ポーランドは北緯52度の位置にある。日本でいえば北海道のさらに北だ。ちょうど樺太(サハリン)あたりになる。だから、寒さはもちろんのこと、雪もかなり積もっているものと思っていた。
ところがついてみるとびっくり、ワルシャワはもちろんのこと、トランジットで立ち寄ったヘルシンキ(北緯60度)にさえ雪はひとかけらもなかった。
(写真はヘルシンキ空港)
イギリスやフランスが「西岸海洋性気候(Cfb)」だということは教科書で知っていた。つまり、メキシコ湾あたりで暖められた海水が、ヨーロッパの西岸まで流れていって北大西洋海流(暖流)となり、その上にある空気が暖められ、偏西風に乗って陸に流れ込むため緯度の割に暖かい。しかし、大陸のどのあたりまでを「西岸」と呼ぶのかということまでは知らなかった。
実は、西岸海洋性気候の一番東側の端っこに位置するのがポーランド(東経20度)なのだ。モスクワまで行くともはや亜寒帯湿潤気候(Dfc)になる。
一方、ポーランドを周遊している3月の1周間、結局雪は全く見ることができなかった。なぜ、ポーランドでは雪が少ないのか。一般に雪が降る条件は
①寒気が流れ込みやすいこと,
②寒気が水蒸気を補給されること,
③湿った気流が地形効果によって上昇しやすいこと
の三条件が揃っていることである。これらの条件がひとつでも満たされていない地域では豪雪が降らない。
日本の場合、西高東低になると大陸からの冷たくて乾燥した空気が日本に向かって吹きこみ、日本海を渡るとき海から熱や水蒸気の補給を受け、それが本州などの山脈にぶつかって日本海側を中心に雪を降らせる。つまり、大陸からの冷たい空気が、対馬暖流という温泉から湧きあがる湯気を十分に吸い込んで、それが山にぶつかって雪をふらせているのだ。ユーラシア大陸の東方海上に浮かぶ島国であることが雪国の基本的環境を作っているといえる。
ところが、ユーラシア大陸では,西側に海洋(大西洋)が横たわっているため,寒気の吹き出しはない。また、山岳地形も少ないため、気温はものすごく寒くても積雪は少ない。寒さと積雪は関係ないのである。
学問は体験して初めて身につくものであることを改めて知った旅だった。