The Cleveland Orchestra
Christoph von Dohnányi
Composer Lyricist: Richard Wagner
WOTAN
(mit plötzlichem Entschluss auffahrend)
<ヴォータン>
(突然、決心して顔を上げる)
Auf, Loge, hinab mit mir!
Nach Nibelheim fahren wir nieder:
gewinnen will ich das Gold.
行くぞ!ローゲ!ともに降りていくのだ!
ニーベルング族の住み家に降りよう・・・
そこで黄金を私のものにするのだ。
LOGE
Die Rheintöchter riefen dich an:
so dürfen Erhörung sie hoffen?
WOTAN
heftig
Schweige, Schwätzer!
Freia, die Gute, Freia gilt es zu lösen!
LOGE
Wie du befiehlst
führ' ich dich gern
steil hinab
steigen wir denn durch den Rhein?
WOTAN
Nicht durch den Rhein!
LOGE
So schwingen wir uns durch die Schwefelkluft.
Dort schlüpfe mit mir hinein!
<ローゲ>
ならば、硫黄の噴き出す裂け目から降下していきましょう。
あたくしめと一緒に、そこにスルッとお飛び込みあれ!
(Er geht voran und verschwindet seitwärts in einer Kluft, aus der sogleich ein schwefliger Dampf hervorquillt.)
(ローゲは舞台前方に進み、脇に開いている裂け目の中に姿をくらますと、すかさず硫黄の蒸気がもくもくと湧き上がってくる)
WOTAN
Ihr andern harrt bis Abend hier:
verlorner Jugend erjag' ich erlösendes Gold!
<ヴォータン>
お前たちは、夕方まで待っているのだ。
失われた若さのために何とか私は救いの黄金を手に入れるぞ!
(Er steigt Loge nach in die Kluft hinab: der aus ihr dringende Schwefeldampf verbreitet sich über die ganze Bühne und erfüllt diese schnell mit dickem Gewölk. Bereits sind die Zurückbleibenden unsichtbar.)
(ヴォータンがローゲの後から裂け目に入ると、そこから吹き出てくる硫黄の蒸気が舞台じゅうに広がり、急速に厚い雲となって取り囲む。この時点でもう残された者達の姿は見えなくなっている)
DONNER
Fahre wohl, Wotan!
FROH
Glück auf! Glück auf!
FRICKA
O kehre bald zur bangenden Frau!
(Der Schwefeldampf verdüstert sich bis zu ganz schwarzem Gewölk, welches von unten nach oben steigt; dann verwandelt sich dieses in festes, finsteres Steingeklüft, das sich immer aufwärts bewegt, so dass es den Anschein hat, als sänke die Szene immer tiefer in die Erde hinab. Wachsendes Geräusch wie von Schmiedenden wird überallher vernommen.)
(硫黄の蒸気は次第に濃くなって、真っ黒な雲となって下から上に湧き上がってくる。やがて、この雲は、堅固で暗い峡谷に形を変えるが、常に上に向かって動いているので、まるで舞台が地底に向けて落ちていくように見える。鋳鉄工たちの立てる騒音が、次第に大きくなり、至る所から聞こえてくる)
〘 2022/2023シーズン
オペラ芸術監督 大野和士
… グルックのオペラ改革はよく知られています。17世紀に始まったオペラは18世紀にはバロック・オペラの興隆があり、カストラートの妙技に喝采が送られた反面、作曲家や台本作家が添え物の地位に甘んじました。そこに現れたがグルック。ドラマの必然性から生まれる音楽劇こそが創造されるべきだという考えから、オーケストラの重要性をぐっと引き上げ、歌手には音楽と言葉の結び付きによって生まれる美しさを要求しました。それは今では当たり前のことですが、それを歴史上初めて行ったグルックは、守旧派から大変な妨害を受けながらも、「ある時、誰かが規則を破り、その効果を最大限に発揮させる新しい規則を創らなければ」と信念を貫きました。その歴史的出発点となったのが『オルフェオとエウリディーチェ』。…
