ワークライフバランス? ライフワークバランス?とつぶやきながらライスカレーを作りつつ、いやカレーライスだったかな、お玉片手に鍋かきまぜながら、一気に読み上げた本です。
『ビッグツリー』
著者の佐々木常夫さんは最近『そうか、君は課長になったのか』というビジネス本を昨日書店で見かけました。5万部達成の帯が7万部にかけかえられていました。また社会人としても大変に成功している方らしいです。
『ビッグツリー』は家族の歴史がテーマともいえるし、佐々木さん自身の人生の遍歴がテーマともいえるし、仕事と家庭のワークライフバランスの本ともいえるし、奥さんから見たら、仕事人間の夫がいかに自分と関わってきたか、夫と妻の関係を描いた夫婦の歴史ともいえるし、またA型人間とB型人間の違いを描いた血液型分析の書とも読めるし、男と女の考え方の違いを描いたジェンダー論とも読めるし、日本型父性愛とは何かという話にも読める。つまりは、いろいろなことを考えられる本でした。おトクです。
本の最後に、「ビッグツリー」という言葉の解説があって、次のように書かれていました。
「ビッグツリーとは 家族と共に生きる長い人生では、病気、事故、仕事問題、人間関係などいつ何が起こるかわかりません。もし、そんな不測な事態が起きても、「これも人生の一部」と、すべてを受け入れ、強さと優しさ、希望を胸に明るく生きて生きたい。外から見えない根っこには自分自身の不動の信念を秘めながら、家族愛、仕事への情熱、社会・人々との深い関わりを幹・枝葉とし、風雪に耐え凛と立つ大きな「父の樹」、それがビッグツリーです。」
私がウーンとうなったのは、著者の現実対応能力の凄さです。現実にとても強い人だと思いました。私にも半分分けてほしいなあ、その資質。
自分が何か辛い現実に向き合った時の方法を考えると、1.そのまま見つめて、こりゃ大変と大慌てで逃げる 2.なるべく見ないようにする 3.しぶしぶ見るが、グチグチ文句を言いながら、対処する 4、そのまま受け入れて、出来る限りの対処をする、と大まかにわけられます。この1から4までのパターンを、その場その場で適当につかって凌いできた感じ。まあ3が多いかな。
著者は大体4のパターンで、家庭内の出来事をこなしていきます。しかしそんな有能な著者でも奥さんが自身の肝臓病と高次機能障害の息子さんの子育ての苦労から鬱に陥り、何回目かの自殺を図ったときには、かなりまいったことが書かれています。
その後、奥さんが命を取りとめた後で、「ごめんな、お父さん、迷惑ばかりかけて」と心底情けなさそうに言うのを聞いて、著者も落ち着きをとりもどし、「一番苦しんでいたのは妻だろう、私ではない。それに彼女が悪いわけではない。病気が少し悪いほうに傾いたのだ」と思い、「何のために結婚したのか」「何のためにこんな苦労をしているのか」といった「何のため」という問題から解放されて、「要は、自分が出会った人生であり、自分が選んだ人生なのだ、それなのにこんなに惨めになるなんて、それは私の生きかたでばない。私はいつも「必ず良い日が来る」という前向きな姿勢をもっていたはずだ。いや、絶対良い日は、笑い会える日は必ず来る、心細い心境になりながら私はそう信じていたかった」と締めくくられています。
「いったい何のためにこんなことをしているのか」と自暴自棄的に思うときは、何か理想の型を描いていることが多い。だから若者にやみくもに「理想をもて」というのは、正しいことかどうかよくわからない。絶対最後は上手くいく、という楽観的観測をもちながら、目の前に次々と起こる非理想的現実に、現実的に対処していけるようになりたいです。それには、あんまり理想を描かないほうがいいかな、と子どもの頃から薄々感じていましたが・・・と思いながらこんな旦那さんが家にひとりいたら楽だろうな・・・と思ってしまいました。ここのお宅の奥様は、とても真面目で、料理上手、そして気立ても優しい方だそうで、「妻としてこうありたい、母だったら子供たちにこうしてあげたい」という思いが強く、それ自体は善きことですが、反面、自身の体は病弱だった場合、本当に辛いだろうなあ。だったら、まあそれは諦めて適当に体と心のバランスをとって、ご主人に頼って楽しく生きていくしかないなあ、これも現実に対処することと言えるでしょう、ネ!でも出来ない場合もあるんですね。女の意地ってヤツです。
この本は、ワークライフバランスの本として読まれるのが一般的だと思いますが、猫的私としては「ビッグツリー
~ 寄らば大樹の陰
」と副題をつけても読めます。でもあんまり夫が大樹過ぎて、家庭内の妻の居場所がなくなると、妻が傷つくのも頷ける事です。その辺りのことも、妻からの手紙が原文そのままでのっています。
「私が体が動かなくて、病院で寝ているしかない日々、子供も小さく、夫も仕事が忙しい。自分は主婦の役目もまっとうできず、ただ寝ていた。それなのに、貴方は時に喜々として仕事のみならず、家事までこなし、私の世話もしてくれました。それは何も出来ない私にとってどんなにつらいことであったのか、貴方は理解できるでしょうか」
こういう奥様の正直な気持ちをそのまま載せてあるところが、この本は素晴らしいと思います。ここも著者の現実に強い一面がうかがわれるところです。そう、この本は隠し立てなくいろいろな人のいろいろな思いが書いてあるので面白いです。
いろいろあった奥様も、いまは「長い夢」から覚めたよう、と生きていてよかったと思っていらっしゃるそうです。現実の反対にあるものが「夢」なんですね。
ひょっとしたらこれは家庭内のジェンダーワークバランスの本かも!と思えてきました。我が家では、強い人は弱そうに、弱い人は強そうにふるまうのが家庭の不文律となっております。そしてその役割が定着しないように、今週強かった人は来週は弱い人の席へと、とグルグル席換えをして、お互い退屈しないように心がけたいと思います。
『ビッグツリー』
著者の佐々木常夫さんは最近『そうか、君は課長になったのか』というビジネス本を昨日書店で見かけました。5万部達成の帯が7万部にかけかえられていました。また社会人としても大変に成功している方らしいです。
『ビッグツリー』は家族の歴史がテーマともいえるし、佐々木さん自身の人生の遍歴がテーマともいえるし、仕事と家庭のワークライフバランスの本ともいえるし、奥さんから見たら、仕事人間の夫がいかに自分と関わってきたか、夫と妻の関係を描いた夫婦の歴史ともいえるし、またA型人間とB型人間の違いを描いた血液型分析の書とも読めるし、男と女の考え方の違いを描いたジェンダー論とも読めるし、日本型父性愛とは何かという話にも読める。つまりは、いろいろなことを考えられる本でした。おトクです。
本の最後に、「ビッグツリー」という言葉の解説があって、次のように書かれていました。
「ビッグツリーとは 家族と共に生きる長い人生では、病気、事故、仕事問題、人間関係などいつ何が起こるかわかりません。もし、そんな不測な事態が起きても、「これも人生の一部」と、すべてを受け入れ、強さと優しさ、希望を胸に明るく生きて生きたい。外から見えない根っこには自分自身の不動の信念を秘めながら、家族愛、仕事への情熱、社会・人々との深い関わりを幹・枝葉とし、風雪に耐え凛と立つ大きな「父の樹」、それがビッグツリーです。」

