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ブログには気づきがある。
私という世界でたった一つの物語

二匹のかえる

2011-07-27 | 写・画・絵・詩・物語


日本の名作
365のみじかいお話


「二匹のかえる」

緑のかえると、黄色のかえるが、畑のまん中で、ばったりいきあいました。

「やあ、きみは、黄色だね。汚い色だ」

と緑のかえるがいいました。

「きみは緑だね。きみは自分を美しいと思っているのかね」

と、黄色のかえるがいいました。

こんなふうに話し合っていると、よいことはおこりません。二匹のかえるは、とうとう、けんかをはじめました。

緑のかえるは、黄色のかえるの上に、とびかかっていきました。このかえるは、とびかかるのが、得意でありました。

黄色のかえるは、あとあしで砂をけとばしましたので、相手はたびたび、目玉から砂を、はらわねばなりませんでした。

するとその時、寒い風が、ふいてきました。二匹のかえるは、もうすぐ、冬のやってくることを、思い出しました。かえるたちは、土の中にもぐって、寒い冬をこさねばならないのです。

「春になったら、このけんかの、勝負をつけるよ」

といって、緑のかえるは、土にもぐりました。

「今いったことを、忘れるな」

といって、黄色のかえるも、もぐりこみました。
寒い冬が、やってきました。かえるたちのもぐっている土の上に、びゅうびゅうと北風がふいたり、しも柱がたったりしました。そして、それから春が、めぐってきました。土の中に、ねむっていたかえるたちは、背中の上の土が、あたたかくなってきたので、わかりました。

はじめに、緑のかえるが、目をさましました。土の上に、出てみました。まだ、他のかえるは、出ていません。

「やいやい。おきたまえ。もう、春だぞ」

と、土の中に向かって、呼びました。すると、黄色のかえるが、

「やれやれ、春になったか」

といって、土から出てきました。

「去年のけんかを、忘れたか」

と、緑のかえるがいいました。

「待て待て。体の土を洗いおとしてからにしようぜ」

と、黄色のかえるがいいました。

二匹のかえるは、体の泥土をおとすために、池の方にいきました。池には、新しくわきでて、ラムネのようにすがすがしい水が、いっぱいにたたえられてありました。

その中へかえるたちは、ドブンドブンと、とびこみました。体を洗ってから、緑のかえるが、目をぱちくりさせて、

「やあ、きみの黄色は美しい」

といいました。

「そういえば、きみの緑だって、すばらしい」

と、黄色のかえるがいいました。

「もうけんかはよそう」

といいあいました。
よくねむったあとでは、人間でも、かえるでも、機嫌がよくなるものでありますね。


新美南吉作






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