて「杖を落とす」なんて「お約束」にも捻くりまわした解釈をつけます。

こういう感じは、何かSEINFELDみたいなobservational comicのような面白さがありました。演じているのはPeter Bartlet。THE FROGSなどでも活躍していたようです。

私も、思わずJerryのstand-upを引き合いに出しましたが、プロの俳優さんの「語り」はコメディアンのそれとはまた違った、緻密に計算されたテクニックに基づいたミスのない語りで、やはりプロの芸だと感心しました。

さて、話がずれましたが、この杖のシーンは、古いテープが何度も何度も同じシーンを繰り返すように、機械的に面白おかしく繰り返される見せ場になっています。

また、この時代の舞台はpolitical correctness(考え方の上での正しさ)など関係なく、人種もかなり類型的に描かれていますし、「お決まり」の人物描写なのも面白おかしく誇張されます。東洋人の役に白人がキャスティングされ、一フレーズだけ現地の言葉で喋って後は全て怪しげな英語になったりとか。

そういえば、MISS SAIGONでは東洋人役に白人が起用されたことでトラブルが発生しましたよね。この後にMISS SAIGONに関する言及が少しあることを考えると、あの騒ぎのことも皮肉っているのかな…と思います。

また、昔のショーでは、物語とは関係ない、ナンセンスな異国趣味を見せるシーンもあり(お客さんが、そういうのを喜んだのでしょう)、このTHE DROWSY CHAPERONEでも猿のダンス(?)のシーンがあるんですが、でも、男性はここが特にお気に入りなんだ~♪と嬉しそうに言います。

そうですよね。そういうナンセンスな部分、多少度が過ぎた部分にこそ、強い(別名:アブナイ)愛情を感じるってのが、ファン道まっしぐらな証拠でもあると思いますよ。

男性の居間で、もう観ることの出来ないショーが繰り広げられていきますが、出演者たちは彼の存在に気づいていきます。このあたりはウディ・アレンの「カイロの紫のバラ」みたいで、洒落た演出で見せてくれます。

こうやって、物語も大団円を迎えるわけです。
ミュージカルだけじゃなくても、とにかくファンというものは、もう実際に観ることが出来なくなったものに夢を馳せ、想像力をたくましくするものなのです。それがまた、至福のときなんですよね~。そんな幸せを舞台にしてくれたのがこれ、THE DROWSY CHAPERONEでした。観てよかったです。パンフレットもパロディがいっぱいで面白いですよ。

それと、花嫁役はSutton Foster。THE PRODUCERSでLeoをやってるHunter Fosterの妹です。この秋にオープンするYOUNG FRANKENSTEINではInga役をすることになっています。

コメント一覧

master of my domain
美都様はこれをご覧になっていなかったのですか?それは残念です。
このショーを観ながら、マックスのオフィスに貼ってあったポスターから内容をあれこれ想像して楽しんでおられた、そちらのかつてのサイトを思い出しながら観ていましたよ。
美都
妹だったんですか…。
何か似てるな、と思いつつも普通にスルーしてました、私。
いかにフォスターに興味がないか知れますね!(笑)

NYを楽しんでいらっしゃるようで、読んでるこちらまで楽しくなります。
時差ボケと書いていらっしゃいましたが、大丈夫でしょうか?
自分が時差ボケ知らずなので辛さがサッパリ解からないのですが、疲れてる時は無理せず寝るのが一番ですよ。
ま、一つでも沢山見たいって気持ちも解かるのですけどもね(笑)

しかし、私も「観るのがなかったら観よう」と思って結局候補から外してしまったTHE DROWSY CHAPERONE
ミュージカル・オタクの、しかも古き良き時代へのオマージュであるのならば、今更ながら「観とけば良かった…!」と思っています。
古臭いミュージカルの古典的なお約束を、私も愛しておりますからね!
英語がしゃべれれば語り部たるオタク君と熱く語り合いたいくらいです(笑)

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Theatre」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2021年
2020年
人気記事