心の迷宮
2009年トニー賞、ベスト・オリジナル・スコアに輝いたNEXT TO NORMAL
サントラCDを購入して聴いてみました。(とは言っても、まだAct 1の分しか聴いていませんが…汗)
素晴らしいですね…
ジャケットに、五線譜が途中で縺れているデザインが描かれていますが、まさにそういう印象です。いや、旋律そのものが縺れているわけではありませんが…デリケートな心の揺れがそのまま音楽になっているような感じ。で、ストリングスの使い方が上手いこと!
3曲目の、おそらく娘が歌っている曲の冒頭がモーツアルトのピアノソナタで始まるのがドキっとさせられますね。とてつもない緊張感の中に響くモーツアルトは怖かったりする…
その後は弦楽器(ビオラかな?)の音が効果的に使われ、クライマックスに進むにしたがって電気を使った音の出番が多くなっていくのも印象的。
アリス・リプリーもボビー・スペンサーも、歌唱力が「そこそこ」なのもベストマッチ!(これは貶していているのではありません)かれらの歌唱には「恐ろしいほどの」現実感があります。(いかにもミュージカルな、歌い上げるような歌唱はこの作品には似合わない)歌詞に注意を払わなければ(?)イージー・リスニングとして、流しっぱなしにしておいてもいいような、日常の空気の中に普通に浸みこんでくる音で貫かれています。
このストリーの舞台となっているのは、郊外の裕福な家庭。妻が双極性障害という精神の病に苦しんでいます。物質的には何の不自由もなく、社会の不公平に悩む必要もない家庭を舞台に、そこに生きる人々の「内面」をひたすら掘り下げて描くという…これは、小説でも映画でも、一つのジャンルとして確立している世界ですが、この作品もそういうものの一つとしてカテゴライズされるんではないでしょうか?
この作品のように、エンターテインメントにおいて、心の病気を題材にするということに関しても、私は肯定的に考えています。…でも、この作品は、間違っても翻訳上演されそうにないですが(笑)
夢や恋愛や冒険のストリーを楽しむのと同じように、デリケートな心の世界も、時にはひとつの「ロマン」と捉えてみてもいいのではないでしょうか。それが、現実の世界においても、何らかのブレイクスルーにつながっていくと思うのですが…
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