ジョウの腕に手を掛けたとき、アルフィンが少し驚いたような顔をした。
それに彼が気づく。
「どうした?」
そっとかがんで顔を覗き込む。白いレースのヴェールに隠れて、目のあたりが見えない。
アルフィンはううん、何でもとかぶりを振った。そして、
「ちょっと、びっくりしただけ……。スーツの上からでも、すごい筋肉だと思って。硬いわ」
ジョウは今日はダークブルーのスーツを身に付けている。肩から上腕のあたりが、鍛え上げているせいで生地がはちきれそうにぱんぱんだった。
これでもオーダーメイドなんだがな、とジョウはかすかに笑って、
「スーツ、似合わない体格なんだ。ごめん」
と謝った。
アルフィンはまた首を横に振る。
「そんなことない、とても似合ってる。素敵よ。あなたは青がとてもよく似合うわ」
「それは、どうも」
「男の人なんだなあって思っただけ。改めてだけど」
そう言って、再び彼の腕に手を回した。
ジョウがエスコートする形だ。
「緊張してるのか、もしかして」
人前に立つのは慣れていて場数を踏んでいるので、しないのかと思っていた。
でも、今日はやっぱり「特別」なのだろうか。一生に一度の晴れ舞台。全世界が注目する、その瞬間の主人公なのだから。
アルフィンはううん、と言おうとして、言葉を飲み込んだ。ここで虚勢を張ってもジョウには見抜かれてしまう。それがわかっていたから、
「少し、してるかも……」
消え入るような声で囁く。
やっぱり表情が硬い。ジョウは言った。
「来賓や客なんてみんなかぼちゃかジャガイモだと思えばいい。君を目の当たりにしたら、息を吞んで言葉を失うよ。――あんまり、きれいすぎて」
それを聞いたアルフィンは目を見開いた。
それから、こらえかねたようにふふ、と笑みを漏らした。
「案外ひどいこと言うのね、あなた」
あたしたちのために集まってくださったお客様なのに。
「本当のことを言ったまでだ」
「あたしがきれいすぎるってことも、本当?」
「もちろん」
「嬉しい。――ジョウにそう言ってもらえるのが、一番嬉しいわ」
万雷の喝さいより、割れるほどの拍手より。アルフィンは花がほころぶように笑う。
実際に今日のアルフィンは、そこにいるだけで発光しているかのように美しいたたずまいだった。純白のウエディングドレスを纏った姿は、この世の人とは思えないほどの神々しさだ。
ジョウはん、とアルフィンにキスをしてから、「さあ参りましょうか、姫」と片目をつぶってみせた。
アルフィンも「参りましょうか。だんな様」と微笑む。
先導役の男性が「ドアを開けます」と合図をくれる。
ジョウはうなずいた。それと同時に、両扉が左右に開かれて、教会の祭壇が視界に映し出される。
美しいステンドグラスと正装した神父の姿がある。ハルマン三世とエリアナ王妃が並んでこちらを見守っている。自分の親もーークラッシャーダンの姿も見える。家族もーータロスとリッキーもいる。見える。
ジョウはひとつ、ふうっと息をついた。
俺も案外、緊張してるのかもしれないな。
そこで、パイプオルガンが荘厳な響きを奏でた。天上の音楽。
それに打たれながら、アルフィンをエスコートしつつ、ジョウは一歩、足を踏み出す。
深紅の絨毯が敷かれたヴァージンロードに。
END
ホワイトデーを前に。たぶんこれは、ピザンでの挙式の様子です。
ジョウはアラミスでは式は挙げない。きっと披露宴も。
それに彼が気づく。
「どうした?」
そっとかがんで顔を覗き込む。白いレースのヴェールに隠れて、目のあたりが見えない。
アルフィンはううん、何でもとかぶりを振った。そして、
「ちょっと、びっくりしただけ……。スーツの上からでも、すごい筋肉だと思って。硬いわ」
ジョウは今日はダークブルーのスーツを身に付けている。肩から上腕のあたりが、鍛え上げているせいで生地がはちきれそうにぱんぱんだった。
これでもオーダーメイドなんだがな、とジョウはかすかに笑って、
「スーツ、似合わない体格なんだ。ごめん」
と謝った。
アルフィンはまた首を横に振る。
「そんなことない、とても似合ってる。素敵よ。あなたは青がとてもよく似合うわ」
「それは、どうも」
「男の人なんだなあって思っただけ。改めてだけど」
そう言って、再び彼の腕に手を回した。
ジョウがエスコートする形だ。
「緊張してるのか、もしかして」
人前に立つのは慣れていて場数を踏んでいるので、しないのかと思っていた。
でも、今日はやっぱり「特別」なのだろうか。一生に一度の晴れ舞台。全世界が注目する、その瞬間の主人公なのだから。
アルフィンはううん、と言おうとして、言葉を飲み込んだ。ここで虚勢を張ってもジョウには見抜かれてしまう。それがわかっていたから、
「少し、してるかも……」
消え入るような声で囁く。
やっぱり表情が硬い。ジョウは言った。
「来賓や客なんてみんなかぼちゃかジャガイモだと思えばいい。君を目の当たりにしたら、息を吞んで言葉を失うよ。――あんまり、きれいすぎて」
それを聞いたアルフィンは目を見開いた。
それから、こらえかねたようにふふ、と笑みを漏らした。
「案外ひどいこと言うのね、あなた」
あたしたちのために集まってくださったお客様なのに。
「本当のことを言ったまでだ」
「あたしがきれいすぎるってことも、本当?」
「もちろん」
「嬉しい。――ジョウにそう言ってもらえるのが、一番嬉しいわ」
万雷の喝さいより、割れるほどの拍手より。アルフィンは花がほころぶように笑う。
実際に今日のアルフィンは、そこにいるだけで発光しているかのように美しいたたずまいだった。純白のウエディングドレスを纏った姿は、この世の人とは思えないほどの神々しさだ。
ジョウはん、とアルフィンにキスをしてから、「さあ参りましょうか、姫」と片目をつぶってみせた。
アルフィンも「参りましょうか。だんな様」と微笑む。
先導役の男性が「ドアを開けます」と合図をくれる。
ジョウはうなずいた。それと同時に、両扉が左右に開かれて、教会の祭壇が視界に映し出される。
美しいステンドグラスと正装した神父の姿がある。ハルマン三世とエリアナ王妃が並んでこちらを見守っている。自分の親もーークラッシャーダンの姿も見える。家族もーータロスとリッキーもいる。見える。
ジョウはひとつ、ふうっと息をついた。
俺も案外、緊張してるのかもしれないな。
そこで、パイプオルガンが荘厳な響きを奏でた。天上の音楽。
それに打たれながら、アルフィンをエスコートしつつ、ジョウは一歩、足を踏み出す。
深紅の絨毯が敷かれたヴァージンロードに。
END
ホワイトデーを前に。たぶんこれは、ピザンでの挙式の様子です。
ジョウはアラミスでは式は挙げない。きっと披露宴も。
T先生は、どっち派でしょうね。何も考えていなかったりして(笑)
アルフィンは、「ジョウの母・ユリアの眠る教会で挙げましょうよ。」と言いそう。
でも、アラミスだと、色々大変。国王夫妻を迎えるなんて、初めてだろうし、招待客だってね。呼ばれなくても、二次会とか(笑)
ジョウの上半身は、大谷翔平張りかも。
やっぱり原作で読みたいな。