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And This Is Not Elf Land

JERSEY BOYS



Broadwayで一番人気のJERSEY BOYS。60年代、日本でも「シェリー」などのヒットと飛ばしたThe Four Seasons(フォーシーズンズ)の誕生から成功、そして挫折や別れを経て再会するまでの話を当時を再現するドキュメンタリーのように描く舞台でした。

とにかく、会場前に集まる客層を見てびっくり!
「平均年齢…高い!」
もっとも、60年代に大人気だったスターの物語なのだから…そしてまた、主演のフランキー役をはじめ、みな実物そっくりに演じていると評判なのだから、リアルタイムで彼らを知っている人が集まるのは頷けますが…
会場に入って、更に気づいたのは

「白人ばかり…」

私…
自分のブロードウェー体験の中で、こういうのって…初めてですよ~
ほんとに、大袈裟じゃなくて
非白人は私ぐらいじゃなかったでしょうか?
「あっ、あの人は違うじゃない…?」と思ったら、客席でCDを売り歩いてる係りの人だったりとか…。

とにかく、会場は白人のベビー・ブーマー世代で一杯。独特の雰囲気が漂っていました!「日本だったら、こういう客層になるショー(ライブ・コンサート)って、どのあたりかな?」なんて考えずにはいられませんでした。

そうなんですよね。このJERSEY BOYSはこのショーの内容を味わうだけでなく、若き日の夢と挫折、愛と別れ…それを心の中で宝物のように大切にしながら生きていくのが人生なんだと、完成度の高い音楽と共に、改めて実感させてくれるものでした。そうして、そんな一種独特のセンチメンタルな世界を、あの甘酸っぱい彼ら独特のメロディーをもって、観客に共有させてくれるものでした。

エド・サリバン・ショーに出演したときの画像を見せながら、画面の動きと同じように歌う場面があったり、当時の若者の世界を忠実に再現したセットがあったり…。内容も、4人のメンバー一人一人の「語り」で進んでいくもので、ドラマ的な要素はありません。しかし、特にこの4人と同じ世代を生きた人にはたまらないものがあるだろうと思います・

長い間生きてきて、人生を長いスパンで見ることが出来るようになった世代の人々たちであるからこそ、説得力を持って受け止められるであろうメッセージもたくさん含んでいます。

ショーの中で歌われた曲の半分ぐらいは聴き覚えがありました。「あれ、この曲もこの人たちだったのか…」と改めて分かったのもありました。しかし「フォー・シーズンズ」という名前はさほど記憶にありません。当時は、これらの耳なじみの良い曲の数々とヒットさせた当事者たちにまでは関心が及ばなかったのかもしれません。昔はそういうのはよくありました。海外のアーティストの接点は限られていましたから、曲は有名でも、どういう人が歌っているのか知らないと言うのも珍しくありませんでしたし…

しかし、もちろんNYの観客は、そうではありません。
観客の中にはNew Jerseyの人が少なくないようで、「ご当地」ネタになると異様に盛り上がる人たちがいたり…。また、ヒット曲が歌われると、イントロから大拍手が起きて、まるでライブ・コンサートのような雰囲気でした。

なんかねぇ~、
私は完全に「場違い」な気が(笑)
というか、他の観客と全く同じものは絶対に共有できないんですよ。それは嫌ほど思い知らされましたね。それでも、自分にとってのJERSEY BOYSは何だろう…と、ずっと考え続けていました。

フォー・シーズンズの4人はハドソン川対岸のNew Jerseyの出身。そこの貧しいイタリア系の労働者が集まる地区で、チャンスをつかむことも難しく、悪い誘惑も多い環境にいたのでした。有名なフランク・シナトラもNY対岸のイタリア系の多い地区の出身です。ここは、事実上New York市の区のひとつとして考えられるんじゃないでしょうか。Manhattanへ架かる橋で夢を語る姿はSaturday Night Feverを思わせました。

60年代の初め、貧しい労働者の多い地区に住んでいた若者たち。チャック・ベリーなどの黒人歌手が生み出すロックン・ロールに惹かれながらも、自分たちならではの「音」を求めます。何度も試行錯誤を繰り返しながら、フランキーの高い声が独特のスウィング感を生み出すことに気づいたメンバーは、ヒット曲つくりのノウハウを知る知人も仲間にしたところから、運にも恵まれ、時代の波も後押ししてくれて次々と大ヒットを飛ばすようになります。

優れたテクニックを持つ人、ノウハウを知っている人、仲間同士の雰囲気を盛り上げるのが上手い人、地道に自分の仕事をこなす人…これらの個性がベストなハーモニーを作り出した時に、大きな成功が得られるの…というのも、この手のストリーでは定番かな。でも、それが長く続かずに、次第にぶつかり合ったり、道を外したりしていって、「夢」を持続させることの難しさを甘酸っぱく描くのも、これまた「定型」かな…という感じ。

しかし、主演の4人は、もう凄いと言うしかない。下手をすると、単なるコピー・バンドの演奏になってしまうところを、4人それぞれが実在の4人の人間像をきちんと演じた上で歌と演奏をしている。主演のフランキーは、最後に辛い別れを体験するのですが、その辺りの演技は、やはり役者としても一流なところを見せました。さっきまであれほど盛り上がっていた会場が、水を打ったように静まり返りました。

JERSEY BOYSはブロードウェーとは別に、アメリカ国内ツアーもやっているのですよね。これだけのレベルの歌と演奏と演技が出来る人たちがまだまだいるんでしょう。ホントに悔しいくらいの層の厚さですよ。

それと、このショーは、映画化や来日はちょっと難しいと思いました。


「愛」「別れ」「夢」「挫折」…それらも、長い人生の中では、季節の変遷のようなもの。それでも、それぞれの季節を彩ってくれる花もある。

Walk like a man
Talk like a man
Walk like a man my son
No woman's worth
Crawling on the earth
Just walk like a man my son
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