劇場 京都南座
観劇日 2010年12月18日(土)
座席 3階11列
昼の部
第一 羽衣(はごろも)
天女:孝太郎 伯竜:愛之助
愛之助さんの伯竜といえば、玉三郎さんとの舞台を思い出す。
踊り手の違いか演出の違いか。
あのときの伯竜は天女が前にいても、蛇ににらまれた蛙ならぬ天女
に魅入られた漁師で、ただじっと見とれている風情だった。
愛之助伯竜、ほんとにかわゆらしかったのよ~。
(その時の「羽衣」はこちら)
だけど、今回は二人の距離が接近していた。
先に登場する伯竜。松にかかっている衣を手にとる。
能装束のせいもあり、若くて小上品な漁師という印象。
つづいて花道に現れた孝太郎さんの天女、きれいだけれど、何者も
寄せつけないような圧倒感はなく、どこか親しみがもてる感じ。
現に天女が現れると伯竜は近づいて触ってみたりもしていた。
好奇心があって、ちょっと人間くささをにおわせる伯竜だ。
返してくれたら舞を見せましょう、と天女。
いや返したらそのまま帰ってしまう・・・のやりとりのあと。
羽衣を身につけて再び登場した天女は、厳かで優雅な佇まいを見せ、
軽やかに舞い、最後は背後にある山を舞い昇ってゆく。
それをじっと見送っている伯竜、花道から奈落へと・・・。
短いながらも顔見世のオープニングにふさわしい、夢の始まり♪
第二 菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
寺子屋
松王丸:吉右衛門 千代:魁春
戸浪:芝雀 涎くり与太郎:種太郎
園生の前:扇雀 春藤玄蕃:段四郎
武部源蔵:梅玉
出演されている人々は素晴しいのに、ごめんなさい。
この演目は完敗!
周囲の人々は皆すすり泣きというなか、完璧に取り残されたワタクシ。
菅原伝授手習鑑で見たことあるのは「車引」だけ、という状態ではね。
特に、桜丸のエピソードが欠落していることが最大の要因かと。
我が子のことで涙しているのだと思いきや、イヤホンガイドによれば
自分の子供に対してはよくやったと喜んでいる、という意味の解説。
エッ、そうなの? 涙は桜丸に対してである、と。うう~。
ここ、わかりません。はい、イチから出直します。
2011年は歌舞伎か文楽で菅原伝授手習鑑の通しをやっていただきたく。
お願い申し候。(あ、やるんだ。2月に国立劇場で文楽。)
大仰な動きではないのに低くシブイ声で松王丸を演じる吉右衛門さん、
純朴な味わいの涎くり与太郎の種太郎さんが印象に残った。
第三 阿国歌舞伎夢華(おくにかぶきゆめのはなやぎ)
出雲の阿国:玉三郎
女歌舞伎:笑也 笑三郎 春猿 吉弥
男伊達:愛之助 翫雀
名古屋山三:仁左衛門
ただきれいな踊りを見せられるのかと思っていたのに。
寺子屋とは逆に、ひたすら涙が出て困った演目。
阿国の踊りの意味やヒストリーが楽しいだけではないことがちょっ
とわかった。
初めに二人の男が登場。翫雀さんと愛之助さん。
近頃人気の出雲の阿国を真似てみようではないかと二人で踊り始める。
衣装のハデさからいって、男伊達というより傾奇者というカンジ。
愛嬌のある見るからに楽しい振付だ。
翫愛コンビも近頃売り出し中!(笑)、なんか好き♪ この雰囲気。
続いて阿国の一座。その間伊達男二人はじっと左右に控えている。
玉三郎さんに続いて、花道から笑也さん、笑三郎さん、春猿さん、
吉弥さんが視線を集める。壁場全体がはんなりモードに突入。
よく見ると皆がそれぞれ手を合わせ・・・合掌?
