公演名 勘吉郎の会
劇場 国立文楽劇場
観劇日 2009年9月27日(日) 16:00
今年3月に亡くなられた藤間紫さんを偲んでの舞踊の会。
夜の部のみを拝見。
私のお目当ては愛之助さん、亀治郎さんの「かさね」と「蝶の道行」。
昼の部が押していて約15~20分遅れで開演となった。
会を主催されている藤間勘吉郎さんは紫派藤間流の重鎮で、これまで
に歌舞伎舞踊の振付も数多く手がけておられる。
この日も歌舞伎の舞台で拝見するような演目が幾つかあった。
愛之助さん、亀治郎さんのお二人がプログラムに寄せている挨拶文に
は共通して「芝居心」という言葉が書かれていた。
夜の部には亀治郎さんが3演目、愛之助さんは2演目に出演。
ああ、コンパクトに書くつもりが、またまた自分用覚え書きモードに
突入してしまいました~っ(滝汗)。
清元「梅川」
忠兵衛:市川亀治郎
梅川:藤間勘由香
舞台に照明がつくと、糸立てにくるまった二人がいた。
あたりは雪景色。道行きのシーンだ。
くっついたままなかなか離れない二人が気になるぅぅ~(笑)。
仲睦まじそうな二人。自分たちの身の上を嘆いているようだ。
背景が新口村に変わったところで台詞が入り、忠兵衛が言う。
「ここが私の生まれ在所の新口村だ」と。
遠くに父親孫右衛門の姿を見つけた途端、梅川は駆け出して会いに行
こうとするが、忠兵衛は糸立てで顔を隠し、頑に会うまいとする。
糸立てがふるえているのは中で泣いているのだろう。
寄り添ったたまま、でも別々の方向に引っ張り合う二人の姿で幕。
短い舞踊劇の中に、芝居心がたっぷり。
亀治郎さんの忠兵衛は初めは意外な感じがしたが、女性相手に踊って
いるからか、見慣れると男っぽく見えてきた。
孫右衛門の姿に素直に反応する梅川と、拒否しながらも本心は会いた
がっている忠兵衛の心情が突き刺さる幕切れが、特に面白いと思った。
義太夫「蝶の道行」
小槇:市川亀治郎
助国:片岡愛之助
以前に文楽で見て切なくなってしまった演目。
舞踊の会でも一度見て、さらにじーんとなった。
あれを愛之助さんが演るんやて。ドキドキ。
舞台には女性の姿が。
いや、ふわりふわりゆっくり舞う蝶、小槇だ。
遅れてスッポンから男が現れる。
後方席の私から見えたのは、はかなげな横顔の助国。助国も小槇も、
もうこの世の人ではないんだよね~。
それにしても愛之助さん、目を細めた憂い顔がキレイやわぁ♪
助国は黒の衣装に絽の白無地を袈裟懸けに。小槇は黒の衣装にだらり
の帯。帯には二人とも大小でおそろいの蝶の刺繍がある♪
二人のなれそめの場面は回想なのだろうか。
男は桔梗色の縞、女は赤の縞の衣装に替わり、舞台が華やかムードに。
小槇のほうが積極的? 亀治郎さんだからだろうか。ちゃめっ気がある
ように見える。
一方の助国、目尻に描いた紅のせいなのか、女性のようなお顔。きれい
だけれど、弱々しい男の印象がする。
楽しそうな二人の舞いがしばし続く。
舞台背景が青に変わると、二人は白装束になり、死出の旅へ。
地獄の責め苦の場面だ。
ふわふわと楽しそうに舞っていた二人の動きがバタバタと激しくなる。
背景が赤に変わり、めらめらと燃える炎。
地獄の業火に苦しむ二人。背景の赤と白装束のコントラストがくっきり。
羽をパタパタさせ、あえぐように花道でくるくると二人が回り始める。
苦しそうなつがいの蝶の動きに引き込まれ、見入ってしまう。
やがて舞台には丸~い月が。
その前でだんだん弱ってゆく女の蝶、小槇。
男、助国が心配そうに見つめ、助けようとするがどうにもならない。
見ていて苦しく、切なく、泣きそうになってしまった。
小槇は海老反りになったかと思うと、ついに仰向けに倒れてしまう。
後を追うようにだんだん動きが弱ってゆく助国。ついに仰向けになり、
倒れ、もう動かない。哀れな二人・・・。
折り重なって倒れた二人を金色に輝く月灯りが照らしたまま、幕。
美しい情景が残像として目に焼きつく最後だった。
ふうう~~~~~~っ。
なんて苦しく、哀しく、激しいのだろう。
地獄に堕ちてまでいっしょだった二人。
無言の二人。静かだけれど、情熱的だった。
死出の旅では青、赤、金色の背景に白装束がくっきりと浮かび上がり、
描きたての仏画を見ているようだった。
ドラマチックで、絵画的な舞台。苦しいけれど、もう一度見てみたい。
観劇メモ(2)につづきます。