ゴキ研

ゴキゲン中飛車研究ノート

定跡の基本から最前線まで詳しく紹介。

ゴキゲン中飛車▲3七銀急戦【超速攻の狙い】

2010年01月17日 10時57分39秒 | 超速対策その他
2010.1.12の順位戦戦は、ゴキゲン中飛車が大活躍でしたね。^-^

A級
谷川浩司九段vs△藤井猛九段
 ▲5八金右超急戦
  後手勝ち

C級2組
村中秀史六段△横山泰明五段
 二枚銀急戦
  後手勝ち
西尾明五段 △田中悠一四段
 ▲7八金型
  後手勝ち
中座真七段 △中村亮介五段
 ▲3七銀急戦(超速攻)
  先手勝ち
大石直嗣四段△佐藤和俊五段
 相穴熊
  後手勝ち
児玉孝一七段△及川拓馬四段
 ▲3七銀急戦vs△4四銀型
  後手勝ち
藤原直哉六段△阪口悟五段
 丸山ワクチン佐藤流
  後手勝ち

なんとゴキゲン中飛車の6勝1敗(!)。
それも一通り全ての対策を撃破しています。

▲5八金右超急戦は、当ブログで紹介している△7二玉型ではなく、△9九馬型でした。
現状は△9九馬型で後手有利となっている様ですね。

ところで、▲5八金右超急戦を最初に指したのは藤井猛九段なんですよね。
その事が、今までゴキゲン中飛車を指すのを躊躇わせていたのかも知れません。

ところで、個人的に唯一の敗戦となった▲中座真七段△中村亮介五段の将棋が気になりました。

これは、▲3七銀急戦で最も過激な超速攻型。
2009.12.25の朝日杯将棋オープン深浦康市王位が見せた新構想で、
私が把握している情報では先手の1勝2敗1千日手です。

まだ1ヶ月も経っていないのに3局も出現しており、プロの関心も高いようです。

そこで、今回はこの超速攻の狙いを簡単に示したいと思います。

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初手からの指し手
▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲2五歩△5二飛▲4八銀△5五歩(途中図)
▲6八玉△3三角▲3六歩(テーマ図15)



◇驚愕のノーガード戦法!?

途中図で▲2四歩が無効なのは、以前述べましたね。

つまり、△同歩▲同飛△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀△3三角(A図)。

右銀が邪魔で△8八角成が受かりません。



テーマ図15が本戦法のスタート。

従来の▲7八玉~▲6八銀の2手を省略して、玉自ら5筋をケア。

後手に態勢を整える余裕も与えない速攻です。

しかし、真の狙いは別にあると私は見ています。


テーマ図15からの指し手
△4二銀▲3七銀(第1図)



◇捌くか受けるか

△4二銀は、次に△5六歩からの捌きと、△5三銀~△4四銀の受けを見た一手。

先手も初心貫徹の▲3七銀。

13手目にして一触即発の局面です。

まずは、乱戦歓迎の後手が捌きに行く順から見ていきましょう。


第1図からの指し手①
△5六歩▲同歩△5六飛▲3三角成△同桂▲4六銀(第2図)
まで、先手良し。



◇居玉が祟る▲6五角問題

△5六歩からの捌きには、先手は手抜いて▲3三角成とはできません。

つまり、△5七歩成が王手なのがデメリット。

そこで、▲5六同歩と応じてから、先手側から角を換えます。

角を交換せずに▲4六銀では△4四歩とされて不満です。(B図)



以下、▲3五歩には△4五歩が好手。

①▲同銀△8八角成▲同銀△5五角(C図)

②▲3三角成△同桂▲5七銀△5五角(D図)

C図、D図共に、▲1八飛には△2六飛で先手が参っています。



そこで、先手から角交換して▲4六銀が第2図。

後手は次の▲2二角と▲6五角の両狙いが同時に受からなくなっています。

これは、△3三桂型でも△3三銀型でも▲6五角問題が付き纏います。

どうやら、直ぐに捌くのは無理なようです。

という訳で、次は受けに回る順を見ていきます。


第1図からの指し手②

△5三銀▲4六銀△4四銀(第3図)



