ことば咀嚼日記

日々読んだ活字を自分の頭でムシャクシャ、時にはゴックン、時には、サクサク咀嚼する日記

ソラニンってジャガイモの芽の毒のことだったと思い出した

2010-04-22 | 日記
たとえばゆるい幸せがだらっと続いたとする
きっと悪い種が芽を出して
もうさよならなんだ     「ソラニン」


映画『ソラニン』の中で、「ソラニンってなあに」「ジャガイモの芽の中の毒のことだよ」「ふうん」という会話があって、あ、そうだ、そういえばソラニンってそういう意味だったなあと思い出した。
昔、聞いたことがあったのに、もうすっかり忘れてしまっていた言葉があるものだ。

映画では、芽衣子がたくさんの芽のでかかったジャガイモを積み上げようとしている場面が冒頭に出てきて、やっと積み上げたと思ったら、バランスが崩れて芋が散らばってしまう。「田舎からまたジャガイモが送られてきたから、当分カレー祭りだよ」と言いながら、崩れた芋のひとつを、仕事から帰ってきてすぐ寝付く種田に軽くぶつける芽衣子。

種田。芽衣子。ジャガイモ。ソラニン。

なんか上手くできているなあ。
これはジャガイモに芽が出て、その毒の話なんだろうか・・・と思って見始めて、どんどん引き込まれていった。
 


ゆるい幸せが続くと、だらっとして悪い芽が出るなんて思うのは青春期の幻想だ。
大人になったら、そんなことは思わない。だいたいゆるい幸せがだらっと続くことなんてないこともわかってくるし、もし続いたとしても、悪い芽が出たとしても、そこだけナイフで削って食べてしまえばいいことも知っているし。ソラニンという言葉すら思い出さなくなっている。

ソラニンは、毒でもあるし、それがなければ芋が成長しない成分でもあるといわれている。
矛盾をそのまま抱えて生きることが見えかけた時期に種田は、事故で死んでしまう。
そこまでの、微妙な心の揺れや、不安が、とても丁寧に描かれている前半と、その後の話が、ちょっと続かなかった気がしたけれど、久しぶりにいい日本映画だった。

後半は、逝ってしまった人を悼む喪の作業が主なテーマで、逝ってしまった人だけでなく、その人と同時にいってしまった時を悼む気持ちが、多摩川の川面や、土手から見えるビルや、空に飛ぶ風船の中にあふれている。
音楽もよかった。