夕霧が見たもの
庇の間から見たのは 春のあけぼのにかすむ樺桜の咲き乱れたるを見る心ち 昼間見た紫の上が忘れられずあってはならない気持ちが沸き起こってきて怖くなったそうだ 父が紫の上に近づけさせないわけがわかった気がした 同じ過ちをさせない親心か嫉妬か 後に柏木にしたことを思うと嫉妬心もあるのかなと思う
建物の隅から簾をあげて見たものは 八重山吹の咲き乱れたる盛りに露のかかる春の夕映えのような美しさ 玉鬘は引き寄せられると体を預けて、睦あっている父の姿は見苦しい 父からは姉弟と聞かされていたが こんな形で顔を見るとは思ってもいなかったろう 光源氏の輝くばかりの美しさは老いを重ねるごとに光を失い老人の醜さがにじみ出てき始めたのだろうか、紫式部の意図は何だろうか源氏をじらしているのかな
紫の上の部屋から帰って来た明石の姫君は格段に成長して美しくなった
これは藤の花とや言ふべからむ
年頃になればどれほどになろう
美人のたとえは芍薬、牡丹、百合だが樺桜、八重山吹、藤というのもいいかもしれない 漢方薬と何か関係のありそうな薬臭い芍薬、牡丹、百合よりは樺桜、八重山吹、藤に変えたらどうか 元号が万葉集なら美人のたとえを源氏物語から取って
たてば樺桜ふせれば山吹あるくすがたは藤の花 なんてね
夕霧の評では紫の上に玉鬘は一歩及ばないようだが雲井の雁を忘れさすほど悩ましい気持ちになっている
若いときはきれいなお姉さんがいいんだよね
明石の姫君はまだ子供だから対面してるが他の二人についていづれも透き見したことがバレたらと思うと落ち着かなかったろう
こんなことを思いながら床に就くとすっと眠ることができる