良性腫瘍摘出術には、様々なドラマがあります。
今回は、アメリカ(海外在住者)から脂肪腫を取りに来た日本人というお話です。
これは、数年前のことですが、ある男性から首のできものを取りたいと電話で予約が入るところから始まります。当然、私たちは、日常の診察の予約だと思っていました。
予約当日に診察に来院されたのは、40代後半の男性患者様です。問診をしていくと、12年前から首の後ろにできものが出来きて、徐々に大きくなっているので困っているという事でした。
そして、治療の手順としてはいつも通りのCTあるいはMRIによる画像診断、手術前血液検査、手術日の決定と進んでいきます。
ところが、突然患者様から
患者様:先生、僕は今アメリカに住んでいるので2週間しか滞在しません。その期間で、お願いします。
医師:えっ、そうなんですか?それは、またどうしてそのように?
患者様:元々実家は、名古屋にありますのでここに来ました。実際、アメリカは医療費が高いし、ドクターとの細かい部分でのニュアンスが伝わらないので、うまくコミュニケーションができません。
医師:なるほど、それで手術を受けるためにだけ、日本に一時帰国されたということですか。
患者様:そうなんです。やはり、日本のドクターの方が技術的にも繊細だから信頼できると思うんですよね。細かいところにも気をつかってくれるし安心、安心・・・。
医師:それだったら、その期間内に抜糸まで終了するように密に計画を立てましょう。すぐに、画像診断と血液検査を至急でオーダーします。
MRI検査では、首の後ろに6cmの大きさの脂肪腫がありました。
手術は局所麻酔でおこない、摘出に要する時間は約30分でした。術後に、マイナートラブルが発生しないように十分な止血、生理食塩水による創部の洗浄後、排液のためのドレーンを挿入、そして最も大事なのは圧迫ドレッシングです。
手 術後は5日間の通院をしていただき、毎日創部にトラブルが発生していないかどうかの確認を行いました。起こりうるトラブルというのは、血腫、感染、漿液腫 などが考えられます。もし、こういう事が起こったときには、再度局所麻酔をしてその状態に合わせた適切な処置を行わなければなりません。
術後は、特に問題なく5日後に抜糸を行い、スキントーンテープによるテーピングを始め、6ヶ月ぐらいは自分で張り替えていただくように指導をおこないました。
患者様:先生、ありがとうございました。これで、3日後には、安心してアメリカに戻ることができます。
医師:何事もなく、治療ができてホッとしています。
私は、アメリカの医療事情について詳しくはありませんが、キズアト形成術やリフトアップ手術など他にも一時帰国の際に治療をするという方がお見えになりますので、海外の在住の患者様にも精一杯のお役に立てるようにして参りたいと思います。
(形成外科 良性腫瘍摘出術 脂肪腫)
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