… さて、後世、このグルックの意思を引き継いだのは誰だったでしょうか。「グルックが生きていたら私のことを自分の息子だと思っただろう」と言って、『オルフェオとエウリディーチェ』を自ら編曲し、パリで指揮したのはベルリオーズ。その聴衆の中の一人にワーグナーがいました。この時ワーグナーは未だ亡命中の身であり、『ローエングリン』のリスト指揮による初演も聴くことができず、『タンホイザー』パリ版初演が大失敗に終わるなど、さすらいの空っ風にさらされたりもしていましたが、グルックを起源とする“詩と音楽の織りなす大音楽劇”の構想が練られたのはまさにこの苦難の時期で、演奏の機会がいつ訪れるかわからないにも関わらず、『トリスタンとイゾルデ』や『ニーベルングの指環』の前半2作も完成。ルートヴィヒⅡ世の出現を待つばかりとなったのでした。そして晴れて亡命の身から解き放たれた後に一気に書かれたのが『ニュルンベルクのマイスタージンガー』。マイスターたちが“詩と歌の粋を競う”この楽劇が、…(中略)… ハンス・ザックスの名セリフ「芸術と民は共に育ち、咲きほこらん」が満を持して響き渡ることでしょう。…
… グルックの歴史的業績に対して、それをかえって苦々しく、「彼はフランス音楽を破壊しワーグナーへの道を開いた」と非難したのはドビュッシーでした。『トリスタン』全曲を譜面なしでピアノで弾けるほど熱烈なワグネリアンだった彼ですが、そのうちドイツ的なライトモチーフによる説明的な作法や、オーケストラの大音響の世界から身を遠ざけ、フランス語の特性を最大限に生かした歌と、人間の意識下の世界をオーケストラが表現する20世紀の大傑作『ペレアスとメリザンド』が生まれました。が、しかし、グルックの改革とはまた次元の異なる感性による新しいオペラが初演されるまでには、メーテルリンクの戯曲台本を作曲者が入手してから10年に及ぶ歳月がかかり、ドビュッシーもまた、新しいものを世に問う苦しみを味わったのでした。… 〙
Richard Croft
Les Musiciens du Louvre
Marc Minkowski
Composer: Christoph Willibald Gluck
Author: Ranieri de' Calzabigi
リチャード・クロフト - Richard Croft (テノール)
ルーヴル宮音楽隊 - Musiciens du Louvre, Les
マルク・ミンコフスキ - Marc Minkowski (指揮)
L'espoir renaît dans mon âme
希望が私の魂に生まれ変わる(Google 翻訳 フランス語🇫🇷 → 日本語🇯🇵)
L'amour vient rendre à mon âme.
Sa plus ardente flamme;
L'amour accroît ma flamme;
Je vais braver le trépas.
L'enfer en vain nous sépare, etc.
愛は私の魂を回復するためにやって来ます。
彼の最も熱烈な炎。
愛は私の炎を増大させます。
私は死に勇敢に立ち向かいます。
無駄に別れてしまうなんて。
(☝️🙄 Google 翻訳 フランス語🇫🇷 → 日本語🇯🇵)
オルフェオ
わたしの心に再び希望が生まれた
情熱を捧げる人への愛の炎を
アモールは燃え上がらせた
彼女の魅力に再び出会うことができる
地獄が私たちを隔てても無駄だ
どんなに手強い怪物が現れても
わたしは恐れない!…
(👇下の記事から引用)
〘 …《ウィーン版》では、オルフェウスはレチタティーヴォで 地獄に降りていきますが、《パリ版》では、地獄に行く決意を述べるアリアが追加されています。
このアリアはコロラトゥーラを交えた英雄的な、イタリア風の曲で、グルックのオペラ改革に反するのですが、人気を博しました。
私はウィーン版しか知らなかった頃、国際線飛行機の機内イヤホンでこの曲を聴き、あのオペラにこんな曲はなかったはず、なんだこれは??と長い間謎に思っていました。
パリ版も聴けるようになって、ようやく謎が解けました。
それでは聴いてみましょう。( ⚠️ 上(のYouTube)です ☝️🙄 ややっこしくですが… )
【パリ版の追加曲】アリア『再び希望が生まれた』
マルク・ミンコフスキ指揮 レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル、リチャード・クロフト(テノール)
オルフェオ
わたしの心に再び希望が生まれた
情熱を捧げる人への愛の炎を
アモールは燃え上がらせた
彼女の魅力に再び出会うことができる
地獄が私たちを隔てても無駄だ
どんなに手強い怪物が現れても
わたしは恐れない!… 〙
🎵 ♪ 🎶 ♬ ♫ ♪ 🎶 ♬
Conductor: Diego Fasolis
Orchestra: I Barocchisti
Counter-tenor Vocals: Philippe Jaroussky
Composer: Christoph Willibald Gluck
ORFEO
Che disse! che ascoltai! Dunque Euridice
Vivrà, l'avrò presente! E dopo i tanti
Affanni miei, in quel momento, in quella
Guerra d'affetti, io non dovrò mirarla,
Non stringerla al mio sen! Sposa infelice!
