ことば咀嚼日記

日々読んだ活字を自分の頭でムシャクシャ、時にはゴックン、時には、サクサク咀嚼する日記

青の炎

2013-08-02 | 日記
『青の炎』という少し前の映画を4回にわたって学生さんと少しずつ見ました。
二宮君と、今はどこに行かれたか、わかりませんがアヤヤが出ている映画です。その他、秋吉久美子とか、中村梅雀、山本カンサイ(この人、デザイナーじゃなかったっけ?でも上手に嫌な親父役を演じていました)鈴木杏など、多彩なメンバーが登場します。蜷川監督だけあって、見終わった後、シェイクスピア劇のような感動がありました。
学生に見せるので、家で早回しで、不都合なシーンがないかチェックしてから見せます。
不都合なシーンはいろいろありますが、そこを削ると本筋がまったく見えなくなるし、どうしようか迷いましたが、みな大人だし、フィクションと現実を取り違えることはないと判断し、見せることにしました。
あらすじを手っ取り早く言えば「少年が家族を守るための義父殺し」です。
義父役が山本カンサイで、これが誰が見ても嫌な親父で、暴力はふるうわ、娘を触ろうとするわ、大声をだして騒ぐわ、歯は汚いわ、ご飯だけ食べてグーグーステテコで寝るわ、ひとつも好感できるところがありません。それなのに、母親はこの元夫を追い出すことができません。母親は、この元夫が、ガンで余命数ヶ月で、最後に血をわけた娘(主人公の妹)に会いに来たことを知っています。
でも息子にとっては、今までの幸せな家族の中に突然、入り込んできた害虫としか思えなくて、殺人計画を立て実行。緻密な計画を立てて、完全犯罪にみせかけます。ところがそれに気づいた同級生の不良がいて、こんどはそいつも殺さないことには完全犯罪が成立しない、ということで二度目の殺害を計画し実行。しかし最後は、警察に見透かされて、自白するまえに、自身も大型トラックにぶつかって自殺。これも母親と妹を殺人犯の家族という汚名から守るための最後の手段でした。

学生さんには前もって「マーダー ツワィス、ベリベリーおーふる クルーぇる OK?」と確認しておきました。そして1回ずつ「トディズ マーダー  あくしょんわん!」とか、わけのわからない前置きをして、残酷さを打ち消しておきましたが、そんなことをしなくても全然大丈夫でした。
義父が死んだときは誰も泣きませんでしたが、最後にニノが自殺した後では涙を流していた人もいました。

この少年は、頭がたいそう良くて、全部自分で考えて、計画して人生を動かそうとしていたゆえの悲劇です。
もっとおバカで、なりゆきにまかせて、「そのうち、この父ちゃん、死ぬか、どっかでつかまるかするし」と鷹揚に構えていれば何とかなったのに・・・
なぜ、母親は「お前、余命数ヶ月の我慢だよ」と教えてやらなかったのか、かえすがえすも残念です。
でもこのひたむきな十代の姿がこの映画のミソだったからしかたないですね。