本舞台に移動して手に手に小さな鐘をもち、念仏踊りだそう。
舞台の様子が変わった。
花道スッポンからのぼってきたのは一人の男。
もう違う。全然違う。3階から観ても吸い寄せられるわ。
現れたのは名古屋山三。阿国といっしょに歌舞伎踊りを作ったひと。
山三はでも、もうこの世にはいないのだ。阿国が近づく・・・。
オペラグラスで切り取って二人を追いかけるから、ずっとズームイン。
ああ、完璧に二人の世界だぁ~♪♪♪
さっきから涙があふれて止まらない。
前に観た仁左さまの「二人椀久」や玉さまの「楊貴妃」のような、
華やかさと儚いもの哀しさが入り混じった世界。
二人、お顔がくっつきそうなほど近づけて踊ったり、視線絡ませたり。
涙が止まらないのは実際のお二人が築いてこらえた歴史を重ね合わせ
て見てしまうせいかもしれない。
やがて・・・山三がいってしまった花道の奈落の淵に突っ伏してしば
し動かない阿国にまた涙。
再び阿国の一座の華麗な踊り。四条河原。
華麗ではあってもそれは戦で命を落とした人々への鎮魂の踊りだそう。
十三世片岡仁左衛門を偲んで
第四 伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)
沼津
呉服屋十兵衛:仁左衛門 平作娘お米:秀太郎
池添孫八:進之介 荷持安兵衛:歌昇
雲助平作:我當
前に「沼津」を観たのは松竹座(こちら)。平作とお米は今回と同じ
配役だったけれど、十兵衛は違っていた。
あるいは十三世の映画で観た「沼津」では、平作が十三世で十兵衛が
当代仁左衛門さんだった。((こちら))
過去にそれぞれが演じてきた配役を、松嶋屋三兄弟が初めてそろって
演じる貴重な舞台をナマで観られたことに感謝!
平作の我當さんは初めはヨボヨボで登場して客を取り、笑いをとる。
客席通路を通りながら、十兵衛と掛け合いしつつ道中の歩を進める。
二人の絶妙の間から醸し出されるあったか~い笑いがホンマに素敵!
松嶋屋っ、なのだ♪
煎餅布団をクルッと巻きつけるところは、先日永楽館で与次郎がやっ
ていたあのパターンと同じで、初めて見た時はもっと笑ったけど。
そして最期のシーン。
娘婿のため敵の名前を聞き出そうとするのだけれど、死に行く老人に
なら語ってもよかろうと究極の捨て身の策。実の息子目の前でグイッ
と自刃する様子が凄惨で涙涙~。
そんなにまでして名前を聞き出そうとする父に、最初は固辞していた
息子がついにその名を言ってしまうという・・・。
秀太郎さんのお米は、昔遊女だったことがわかる垢抜けた身のこなし
で、艶っぽさもそこはかとなく伝わってくるイイ女。
だけど今は病の夫、老いた父親を抱え、貧しさゆえ魔がさしてしまう。
十兵衛が持っている、なんでも治る薬がほしくてしのんでいったとこ
ろを十兵衛に見とがめられる。(どう考えてもぜったいバレるのに。)
それまで楽しく笑いのあった舞台がこのあたりから一変。
お米が盗みの理由を三味線の糸にのって十兵衛に語るクドキが切ない。
仁左衛門さんの十兵衛は、最初のうちは台詞の調子も軽くて滑らか。
自分の荷物持ちである平作の娘にひとめ惚れして平作の家に泊まって
しまうほどカル~イ男。
ところが平作が自分の親だと知ってしまった時のあの表情・・・喜び
じゃないんだな~。険しい顔だった。
後を追ってきた父の頼みに困惑し、恩ある人と実父の間で板挟みにな
り身悶えする十兵衛がたまりませぬ。
最後に「おとうさーん」と叫んで平作にすがりつく十兵衛は、幼子が
父に抱きつくように見えた。涙涙涙。
三兄弟に進之介さんも加わって、松嶋屋の濃くて熱い人情劇にしっか
り見入ってしまった。
昼の部はここでおしまい! もう、こんなに泣いたら外に出られへん
やん~、な素晴しい舞台だった。
夜の部は外郎売しか書けなかった・・・。
仮名手本忠臣蔵七段目。心中天網島。鳥辺山心中。越後獅子は時間の
都合で観られなかったけれど、今年は特に顔見世らしい豪華さに加え、
かなり見応えのある舞台に満足!
観劇日 2010年12月18日(土)
座席 3階11列
昼の部
第一 羽衣(はごろも)
天女:孝太郎 伯竜:愛之助
愛之助さんの伯竜といえば、玉三郎さんとの舞台を思い出す。
踊り手の違いか演出の違いか。
あのときの伯竜は天女が前にいても、蛇ににらまれた蛙ならぬ天女
に魅入られた漁師で、ただじっと見とれている風情だった。
愛之助伯竜、ほんとにかわゆらしかったのよ~。
(その時の「羽衣」はこちら)
だけど、今回は二人の距離が接近していた。
先に登場する伯竜。松にかかっている衣を手にとる。
能装束のせいもあり、若くて小上品な漁師という印象。
つづいて花道に現れた孝太郎さんの天女、きれいだけれど、何者も
寄せつけないような圧倒感はなく、どこか親しみがもてる感じ。
現に天女が現れると伯竜は近づいて触ってみたりもしていた。
好奇心があって、ちょっと人間くささをにおわせる伯竜だ。
返してくれたら舞を見せましょう、と天女。
いや返したらそのまま帰ってしまう・・・のやりとりのあと。
羽衣を身につけて再び登場した天女は、厳かで優雅な佇まいを見せ、
軽やかに舞い、最後は背後にある山を舞い昇ってゆく。
それをじっと見送っている伯竜、花道から奈落へと・・・。
短いながらも顔見世のオープニングにふさわしい、夢の始まり♪
第二 菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
寺子屋
松王丸:吉右衛門 千代:魁春
戸浪:芝雀 涎くり与太郎:種太郎
園生の前:扇雀 春藤玄蕃:段四郎
武部源蔵:梅玉
出演されている人々は素晴しいのに、ごめんなさい。
この演目は完敗!
