みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1247「消えた水曜日」

2022-05-18 17:37:29 | ブログ短編

 彼は、毎日(まいにち)を平穏(へいおん)に暮(く)らしていた。仕事(しごと)も目立(めだ)つようなポジションを避(さ)け、いつもサポートに徹(てっ)していた。彼は、控(ひか)え目な性格(せいかく)なのかもしれない。
 ある日のこと。彼が出社(しゅっしゃ)すると、いつもと違(ちが)ってみんながざわついていた。彼の顔を見てひそひそと囁(ささや)きあったり、静かに手を叩(たた)く仕種(しぐさ)をする人もいた。彼は首を傾(かし)げた。いったい、何があったのか? 彼は席(せき)につくと、隣(となり)にいる同僚(どうりょう)に訊(き)いてみた。すると、部下(ぶか)たちに無理難題(むりなんだい)を押(お)しつけていた課長(かちょう)に、異動(いどう)の辞令(じれい)が出たと聞かされた。同僚は言った。
「君(きみ)が人事部(じんじぶ)に訴(うった)えるとは思わなかったよ。やるときはやるんだなぁ」
 彼には何のことか分からない。そこへ女子社員(しゃいん)がやって来た。彼女は確(たし)か、今日の社内(しゃない)プレゼンの責任者(せきにんしゃ)だったはず。彼女は深々(ふかぶか)と頭を下げて、
「ありがとうございました。もし、先輩(せんぱい)がいなかったら、あたし……」
 涙(なみだ)ぐんでいる彼女を見て、彼はますます分からなくなった。彼は、
「あの…。今日、プレゼンの日だよね。頑張(がんば)ってください」
 彼女は、彼を見つめた。同僚が口を挟(はさ)んだ。「なに言ってんだ。プレゼンは昨日(きのう)だろ」
「昨日…? いや、そんなはずは…。だって、今日は水曜日(すいようび)で、プレゼンの…」
「今日は、木曜日(もくようび)だ。おい、大丈夫(だいじょうぶ)か? プレゼンで課長を怒鳴(どな)りつけたの忘(わす)れたのか?」
「怒鳴りつけた…? この、僕(ぼく)が…? ちょっと、待ってくれ。そんなはずは…。だって、昨日は火曜日(かようび)だったはずだ。それが、何で、今日、木曜日になるんだよ」
<つぶやき>空白(くうはく)の水曜日に何が起きたのか? 確かめておいた方がいいかもしれません。
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