五高の歴史・落穂拾い

旧制第五高等学校の六十年にわたる想い出の歴史のエピソードを集めている。

龍南物語21(電報の話)

2009-07-22 04:30:33 | 五高の歴史
現代であればパチンコで負けたので金送れと言う事でもあろうか、ここの電報の話は軽妙に軽く流してあると云ったほうがいい程度のものである。要するに小遣いが足りなくなったので金送ってくれと電報で親の方に頼んでいる話で、振込詐欺の横行する時代ではとても考えられない話である。
今はテレビを始めファックス、メール等々で相手さんへの連絡手段も多様化し世界中、何処の地域にでも簡単に連絡が出来る。便利な世の中になったものである。熊本における通信手段の発達は電報からであるが、明治9年の神風連の乱の時,熊本鎮台の司令長官種田政明の愛妾小勝が東京の父宛に打った「ダンナハイケナイワタシハテキズ」の電文が後には都々逸にもなり,簡単明瞭なる参考電文にもなり,電報の利用が進んだ。ここでは龍南物語に見える大正の頃の電報の話である。


電  報  の  話
飲みたい、食べたいは人の児の情けである。
かくすればかくなるものと知り乍ら、止むに止まれぬは、殊に若い大和男児の精華である。
止むことを得ぬ飲みたい、食いたいのあとでは、極ったように丸いものに困る。其のことが殊に急を要する場合には「金おくれ」の電報が飛んで、ふるさとの親爺の顔に時ならぬ低気圧を起こさせる。
「ジギョウリョウノンダドウカシテクレ」
までは未だ邪気がない。
   ☆
「カネオクレ、ハナニヨロシク」
はOさんの電報。註に曰く、ハナとはOさんの田舎の許嫁の名。Oさんはお花さんに対していと冷ややかなるに反して、親爺の方は倅の嫁は彼女のはかにないという御熱心。O酸素子を睨んでこの危急の秋に利用した。
 「イラヌコトイウナ、ヨケイナカネハヤラヌ」
Oさんの返し、
 「ソウイワズニオクレ」
   ☆
 次にHさんの電報の話。
Hさんは田舎の金持ちの戸主であった。遊学中は叔父さんが亡い阿父さんに代わって、一切の家の世話並びにHさんの監督にあたっていた。それだけHさんのは元気がみちみちていたのであった。
「カネオクレ」
「イマカネナイ」
「カネナケレバヤマヲキレ」
Hの財産にはたくさんの山林があった。

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