星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

松竹大歌舞伎 十八代目中村勘三郎襲名披露 昼の部 □観劇メモ

2006-09-12 | 観劇メモ(伝統芸能系)
 公演名 松竹大歌舞伎 昼の部
 劇場 神戸文化ホール 大ホール
 観劇日 2006年9月9日(土) 12:30開演
 座席 28列(最前列)


平成18年度 東・西コース 松竹大歌舞伎 十八代目中村勘三郎襲名披露
昼の部

一、本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう) 十種香
ニ、十八代目中村勘三郎襲名披露 口上
三、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)


前に観劇した「野田版 研辰の討たれ」も「コクーン歌舞伎 東海道四谷怪談」も
現代劇の演出家が演出したものだったので、勘三郎さんの本来の歌舞伎をナマで
観るのは今回が初めて。古典だけど大丈夫? 私。
ところがこれがまた、めちゃめちゃ楽しかったんだな!

「本朝廿四孝」
武田信玄の子勝頼(中村七之助さん)と、長尾謙信の娘八重垣姫(中村扇雀さん)
の恋のお話。切腹したはずの許嫁の勝頼は実は身代わりで、本物の勝頼は生き
ていた。本物とは知らずに勝頼に似ている蓑作という男に恋するという、ちょっ
とややっこしい設定だが、イヤホンガイドのおかげですぐに入っていけた。
初めのほうの場面で、亡くなった勝頼のために十種類の名香を焚いて回向して
いる八重垣姫。イヤホンガイドの解説によれば、ここは役者さんの好みで本物
の香を焚くらしい。お、粋だな、と思い、鼻をふくらませて思いっきり匂いを
かいでみた。けれど、下手にいた私の席までは匂いは届かず。ザンネン!
八重垣姫が積極的に勝頼を口説くところがホントに楽しい。
柱巻き、と聞いたと思うが、恥ずかしさのあまり着物の袖で柱に巻きつく仕草
が、気品も感じさせながら、なんともかわいらしい姫様でありました。
最前列だったので、七之助さんの細~くて長~い指にしばし目が釘付け♪

「十八代目中村勘三郎襲名披露 口上」
現代の言葉でわかりやすい、ユーモア混じりの役者さんたちの口上。
勘三郎さん自身は昼の部の「身替座禅」の紹介を兼ねて、祖父である六代目尾上
菊五郎さんが作った演目で、父である十七代目勘三郎さんの当たり役だったこと
に触れた。「今日は2階、3階(本当は2階)まで"びっちり"入って・・・」
のようなカジュアルな言葉使いをする勘三郎さん、ほんとチャーミングな人。
神戸に関係のある口上としては、扇雀さん、中村芝のぶさんのお二人。
ひときわ拍手が大きかったのは扇雀さん。お母様(扇千景さん)が神戸出身で、
神戸には縁があるとのこと。11年前の阪神大震災の年に襲名し8月に当地で公演
をしたが、当時の自分には何もできず、できるのは舞台で演じる姿を楽しんでも
らうことだけ、と。震災の話は今なお体験者の心に響くもの。私自身もじーんと
なってしまった。
中村芝のぶさんは神戸出身。この日は列座ではなく特別に呼ばれて登場。及川光
博さんにちょっと似た美形で、女形のお化粧がよく似合っている。
歌舞伎に関係のないところからこの世界に飛び込んだそうで、勘三郎さんは実力
があれば名門の出でなくても活躍できることを知ってほしいと結んでいた。

「身替座禅」
狂言の「花子(はなご)」をもとにした演目で、ストーリ-自体はごくシンプル。
大名の山蔭右京(勘三郎さん)が愛人に会うために恐い妻をだまし、家来の太郎
冠者に身代わりで座禅をさせ、その間に浮気をして帰ってくる。ほろ酔いのまま、
太郎冠者が妻に代わっているとも知らず、浮気の子細を語り出す・・・。

観る前までは全然知らなかったが、観劇後はこれに出会えてよかった!と思った。
喜劇で感激するってどういうことなんだろう。
たぶん、勘三郎さんの名人芸を目の当たりにしている喜びだと思う。
パンフレットにも書いてあって、インタビューでも話していたが、勘三郎さんが
何回稽古をしたかしれないという<おこつき>が存分に堪能できる演目だった。
<おこつく>とは、蹴つまずいて、やがて立ち直る動作をいうらしい。
(勘三郎さんご自身による説明が、東京新聞のこちらに。)

愛人の元から家にたどりつくまでの、ほろ酔い男のこっけいな仕草・行動が、花
道で時間をかけて丁寧に演じられる。
愛人に借りた小袖を肩にかけた姿が色っぽく、すごく上機嫌な右京。足がふらつ
いた様子とか、ニタァーーーっと思い出し笑いしたりとか、まるでお酒がにおっ
てきそうなフウ~ッという息のはき方とか、半身になって目だけで振り返ったり
とか。扇に顔を隠しながら隙間から愛人のいる方向をのぞく、その口がニターッ!
花道の近くだったので、とにかくその細かい表情の一つ一つを見逃したくなくて
私は観察モードに。酔っぱらいなのに、かわいくて気品もある右京さんだった。
もう一つの見せ場は、舞台正面で太郎冠者に自分の浮気報告をするところ。
花子(愛人)が出迎えてくれたところとか、お酌をしてもらって自分が飲むと
ころとか、花子が奥方にヤキモチを妬くのをなだめるところとか、態勢、身振り、
手つき等を変えながら一人二役で器用にやってのける。
これがおかしくて、面白くて。そして、感心するしかなかった。
こういうものに出会えるから、お芝居って、歌舞伎って素敵なんだよね♪
<ご当地ネタ> 西宮のえべっさん
夜の部と、幕間のインタビューについては、また後日にアップしたいと思う。

「浅草に江戸芝居小屋をつくる会」の署名はこちら


松竹大歌舞伎 十八代目中村勘三郎襲名披露 夜の部 □観劇メモ
(このブログ内の関連記事)
松竹大歌舞伎 十八代目中村勘三郎襲名披露 観劇メモ番外編(1)(このブログ内の関連記事)
松竹大歌舞伎 十八代目中村勘三郎襲名披露 観劇メモ番外編(2)(このブログ内の関連記事)

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第36回功名が辻 おぼえがき | トップ | 歌舞伎のノベライズ本「紅蓮... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
歌舞伎の世界、素敵なんですね! (しろう)
2006-09-12 23:45:56
歌舞伎の世界はまだ全然手つかずなんですが、すごく楽しく読ませていただきました。ほんとに面白そう!思ったより堅苦しくないものなんですねえ。かずりんさんもすっかり夢中だし、わたしも早く歌舞伎デビューしたい♪って思っちゃいました。

それから、かずりんさんからとっても嬉しいメッセージを伺いました。ぜひぜひ♪♪ お心遣いありがとうございました!
返信する
デビューのお誘い(笑) (ムンパリ)
2006-09-13 23:23:07
しろうさん、こんばんは!

そうなんですよ~。この日の昼の部はスゴ~ク面白い演目(喜劇)だったんです。こういうのがあるのか、って私も全く意外でした。まだビギナーなもので。

最初は野田秀樹さん演出の作品を観たのがきっかけでしたが、勘三郎さんその人にすっかり魅了されてしまいました。初心者でもイヤホンガイドがあるから大丈夫。誰にでも楽しめると思いますよ。

あ、メッセージはソレとアレの件ですね。こちらのほうこそありがとうございます!! かずりんさんにも感謝ですね(って、こんなとこで。笑)。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

観劇メモ(伝統芸能系)」カテゴリの最新記事