自分が何か辛い現実に向き合った時の方法を考えると、1.そのまま見つめて、こりゃ大変と大慌てで逃げる 2.なるべく見ないようにする 3.しぶしぶ見るが、グチグチ文句を言いながら、対処する 4、そのまま受け入れて、出来る限りの対処をする、と大まかにわけられます。この1から4までのパターンを、その場その場で適当につかって凌いできた感じ。まあ3が多いかな。
著者は大体4のパターンで、家庭内の出来事をこなしていきます。しかしそんな有能な著者でも奥さんが自身の肝臓病と高次機能障害の息子さんの子育ての苦労から鬱に陥り、何回目かの自殺を図ったときには、かなりまいったことが書かれています。
その後、奥さんが命を取りとめた後で、「ごめんな、お父さん、迷惑ばかりかけて」と心底情けなさそうに言うのを聞いて、著者も落ち着きをとりもどし、「一番苦しんでいたのは妻だろう、私ではない。それに彼女が悪いわけではない。病気が少し悪いほうに傾いたのだ」と思い、「何のために結婚したのか」「何のためにこんな苦労をしているのか」といった「何のため」という問題から解放されて、「要は、自分が出会った人生であり、自分が選んだ人生なのだ、それなのにこんなに惨めになるなんて、それは私の生きかたでばない。私はいつも「必ず良い日が来る」という前向きな姿勢をもっていたはずだ。いや、絶対良い日は、笑い会える日は必ず来る、心細い心境になりながら私はそう信じていたかった」と締めくくられています。

この本は、ワークライフバランスの本として読まれるのが一般的だと思いますが、猫的私としては「ビッグツリー


「私が体が動かなくて、病院で寝ているしかない日々、子供も小さく、夫も仕事が忙しい。自分は主婦の役目もまっとうできず、ただ寝ていた。それなのに、貴方は時に喜々として仕事のみならず、家事までこなし、私の世話もしてくれました。それは何も出来ない私にとってどんなにつらいことであったのか、貴方は理解できるでしょうか」
こういう奥様の正直な気持ちをそのまま載せてあるところが、この本は素晴らしいと思います。ここも著者の現実に強い一面がうかがわれるところです。そう、この本は隠し立てなくいろいろな人のいろいろな思いが書いてあるので面白いです。
いろいろあった奥様も、いまは「長い夢」から覚めたよう、と生きていてよかったと思っていらっしゃるそうです。現実の反対にあるものが「夢」なんですね。
ひょっとしたらこれは家庭内のジェンダーワークバランスの本かも!と思えてきました。我が家では、強い人は弱そうに、弱い人は強そうにふるまうのが家庭の不文律となっております。そしてその役割が定着しないように、今週強かった人は来週は弱い人の席へと、とグルグル席換えをして、お互い退屈しないように心がけたいと思います。