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リバイバル演劇賞
演劇主演男優賞(デンゼル・ワシントン)
演劇主演女優賞(ビオラ・デイビス)
本当にもう、大枚叩いて、5列目ド真ん中で見た甲斐がありました(そこかよ)
リバイバル劇としての「対抗馬」だった『橋からの眺め』(こちら)も良かったんですけどね~相手がこれでは、いたしかたないです…
セレモニーの中で見せられる舞台の映像クリップからは、あのときの感動が甦ってきました。語るようでもあり、謡うようでもある、デンゼル・ワシントンのモノローグのシーン…
前回の記事では、脇役について触れることができなかったので、今回はそれについて書きましょう。
※というか、ほとんどネタばれしておりますので、ご注意!
主人公のトロイには、最初の妻との間にリオンズという息子がいます。彼は、ジャズ・ミュージシャンを目指して、マイペースで生きています。もう、生存するための「競争」なんて、どうでもいいじゃん~という感じ…。これは、父の生き方に対する強烈なアンチテーゼのようでもあります。
トロイには、何よりも、リオンズのやっている音楽が「ジャズ」だっていうのが気に入りません。彼にとっては、ジャズなんて軟弱そのものなのでした。「俺たちの音楽はブルースのはずだ」と、いつも文句を言います。このあたりというのは、このあたりの音楽にあまり詳しくない私には、十分に理解しきれないところではあります。しかし、この劇のバックには、ジャズとブルースを融合したような、非常に繊細、かつドラマティックな音楽が常に流れていました。
いずれにしも、トロイは最初からリオンズとは距離を置いているようなところがあるのですが、今の妻との間に生まれたコーリーとは話は別でした。
コーリーは、澄んだ眼をしたひたむきな少年で、フットボールをやっていました。トロイは、これはこれで気に入りません。自分は野球の黒人リーグに所属していたことから、「スポーツをやるなら野球」という考えを変えることはできません。「フットボールなんて、まだまだ白人中心のスポーツ。そんなスポーツをやっていても、白人に利用されて終わる!」と。彼には、黒人リーグからマイナーリーグ、そしてメジャー・リーガーとなったジャッキー・ロビンソンは英雄そのものなのでした。
結局、トロイは、コーリーのフットボールの奨学金のチャンスもつぶしてしまいます。「結局、お父さんは、僕がお父さんを超えるのを見たくないだけだ!」そう言い放って、コーリーは家を出ていきます。(このあたりは、古今東西、どこでもありそうな家族のドラマ)
そして、義兄のガブリエル(これが、大天使の名前であることに注目)戦争で負傷しています。温厚でお人よしなのですが、話すことは辻褄が合わず…明らかに「病んでいる」人として描かれています。しかし、彼には、元軍人として、多額の年金が受給されていました。トロイはまた、このガブリルの「年金」を当てにして、許されないことをするのでした。
ガブリエルは、軍にいたころからラッパを吹いていて、自分がトロイの葬儀にラッパを高らかに吹いて、天国の門を開けてあげるのだ…と常日ごろから言っていました。
そして、トロイの葬儀の日…ガブリエルがラッパを鳴らそうとするのですが…ラッパが錆びついてしまっていたのか、ガブリエルにはもはや、その能力が残っていなかったのか…とにかく、ラッパは鳴らないのです。でも、屈託ないガブリエルが、自分がラッパの代わりに声を出すと言います。そして、天に向かって、不器用で、ぎこちない「叫び」を上げるのでした。
シンプルな幕切れなのですが、それでも「天国の門があいた」ことを想像させる、素晴らしいエンディングでした。もちろん、客席は割れんばかりの拍手~!
トロイは、非難されても仕方がない、天国に迎え入れられるにはほど遠い、生き方をしたかもしれません。
しかし、普通に善良な人でいれば、黒人でありながら、このような小さなマイホームも持って、安定した生活を送っていたかどうか…この時代背景を考えれば、断言はできません。「夢の実現」の途上には、幾多の塵芥はつきものなのでしょうか。これは「ギャツビー」にも言えることです。しかし、そんな「薄汚れた」ものの中にも、それでも「これはロマンなのだ!」と思えるような「純度」の高いものが、一筋でも見いだせれば、それがすべてを浄化してくれるのでしょう……いかにもアメリカの作品ですね。
デンゼル・ワシントンの、自信と不安が交互に現れるような(「当然だろ!」「でも、これでいいのか~」「いいんだよ!」「でも…」)複雑で細やかで、かつパワーあふれる演技…あるときは大拍手が起き、あるときは大ブーイングが起き…とにかく、受賞は当然だと思います。
ローズ役のビオラ・デイビスさんの受賞スピーチを聴いていると、低くてふくよかな台詞の声を思い出して、またまた舞台の感動が新たになりました。
今後は、ますますチケット入手困難になりそうですね。
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