私のバイオ

きっと一万円もしない、安物の楽器。



４年前に私のところへ来てくれた。



それから２年半。

その存在を忘れた頃だった。


私を新しい世界に導いてくれた。



私に『音楽』をもう一度教えてくれた。




今では毎日顔を見て、肌を合わせている。




調子がいいときも悪いときも


寒い冬も暑い夏も


私が弾けば音を出してくれる。



機嫌がいいときもあるし

悪いときもある。



いろんな音を出すバイオ。


なんだか私に似てる。




練習が終わったら、

『ありがとう』

って楽器を拭く。



そうするとまた いい音を出してくれる。




バイオを拭きながら、弦楽器の見た目の美しさを愛でる。



可愛くてたまらなくて、


私はバイオにキスをする。


バイオは少し迷惑そうな顔をして笑う。




明日もよろしくね。