背中合わせの二人

有川浩氏作【図書館戦争】手塚×柴崎メインの二次創作ブログ 最近はCJの二次がメイン

雨の七夕

2011年07月09日 04時49分37秒 | 【図書館革命】以降
「七夕の日ってさあ、いつも晴れないわよね」
寮の共有スペース。ソファに座って窓の外を見上げながら柴崎がつぶやく。
風呂も終えて、就寝時間までまだ間がある。
みな思い思いにくつろいだ様子を見せる時刻。
「梅雨の時期だから、いつも雨。なんだかカワイソ」
自分に話しかけられていることに、向かいに座った手塚が時差をもって気がつく。
「あ、うん」
そうだな、と開いていた夕刊をたたんだ。今夜は雨で星空は拝めない。
柴崎は風呂上りの一杯とばかりビールをちびちび飲んでいる。
本来ならここでアルコールはご法度なのだが、夏場はどうしても規律が緩む。
自販機で買って、すぐに呑りたい季節がらだ。その辺は寮監たちも上手く目こぼし。
「年に一回、会えるか会えないかだなんて、どうなんだろ。それでも好きでいられるもんなのかしら」
柴崎は、背もたれにかけた肘にあごを乗っけた。組んだ脚を行儀悪くぷらぷらさせる。
変わらず視線は夜空に向けられたまま。
今夜はいやにセンチだな。星の中の伝説の住人にこんなに思いを馳せるなんて。そう思い、手塚は笑みを目許に刻んだ。
「いられるんじゃないか。本当に好きなら。会う回数も大事だけど、もっと大事なもんもあるだろ」
そこで柴崎は手塚に目をやる。首を巡らして彼に身体を向けた。
まじまじと見つめる。
「な、なんだよ」
大きな黒い瞳でじっと見つめられ、手塚は戸惑う。
柴崎は瞬きもせず、
「……あんたってさあ」
と声を漏らした。
口紅も剥がしたのに、うっすらと紅を挿したように赤い唇から。
その後が続かない。手塚は、
「? 何だ」
「……なんでもなーい」
もう寝るわ。すっと立ち上がる。
宙ぶらりんで取り残されるようで手塚は「おい、言いかけて途中で行くなよ」と声を掛ける。
柴崎は横目で手塚を掬って、呆れ気味に肩を竦めた。
「無自覚ねえ」
「だから、何が」
行きかけた柴崎は、思い直した様子で手塚のもとに戻り、手にしていた缶ビールをテーブルの上に置いた。そして、
「これあげる」
コトリと音がしたのは、テーブルかそれとも自分の心臓か。
手塚は硬直する。
「これって、……呑みさしじゃないか」
「あたしには全部は多いわ。あげる」
いらないんなら処分して。そう言って、おやすみと行ってしまう。
いらないわけないだろ。その台詞を聞くこともなく。
手塚は残された缶を手に取った。ひんやりと冷たい。

……封を切る前のやつを渡されるより、嬉しいってこと、
あいつはきっと分かっててやってるんだろうな。

そう思うと少し悔しい気もしたが、手塚は缶の飲み口にそっと唇をつけた。
柴崎がさっきまで口をつけていた場所に。
「……美味いよ」
ありがとな。今はもういない細い背中につぶやく。
窓の外に目をやる。雨脚が強くなる。
星影一つ見えない漆黒の空が広がっている。
けれど手塚は、雨の七夕も悪くないなと一人ごちた。




二日遅れだけど、七夕ものをUPします。当地では日中快晴でしたのに、夜は濃霧。。。七日の夜ってほんと晴れ間を見ません(><)
でも「柴崎といれば、手塚の心は星空」って感じの話になりました。
この頃の距離感の二人が大好きですv


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