みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0058「新生日本誕生」

2017-08-04 19:36:38 | ブログ短編

 涼子(りょうこ)は若(わか)くして新人賞(しんじんしょう)を受賞(じゅしょう)した女流作家(じょりゅうさっか)――。ここ一ヵ月間、部屋にこもって仕事(しごと)をしていた。何とかきつい締切(しめきり)をこなした彼女は、気分転換(きぶんてんかん)もかねて買い物に出かけた。
 近くのコンビニに入った涼子は、違和感(いわかん)を感じた。店員(てんいん)や客の話している言葉(ことば)が理解(りかい)できないのだ。まるで、外国(がいこく)に突然(とつぜん)迷(まよ)い込んでしまったような…。涼子はパンやスナックなどをカゴに入れレジまで持って行った。レジに表示(ひょうじ)された金額を見て、涼子はお金を店員に差し出した。すると店員は大声をあげて、非常(ひじょう)ベルを鳴(な)らした。突然のことに驚(おどろ)いた涼子はおろおろするばかり。すぐに警官(けいかん)がやって来て、涼子は警察署(けいさつしょ)に連行(れんこう)された。
 ――取調室(とりしらべしつ)で刑事(けいじ)の訊問(じんもん)が始まった。「この金はどうした!」
 刑事は涼子の財布(さいふ)らかお金を出して、「円(えん)を使ったら罪(つみ)になることぐらい知ってるだろ。円をどこで手に入れたんだ!」
 涼子には、刑事がしゃべっている言葉が理解(りかい)できなかった。
「私が、何をしたっていうの? 私は、お金を払おうと…」
 刑事たちは涼子の言葉を聞き顔(かお)を見合わせた。そして、何かひそひそと相談(そうだん)を始めた。
「あんた」年長(ねんちょう)の刑事が日本語(にほんご)で話し始めた。「知らないのか? 日本が変わったのを…」
「変わったって…。どういうこと?」
「新しい政府(せいふ)が誕生(たんじょう)したんだ。それで、日本語の使用(しよう)を禁止(きんし)して、円も廃止(はいし)されたんだ」
<つぶやき>一ヵ月も閉じこもっていたので、浦島太郎(うらしまたろう)状態(じょうたい)になってしまったんですね。
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コメント
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