背中合わせの二人

有川浩氏作【図書館戦争】手塚×柴崎メインの二次創作ブログ 最近はCJの二次がメイン

性悪

2008年08月28日 11時23分08秒 | 【別冊図書館戦争Ⅱ】以降

柴崎の携帯が軽やかな着信音を鳴らす。
誰からかは見ないでも分かる。

「はい」

「あ、俺」

「うん」

「何してた。寝てたか」

「まさか、まだ10時前でしょ。なあに? 用事?」

「いや、何って用事ってほどじゃ。
――そうだ。コンビニ行かないか」

「コンビニ? 今から?」

「うん。何か飲み物でも買おう」

「えー今足りてる。ストックいっぱいある」

「酒も?」

「ビールもチューハイもある」

「……そっか」

手塚の声がすとんと途切れる。でもまたすぐ、

「あ、じゃあデザートは。アイスとか買ってやるよ」

「アイス~? 今の時間に食べると脂肪に変わるだけだから遠慮しとくわ」

「おごりなのに」

「おごりでも。美貌維持のが大事」

「美貌ってな……。自分で言うか」

「ふふ。じゃあ切るわね。気をつけて買出し行ってね」

「あ、待てよ、麻子」

慌てて呼び止める。

「ん?」

「――つきあえよ。お前も。

分かってるんだろ。・・・・・・顔,見たいんだよ」

どうしても。と低声で結ぶ。

柴崎はようやく微笑んだ。
携帯の向こうの手塚に見えないのが,惜しいくらいの極上の笑み。

「最初からそう言えばいいのよ。バカね」

「たまには気がつかない振りで釣られてくれ」

「だあめ」

ちゃんと言ってよ。聞きたいの。
あんたの声で。言葉で。

「性悪」

苦り切って手塚はつい漏らす。悔しそうな顔が目に浮かぶようだ。

「ほめ言葉としてもらっとく。――あ,おごりはハーゲンダッツだからね。黒蜜のやつ」

「分かったよ」

「ロビーで待ってて。3分したら行く」

そう言って柴崎は通話を切った。


眠る前どうしても会って顔が見たいときがあるのは,柴崎も同じ。
実は今夜あたり手塚から電話があると踏んで,もうお出かけ用の準備はできていた。髪も整えてあるし,パーカも着てる。
この3分,支度する振りをして待つ時間がもどかしくてじれったい。
でもたまらなく幸せ。

こんな可愛いあたしを性悪呼ばわりするなんて,光もまだまだね。
部屋を出る前,鏡に映した自分に,柴崎はにっこり笑いかけた。

Fin.
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