Che dirà mai? che penserà? preveggo
Le smanie sue: comprendo
L'angustie mie. Nel figurarlo solo
Sento gelarmi il sangue,
Tremarmi il cor... Ma... lo potrò... lo voglio,
Ho risoluto. Il grande,
L'insoffribìl de' mali è l'esser privo
Dell'unico dell'alma amato oggetto;
Assistetemi, o Dei, la legge accetto.
〔 Addio, o miei sospiri!
Han speme i miei desiri!
Per lei soffrir vo' tutto
Ed ogni duol sfidar!
Io vo' da l'atre sponde
Varcar di Stige l'onde
E de l'orrendo Tartaro
Le Furie superar! 〕
☝️😑👂🎶 聴くかぎり、この小さいグレーの文字のところは(貼り付けたYouTubeでは)歌われていない…と思われます…間違っていたら、コメント欄で…🙇
(Si vede un lampo, si sente un tuono, e parte Orfeo)
(稲妻が見え、雷鳴が聞こえ、オルフェウスは去ります。)
(Google 翻訳 イタリア語🇮🇹 → 日本語🇯🇵)
Claudio Monteverdi
L'Orfeo
Aria: Tu se' morta (Act II)
Georg Nigl (Orfeo)
Rinaldo Alessandrini, director
Robert Wilson, stage director, lighting design
Teatro alla Scala, 2009
ORFEO
Tu se' morta, mia vita, ed io respiro?
Tu se' da me partita
Per mai più non tornare, ed io rimango?
No, che se i versi alcuna cosa ponno,
N'andrò sicuro a' più profondi abissi;
E intenerito il cor del Re dell'ombre,
Meco trarrotti a riveder le stelle,
Oh, se ciò negherammi empio destino,
Rimarrò teco in compagnia di morte.
Addio terra, addio cielo e sole, addio.
〘 … 哲学から始まった科学、そして音楽
フランスを代表するオペラ作曲家、ジャン=フィリップ・ラモー(1682-1764)ですが、最初のオペラを書いたのはなんと50歳のときでした。
それまでの作曲といえば、これまで取り上げたクラヴサン曲と、いくつかの小品だけです。
でも、それは単に本業であるオルガニストに専念していたから、というわけではなく、それまでのラモーの人生は作曲ではなく、音楽理論の研究に費やされてきたのです。
ルネサンス以降、ヨーロッパでは、自然や宇宙の中に法則を見つけ、理論化する〝科学〟が発展してきました。
自然現象を〝神の奇蹟〟〝神秘〟でかたづけるのではなく、理性の光で、むしろ神の御業を解明しよう、というわけです。
ガリレオ・ガリレイ、ニュートンらがそのリーダーで、その理念は哲学者のデカルトが指し示したのです。
我思う、ゆえに我あり、という言葉で。
音楽の神秘を数学で解き明かす試み
そして、啓蒙思想が隆盛となり、世界でヨーロッパだけが新しい時代、近代へと舵を切ったのが、ちょうどラモーの生涯と重なります。
ラモーは、音と音が混じり合うと、快い響きと、不快な響きに分かれる、この不思議な現象に自然の法則を感じ、この謎を解明し、理論として示すことに生涯をかけたのです。
その考えの根底には、デカルトの懐疑的批判精神が流れていました。
そして1722年に著した有名な『和声論』をはじめとした数々の著作でそれを論じました。
和声のことを〝ハーモニー〟と呼ぶように定義づけられたのは、ラモーによります。
ラモーは、音楽の数学的なしくみに、偉大なる自然の法則を見出しました。
最後には〝全ての自然界の法則は音楽に基づく〟とまで飛躍してしまい、多くの反論を巻き起こし、果てしない論争に身を委ねつつ生涯を終えるのです。
そして、ラモーの音楽は、自らの音楽理論の正しさを証明するために作られたのです。…
… このオペラは、新しいフランス・オペラの誕生を告げる、金字塔となりました。
オペラ10曲分の音楽が詰まっているといわれ、ラモーは、初作でいきなり頂点を極めたと言えます。
この後のオペラも、様々な大胆な試みに満ち、魅力にあふれていますが、これほどドラマチックではありません。
ではまず、序曲から聴きましょう。
ラモー:オペラ『イポリートとアリシー』
Jean-Philippe Rameau:Hippolyte et Aricie
演奏:マルク・ミンコフスキ指揮 レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル
Marc Minkowski & Les Musiciens du Louvre … 〙
Les Musiciens du Louvre
Marc Minkowski
Composer: Jean-Philippe Rameau
Author: Simon Joseph de Pellegrin
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