周囲の人々は皆すすり泣きというなか、完璧に取り残されたワタクシ。
菅原伝授手習鑑で見たことあるのは「車引」だけ、という状態ではね。
特に、桜丸のエピソードが欠落していることが最大の要因かと。
我が子のことで涙しているのだと思いきや、イヤホンガイドによれば
自分の子供に対してはよくやったと喜んでいる、という意味の解説。
エッ、そうなの? 涙は桜丸に対してである、と。うう~。
ここ、わかりません。はい、イチから出直します。
2011年は歌舞伎か文楽で菅原伝授手習鑑の通しをやっていただきたく。
お願い申し候。(あ、やるんだ。2月に国立劇場で文楽。)
大仰な動きではないのに低くシブイ声で松王丸を演じる吉右衛門さん、
純朴な味わいの涎くり与太郎の種太郎さんが印象に残った。
第三 阿国歌舞伎夢華(おくにかぶきゆめのはなやぎ)
出雲の阿国:玉三郎
女歌舞伎:笑也 笑三郎 春猿 吉弥
男伊達:愛之助 翫雀
名古屋山三:仁左衛門
ただきれいな踊りを見せられるのかと思っていたのに。
寺子屋とは逆に、ひたすら涙が出て困った演目。
阿国の踊りの意味やヒストリーが楽しいだけではないことがちょっ
とわかった。
初めに二人の男が登場。翫雀さんと愛之助さん。
近頃人気の出雲の阿国を真似てみようではないかと二人で踊り始める。
衣装のハデさからいって、男伊達というより傾奇者というカンジ。
愛嬌のある見るからに楽しい振付だ。
翫愛コンビも近頃売り出し中!(笑)、なんか好き♪ この雰囲気。
続いて阿国の一座。その間伊達男二人はじっと左右に控えている。
玉三郎さんに続いて、花道から笑也さん、笑三郎さん、春猿さん、
吉弥さんが視線を集める。壁場全体がはんなりモードに突入。
よく見ると皆がそれぞれ手を合わせ・・・合掌?
本舞台に移動して手に手に小さな鐘をもち、念仏踊りだそう。
舞台の様子が変わった。
花道スッポンからのぼってきたのは一人の男。
もう違う。全然違う。3階から観ても吸い寄せられるわ。
現れたのは名古屋山三。阿国といっしょに歌舞伎踊りを作ったひと。
山三はでも、もうこの世にはいないのだ。阿国が近づく・・・。
オペラグラスで切り取って二人を追いかけるから、ずっとズームイン。
ああ、完璧に二人の世界だぁ~♪♪♪
さっきから涙があふれて止まらない。
前に観た仁左さまの「二人椀久」や玉さまの「楊貴妃」のような、
華やかさと儚いもの哀しさが入り混じった世界。
二人、お顔がくっつきそうなほど近づけて踊ったり、視線絡ませたり。
涙が止まらないのは実際のお二人が築いてこらえた歴史を重ね合わせ
て見てしまうせいかもしれない。
やがて・・・山三がいってしまった花道の奈落の淵に突っ伏してしば
し動かない阿国にまた涙。
再び阿国の一座の華麗な踊り。四条河原。
華麗ではあってもそれは戦で命を落とした人々への鎮魂の踊りだそう。
十三世片岡仁左衛門を偲んで
第四 伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)
沼津
呉服屋十兵衛:仁左衛門 平作娘お米:秀太郎
池添孫八:進之介 荷持安兵衛:歌昇
雲助平作:我當
前に「沼津」を観たのは松竹座(こちら)。平作とお米は今回と同じ
配役だったけれど、十兵衛は違っていた。
あるいは十三世の映画で観た「沼津」では、平作が十三世で十兵衛が
当代仁左衛門さんだった。((こちら))
過去にそれぞれが演じてきた配役を、松嶋屋三兄弟が初めてそろって
演じる貴重な舞台をナマで観られたことに感謝!
