
「満州事変は侵略戦争ではない」其の八
陸軍中央部の対応 其の一
9月19日午前7時、陸軍省・参謀本部合同の省部首脳会議が開かれ、小磯国昭軍務局長が「関東軍今回の行動は全部至当の事なり」と発言し、一同異議なく、閣議に兵力増派を提議することを決めた。出席者は杉山元陸軍次官、小磯国昭軍務局長、二宮治重参謀次長、梅津美治郎総務部長、今村均作戦課長(建川美次第一部長の代理)、橋本虎之助第二部長、および実質的に局長待遇であった永田鉄山軍事課長であった。省部首脳会議の決定を受け、作戦課は朝鮮軍の応急派兵、第10師団(姫路)の動員派遣の検討に入り、軍事課は閣議提出案の準備にかかった。同日午前10時の閣議で南次郎陸軍大臣は関東軍増援を提議できず、事態不拡大の方針が決定された。
同日午前、杉山陸軍次官、二宮参謀次長、荒木貞夫教育総監部本部長によって、満蒙問題解決の動機となすという方針が合意され、条約上の既得権益の完全な確保を意味し、全満洲の軍事的占領に及ぶものではないとされた。
同日午後、作戦課は、関東軍の旧態復帰は断じて不可で、内閣が承認しないなら陸相が辞任して政府の瓦解も辞さないという「満洲における時局善後策」を作成し、参謀本部内の首脳会議の承認を得た。作戦課は関東軍の現状維持と満蒙問題の全面解決が認められなければ、陸軍によるクーデターを断行する決意であった。
南陸相は、事態不拡大の政府方針に留意して行動するよう、本庄繁関東軍司令官に訓電した。
20日午前10時、杉山次官、二宮次長、荒木本部長は、関東軍の旧態復帰拒否と、政府が軍部案に同意しない場合は政府の崩壊も気にとめないことを確認した。
軍事課は、事態不拡大という閣議決定には反対しないが、関東軍は任務達成のために機宜の措置を採るべきであり、中央から関東軍の行動を拘束しないという「時局対策」を策定し、南陸相、金谷範三参謀総長、武藤信義教育総監(陸軍三長官)の承認を得た。
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