「可愛いなぁアルフィン、これってハロウィンのコスプレだろう?」
ピザン王室のHPを閲覧していたリッキーが声をあげる。
10月末のハロウィンを控えて、ミネルバでも何か飾り付けをしようかという話になった。
そういえば昔、この時期コスプレしたわあたし、とアルフィンが言い出した。小児科病棟に入院してる子たちの慰問で、お見舞いに行ったときと。
リッキーやジョウが見たいと言ったので、まだ掲載されてるかなとアルフィンがネットで検索した。パソコン画面に映し出されたのは、10代前半の頃のあどけなさの残るアルフィンの姿。
ジョウが目を細めた。
「これは、不思議の国のアリスの扮装か?」
「うん、よくわかったわね。アリスなんて知ってるんだ」
アルフィンは目を丸くした。
「昔、小学校で劇をやってたのを見た記憶がある。トランプの兵隊とか追いかけてくるやつだろう?」
朧げな記憶を辿り、ジョウが言う。そして、画面を見ながら
「可愛いな、小さい頃も」
とデレる。
アルフィンは赤くなった。
「ーーそういうのはさ、パソコン画面じゃなく本人を見て言ってよ」
「え」
「ねえねえ、飾り付けだけじゃなく、今年はコスプレしようよ。うちでも」
リッキーが割って入る。どんぐり眼をくりくりと見開いて、
「アルフィンがアリスでさ、俺らがその、トランプの兵隊をやってさ、タロスはーーんん?なんか、悪役っぽいのか変な役柄、いないの?」
「ハンプティ・ダンプティ?」
「帽子屋かな?」
アルフィンとジョウが顔を見合わせる。
「なんかよくわかんないけど、それとか演ってさ、盛り上がるんじゃないかな」
「あら、じゃジョウはなんの役を演ればいいの?」
俺もコスプレする前提か、と思いつつジョウは首を捻る。
アルフィンの目がそこでキランと光った。
「これは、思い切って女王ーーヴィランとかやるしかないんじゃないかしら。リーダーだもの」
はい!決まりと手を打ち鳴らす。
色をなしたのはジョウだった。
「ちょっと待てよ、ヴィランて、女装なんじゃないのか。勘弁だぜ、俺はやらない」
「何ノリの悪いこと言ってるの!こんなにチームのメンバーがやる気になってるのよ。士気を高めるためにも、ひと肌脱がなきゃ、ジョウ!」
「そーだよ兄貴、イベントって大事!特に宇宙船みたいに閉鎖空間で生活してる俺らたちにはさ、外の風景の移り変わりとか感じづらいじゃん。季節の変化とかもさー。ハロウィンとかは遊び心交えつつメンバーの気晴らしにもいいと思うんだよね。ねえ、やろうぜ兄貴、たまには馬鹿になって」
リッキーも加勢してくる。
2対1では、不利だった。
ここにタロスがいてくれればと、今ほど思ったことはない。結局、ジョウは押し切られ、生まれて初めて女装する羽目になった。
ーーでもそれは、またの機会に。
つづく?
アリスの思い出は若かりし頃会社帰りに同僚達と当時のアフター6パスポートで行ったディズニーランドです。大人数で入れる所がその日は女王のバンケットルームしかなくてデザートにアンバースデーケーキを食べましたっけ。ずっと行ってませんがチケット値上がりでまさに夢の国になってしまったかも。
J君、労使交渉がハロウィンコスプレなんてホワイト企業じゃないですか。リーダー、頑張れ!
ヴィランというのは、悪役の総称でして、今よく調べたら、主に男性のヒールに使うそうです。間違えた汗
けどヴィラネスだとあまり据わりがよろしくない… ので、このまま使わせてください。今の今までジョウの女装とか書いてこなかったので、どーなることやら……
続きがあれば、よろしくお願いします🙇