平作の我當さんは初めはヨボヨボで登場して客を取り、笑いをとる。
客席通路を通りながら、十兵衛と掛け合いしつつ道中の歩を進める。
二人の絶妙の間から醸し出されるあったか~い笑いがホンマに素敵!
松嶋屋っ、なのだ♪
煎餅布団をクルッと巻きつけるところは、先日永楽館で与次郎がやっ
ていたあのパターンと同じで、初めて見た時はもっと笑ったけど。
そして最期のシーン。
娘婿のため敵の名前を聞き出そうとするのだけれど、死に行く老人に
なら語ってもよかろうと究極の捨て身の策。実の息子目の前でグイッ
と自刃する様子が凄惨で涙涙~。
そんなにまでして名前を聞き出そうとする父に、最初は固辞していた
息子がついにその名を言ってしまうという・・・。
秀太郎さんのお米は、昔遊女だったことがわかる垢抜けた身のこなし
で、艶っぽさもそこはかとなく伝わってくるイイ女。
だけど今は病の夫、老いた父親を抱え、貧しさゆえ魔がさしてしまう。
十兵衛が持っている、なんでも治る薬がほしくてしのんでいったとこ
ろを十兵衛に見とがめられる。(どう考えてもぜったいバレるのに。)
それまで楽しく笑いのあった舞台がこのあたりから一変。
お米が盗みの理由を三味線の糸にのって十兵衛に語るクドキが切ない。
仁左衛門さんの十兵衛は、最初のうちは台詞の調子も軽くて滑らか。
自分の荷物持ちである平作の娘にひとめ惚れして平作の家に泊まって
しまうほどカル~イ男。
ところが平作が自分の親だと知ってしまった時のあの表情・・・喜び
じゃないんだな~。険しい顔だった。
後を追ってきた父の頼みに困惑し、恩ある人と実父の間で板挟みにな
り身悶えする十兵衛がたまりませぬ。
最後に「おとうさーん」と叫んで平作にすがりつく十兵衛は、幼子が
父に抱きつくように見えた。涙涙涙。
三兄弟に進之介さんも加わって、松嶋屋の濃くて熱い人情劇にしっか
り見入ってしまった。
昼の部はここでおしまい! もう、こんなに泣いたら外に出られへん
やん~、な素晴しい舞台だった。
夜の部は外郎売しか書けなかった・・・。
仮名手本忠臣蔵七段目。心中天網島。鳥辺山心中。越後獅子は時間の
都合で観られなかったけれど、今年は特に顔見世らしい豪華さに加え、
かなり見応えのある舞台に満足!
翫愛コンビ、去年の「石橋」も良かったですが、今年の「お国歌舞伎」二人共に軽やかで見ているものもうきうきと踊りたくなるような踊りでした。私もこのコンビ結構好きです。
普段も仲がよろしいそうですよ。
私は「河庄」で帰宅しました。もう少し早く終わると最後まで見れるのですが。
翫雀さんの「越後獅子」も是非見たかったのです、涙。
昨年は、たくさんの愛之助さん情報を教えていただき、そして初めてコメントさせていただきありがとうございました!
今年もブログ楽しみにしておりますので、よろしくお願い致します☆
さて、南座!私も拝見しました…3階後方席での昼夜通し12時間フルコースでしたが、とにかく見所満載だったので、意外と頑張れました(笑)
それにしても、双眼鏡越しで見ても、愛之助さん、やっぱり素敵ですね☆(惚)
今年もよろしくお願いします。
> 顔見世らしい踊りで良かったですね。
そうです~。幕開きからほんわか夢気分になれる演目で。
14日収録の舞台が 1月6日14:00~14:45 NHK教育で
放送されますね♪
> 普段も仲がよろしいそうですよ。
そうなんですか~。そういうことが舞台でも反映されるん
でしょうか。棒しばりの時なんてサイコーでした。
翫雀さんの「越後獅子」は私も見たかったです~。
あの終演時間だけは今後ナントカしてほしいですね!
今年もよろしくお願いします。
愛之助さん情報ですが、外郎売以後たくさんありすぎて
取りこぼしが多いです~。
これからもできるだけ情報をシェアして、みんなでワイワイ
楽しめたらと思います。
> 3階後方席での昼夜通し12時間フルコース
あ、越後獅子まで完結されたのですね!すご~い。
お疲れさまでした。舞台がいいと観れちゃいますよね!
そうなんですよー。私も愛之助さんの動きに合わせて必死に
オペラグラスを動かすんですけど、細かい部分が見えるうえに
素敵さも拡大してみえますからたまりませんっっっっっ♪