背中合わせの二人

有川浩氏作【図書館戦争】手塚×柴崎メインの二次創作ブログ 最近はCJの二次がメイン

独り占め

2009年10月18日 08時38分17秒 | WEB拍手お礼SS収納庫



今日は、電車に乗って少しだけ遠出のデート。
あいにく混んでいて座れそうにない。手塚と柴崎は座席の前に立って空きを待つことに。
だが電車が走り出してすぐ、手塚が渋い顔で柴崎に耳を寄せた。
「……おい」
「なあに?」
「お前、そこにつかまるの、よせ」
手塚が目顔で促すのは、吊り輪。
怪訝そうに眉を寄せる柴崎。
「なんで?」
「なんで、って。その、……見えちまうだろ」
手塚は直視できない。視線が泳ぐ。
腋が。
夏仕様の柴崎のトップスはノースリーブで、普段陽に当たらない部分がさらけ出されている。
無防備なほど、腕の付け根は白く。……嫌でも目が吸い寄せられる。
ああ、と柴崎はなんでもないことのように頷く。
「平気よ。あたしは」
きちんと処理してあるからね、などと色気のないことは言う必要はない。
手塚は眉間に皺をよせた。むうっとあからさまに。
「俺が嫌なんだよ。他のやつに覗かれるのが。離せ」
命令口調で言って、割と強引に手塚は吊り輪を手からもぎとった。
確かに柴崎の前の座席には、好色そうなオヤジが座っている。
ちらちらとこちらを窺う目線が変に粘っこいのには気づいていた。
手塚の気持ちも分からなくはない。が、この手合いは無視するに限る。
そんなのいちいち気にしてたら、キリがないじゃないの……。
柴崎は半ば呆れ顔で、
「じゃああたしはどこにつかまればいいのよ?」
と振動でぐらつく足場を気にしながら言う。
すると手塚は、
「ここ」
と自分の腰に柴崎の腕を引っ掛けさせた。即答だった。
柴崎は手塚のシャツの裾をきゅっと握りながら、
「……独り占め?」
と囁くように訊く。
手塚は顔色も変えず、
「悪いか」
と返した。
「ぜんぜん」

ここが電車でなかったら、いまキスしてる。
そう思いながら柴崎は、今日はこのまま座れなくてもいいかな、と手塚の身体にそっと寄り添った。


(2009・7・8)

※柴崎のノースリーブ姿は、手塚でなくとも独り占めしたくなりますよね。


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