◇とりあえず安泰だが…

△5三銀~△4四銀で、とりあえず角頭と5筋の位は安定しています。

しかし、先手の真の狙いは急戦に非ず。


第3図からの指し手
▲5八金右△6二玉▲7八玉△7二玉▲6六歩(第4図)
まで、後手不満。



◇真の狙いは持久戦

実は、先手の狙いは持久戦でした。

第4図から進んだE図は、前述の▲中座真七段△中村亮介五段の局面。

△4四銀型に組んでしまっている為、後手から仕掛ける手段がありません。

つまり、後手の理想はF図の様な△6四銀型。



第E図とF図を見比べてください。

△7五歩の仕掛けや、△5四飛~△4四飛の揺さぶりが△4四銀型ではできなくなっています。

これが先手の真の狙いです。

従来は先手が▲7八玉~▲6八銀としていたので、△4四銀型の受けが成立していましたが、
こちらの超速攻型ではその2手を省く事によって、スムーズに持久戦へと移行できるのです。

以上が、超速攻の狙いです。

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まとめ

長所
・後手の態勢が整う前に仕掛けられる。
・▲6五角問題によって、後手の荒捌きは無効。
・後手が△4四銀型に構えれば、持久戦に移行して作戦勝ちできる。

短所
・5筋の守りが手薄なので反動も大きい。
・攻めが軽く、狙いが単調。

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今回は先手が良い様な事ばかり書きましたが、大概の急戦は無理なものがほとんど。

私見では、1号局にして佐藤和俊五段の見せた構想が最良の応じ方だと思います。

いずれまた、この形を解説したいと思います。

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丁度先手番で指す戦法の引き出しを増やしたいと思っていたところです。

佐藤康光九段が最近不調なのは、この本を書いていたからなのでは?
とも思ってしまいます。^^;

来週はC級1組順位戦ですね。
近藤正和六段がどんな将棋を見せてくれるのか楽しみです。^-^


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
初コメThanks!! (mmusculus(管理人))
2010-01-20 20:59:25
豆腐さん、はじめまして。^-^
コメントありがとうございます。

数あるサイトから私のブログにたどり着いて頂きうれしく思います。^-^

今後ともゴキ研をよろしくお願い致します。^^
返信する
Unknown (豆腐)
2010-01-19 01:57:01
はじめまして。
後手番のレパートリーにゴキゲンを加えようと思い、さ迷っていたら辿り着きました。

どの記事も密度が濃いですね。更新楽しみにしています。
返信する
コメありがとう!! (mmusculus(管理人))
2010-01-18 21:10:38
金符さん、毎度コメントありがとうございます。^-^

藤井システムのときもそうでしたが、居飛車党も指さしてこそ大流行しますからね。
基本的に居飛車党は相居飛車でも先後両方持つ人も多いので
指す上では問題にならないのではないでしょうか?^-^

確かにとちぎ将棋祭りもこの急戦でしたね。^^;
棋譜は持っていたのですが忘れていました。^^;

序盤に少しでも良くしようと積極的に動くのはまさに現代将棋の思想ですよね。
見ていて楽しくて、本当にいい時代に生まれたと思いますね。^-^
返信する
ありがとうございます。 (mmusculus(管理人))
2010-01-18 21:03:35
yattie24さん、こんばんは。
コメントありがとうございます。^-^

▲3七銀急戦は一時期猛威を振るっていましたからね。
今ではゴキゲン側の方がやれるという結論が出てきている様に思います。
相穴熊は、以前記事にした遠山四段の9筋位取り穴熊が優秀ですよ。
実は、私も今月のNHKテキストを見て知ったのですが、
居飛車側は9筋を受けにくいそうです。
これもまた今度解説しますね。
返信する
Unknown (金符)
2010-01-18 19:59:57
ゴキゲン強かったみたいですね。半分居飛車党なので複雑な気持ちですが。

第4図はとちぎ将棋まつり席上対局▲羽生‐△戸辺戦でも指されていましたよ。

急戦を見せて穴熊というのは対藤井システムの応用でしょうか?ゴキゲンの戦いはいろいろ混ざった感じがして見ていて面白いです。

返信する
おつかれさまです (yattie24)
2010-01-17 23:59:19
こんばんは。yattie24です。

個人的に、対急戦では▲3七銀型がとても興味があります。対持久戦では穴熊でしょうか。

急戦と見せかけて持久戦にする第4図はうまい構想だと感心してしまいます。
ゴキ中側の対応策がやや難しいと思っているだけに、次に期待しています!!
返信する

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