And This Is Not Elf Land

MATILDA




今年のトニー賞作品賞の「本命」と目されているミュージカルMATILDA(マチルダ)…結論から申しましょう、これはロンドンで観るべき作品ですね。



わたくし、最近は、NYに来ても、JERSEY BOYS以外の作品はあんまり観なくなりました。まぁ、さまざまな舞台を見れば、それ相当に発見もあるし、勉強にもなるんですが…でももう、この年齢になって(…)「勉強」もへったくれもないだろうし…ひたすら好きなものを愛でる、という~そういう人生でええじゃんか!と開き直ったからであります。

(まぁ、これはこれでオソロシイ話ではある)

それと、観劇尽くしというスケジュールにも、体調を合わせるのが困難になってきていたりしているのでもあります。

と、言い訳がましい前置きをしていますが(汗)早い話が…今回、JB以外で観た作品はこれだけでした。

さすがに「本命視」されているだけに。非常によくできた完成度の高いショーでしたが、期待したほどではありませんでした。第一幕は非常に見応えがあるのですが、第2幕になると、舞台の仕掛けにも「見慣れて」きてしまうし、第一幕であれだけ圧倒的に見えた歌や振付に失速感を感じてしまうし、ストリーも終盤になると展開が読めてしまう…ような感じで、期待値をやや下回りました。

しかし、俳優の個人技は素晴らしかった!

私が観たときのマチルダ役はベイリー・リオン。歌声がこもって聴きにくい部分があったことを大目に見れば、十分にその役割を果たしていました。小さいころから、大人の闇の部分と向き合ってきている子どもというのは、きっと、本当にああいう表情をするんでしょうね。そして、知性に恵まれていることで、かえって傷つきやすい…という、難しいキャラクターを、観客からの同情も引きよせながら、非常に上手く演じていました。素晴らしいです。

トランチバル先生を男優が演じるというのは、私の年代では、どうしても青島幸男さんの「意地悪ばあさん」を思い出してしまうんですが…ほら、ヘアスタイルも同じだし(爆笑)陰湿な中年(老年)女性を男性が演じることで、いい具合に戯画化されて、こちらの方が作品として成立しやすいんでしょうね。しかし、この人も「反則だろう!」と言いたくなるほど上手いです。

マチルダの両親、よき理解者となる(というか、不思議な運命の糸で結ばれていた)先生、図書館司書…みな良かったです。わたくし的に気になったのは、お母さんの化粧台のソフィア・ローレン(だよね?)の写真。例の似非イタリアン・ダンサーといい…知的なことに興味がないママが傾倒するのがイタリアもの~ってのが…これどうなんですか(笑)私がイタリア人だったら、気分が悪い(!)

まぁ、それはそれで横に置いとくとして(?)観終えてみると、やはり、これはイギリス人のミュージカルかな…という感じがしました。

幼い子どもが大人から酷い扱いを受ける話~というのは、イギリスでは「ジェーン・エア」とか「オリバー・ツイスト」とか…「小公女」などもそうですし(追記:「小公女」は作者がイギリス生まれで、ロンドンを舞台にしているので、ここに入れていますが、実際には、アメリカ文学に入るとおもいます)、わりとこういう話を受け入れる土壌がしっかりできているような気がします。イギリス人独特のブラックで冷めてユーモアの延長として、子どもを主人公にした、ちょっとダークなストリーも楽しめるのでしょう。

一方、アメリカでは、いわゆる児童虐待が出てくるメジャーな作品というのは「ハックルベリィ・フィンの冒険」ぐらい(?)しかし、あれはそんなに「陰湿」じゃないし…しかし、その「ハックルべリィ~」でさえ、「児童が虐待される話を子どもに読ませていいのか?」などとPTAが騒ぐような保守的なお国柄。

アメリカ人って、こういう話、基本…苦手なのでは?

~なんて、私が勝手に思い込んでいるだけかもしれませんが、このブロードウェイのMTILDA…どこかぎこちなさを感じてしまうのでした。

本場のロンドンで観れば、もっともっと、突きぬけた面白さが味わえるのかもしれないと思いました。アメリカは、やっぱANNIEのようなノー天気な話のほうが似合いますよ(笑)しかし、このANNIEは、MATILDAの影響か…興行的には苦戦しているのですよね。面白いものです。

以上、自分でもワケのわからない(?)MATILDAの感想でありました~

コメント一覧

Elaine's
えりかさま、

コメント、ありがとうございま~す!

えっ、BWでも、両親はかなりぶっ飛んでいる感じを受けたのですが、ロンドンでは、もっと徹底しているのですね。言われてみると、想像ができないでもありません。

たしかに、アメリカなんて、あの「フランダースの犬」でさえ、ハッピーエンドにせざるを得ないお国柄ですから(!)こういう不幸な子どもの物語も「愉快痛快」と逆に楽しんじゃう…という伝統がないんではないかと思います。

BWのマチルダは、最後まで「この作品の本来に魅力を見せられていないのでは」という消化不良感が残りました。

ロンドンへ行ったら、是非観てみたいと思います!!
えりか
http://blog.heather.main.jp/
マチルダご覧になったのですね!!
私は去年ロンドンで、今年はNYで見ましたが、ロンドンのマチルダの方が、マチルダような状況下におかれても、たくましく、自分の力で何とかするんだ、というパワーがあり、でも誰かに頼りたい子どもらしさもあり、そのバランスが絶妙だったのですが、私が見たマチルダちゃんは不幸さも足りなければ、賢さもなく、うーんと思っていました。
なるほど、アメリカだとこういう「不幸な状況」から抜け出す強さやたくましさを、小さいときに本や映画などで体験していないのですね。
更に、ロンドンだともっとお父さんとお母さんがぶっ飛んでいた、というか、親らしさのかけらもなかったのに、アメリカだとそこまでは行きすぎ、と思ったのでしょうか。お父さんもお母さんもマイルドになっていて、ロンドンの方があり得なすぎて面白かったので、Elaine'sさんの記事をなるほど、と拝読させていただきました。
役者の技量の問題か、と思っていたのですが、こういう背景に起因していたのですね。
それだからか、お客さんも、ロンドンで見たときは劇場中が最後は幸せな雰囲気に包まれていたのですが、NYはそんな感じがなく、くらーい雰囲気でした。

作品としては本当に良くできていると思うのですが、NYでは評価されなかったのも、そういうことなんでしょうね。
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