ダイハツとトヨタから、昨年10月に発売された「コペン GR SPORT」に試乗しました。
もとになったコペンはダイハツが設計・製造している軽自動車で、2002年に初代がデビュー。その後、2014年に2代目となる現行型が登場して今に至っています。
コペンGR SPORTは、トヨタのGAZOO Racingが手を加えたという触れ込みのスポーツモデル。製造は普通のコペンと同じくダイハツが担当しますが、販売は両社のネットワークで行われます。
トヨタ版もダイハツ版も、メーカー名を示すエンブレムはありません。GRはトヨタの商標ですが、ダイハツで売られている車にもGRのエンブレムがつくので、外観に差はありません。
私が訪れたのは、東京都内のGRガレージ。GRガレージは、スープラを始めとして、「GR」の名前がついた車のPR拠点として展開されている店舗。既存の「エリア86」を代替する役割も担っているようです。
このGRガレージでは、販売そのものは担当しておらず、商談は併設されている「普通」のトヨタ販売店で行います。商売っ気を極力排除して、純粋に車を楽しめる場を作ろうという意図からでしょうか。
試乗車はCVT仕様。車両本体価格は税込238万円で、これに、特別塗装色のリキッドシルバーメタリック代(+3.3万円)が加わります。さらに、ナビなどを装着するとコミコミで300万円くらいになります。
GR SPORTは他に5MT仕様があり、こちらはちょっと高い243.5万円。ATよりもMTの方が高い時代になりました。
さて、コペンは2人乗りのオープンカー。ルーフは電動格納。GR SPORTも基本的な構造は不変。
全高は1280mmと低いです。ルーフの両サイドは厚みがあるため、乗り降りには注意が必要。一度乗り込んでしまえば、身長173cmの私は窮屈さを感じない程度の頭上空間がありますが、180cmを超える方だとちょっと厳しいかもしれません。
レカロのシートが標準装備。調整は前後とリクライニングだけで、上下調整などはできません。
シート後ろにネットはありますが、荷物を載せるのは無理だと思った方がよいです。
ルーフはこのように折りたたまれてトランクに格納されます。
したがって、トランクスペースもミニマム。ルーフを開けなければゴルフバック1個や旅行カバンが入る容量がありますが、オープンにすると大きめのハンドバックくらいしか入りません。
誤解のないように付け加えておきますが、軽自動車の枠でオープンを実現したことが売りの車なので、スペースが不足していることはある意味で当然。それで困る人は別の車を買えばよいだけです。
タイヤサイズは前後とも165/50R16で、銘柄はブリジストンのポテンザRE050Aが標準指定。ホイールは写真のBBS製が標準。特別仕様のダンパーと、赤く塗られたスプリングも標準装備。
では、試乗に出かけます。屋根を開けていれば乗り降りは比較的楽です。
最初は屋根を閉めて走り出しました。CVTにしてはかなりタイトな印象で、空走感はあまりありません。
軽自動車なので、パワーは自主規制値一杯の64PS/6400rpmで、トルクは92Nm/3200rpm。車重は870kg。必要にして十分という感じ。
足は堅めで、路面の凹凸からの突き上げも相応に入ります。こういう「スポーティ」な車に慣れておられる方であればあまり問題ないかもしれませんが、ミライのような車に乗っていると乗り心地は少々キツイです。
ただ、ボディはかなり強化されているようで、走行中にミシリともガタリともいわないのは感心しました。
乗り心地とのトレードオフで、ハンドリングは非常に正確。交差点に入って、ハンドルを切って曲がって、戻しながら再び加速、というシークエンスを滑らかにこなせます。スピード上げなくても楽しめそうな走り。
途中で車を駐めて、屋根を開けてみました。
屋根を開けた状態では、やはり剛性感は落ちます。路面の凹凸でボディがねじられて、そのうねりが運転している自分に伝わってくるような感じ。
屋根の有無でオープンカーの走りはガラッとかわりますが、このコペンも例外ではありません。足が固めてある分、屋根をあけた時の揺さぶられ感は、屋根があるときよりも大きいように思いました。
コペン、色々と気になるところはありますが、魅力的な車です。良いところと悪いところがハッキリしているので、自分の目的が明確であれば、合うか合わないかも容易に判断できると思います。コミコミ300万円というのも、内容に比べて高い感じはしません。
自分が買うなら5MT一択。比較的タイトに仕上げてあるとはいえ、CVTの空走感は少々気になりますので。少しお高くなるのは、まあ、仕方ないところですね。