星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

勘吉郎の会 観劇メモ(2)

2009-09-29 | 観劇メモ(伝統芸能系)

観劇メモ(1)からのつづきです。

「鐘が岬」
藤間勘吉郎


舞台には道成寺の鐘を思わせる紐だけが見えている。
その前で素踊りをされる勘吉郎さん。
予備知識は何もないまま、その手の動きにただただ見入ってしまった。
くるくるくるくると回る扇。自由自在に舞う手。
ひゃあ、なんという手首の柔らかさ。
指の動きのなんて細やかで滑らかなこと。
素踊りなのに、そこに木々が立ち、花びらが舞い、恋をする艶やかな
女性の姿がしっかりと見えていた。

しまった! 演目について事前に頭に入れておけばよかった、と後悔。
でも、何も知らなくても見とれてしまった舞台。すごい拍手だった。




清元「色彩間苅豆」
かさね:市川亀治郎
与右衛門:片岡愛之助

捕手:片岡佑次郎、上村純弥

愛之助さんの与右衛門は2007年の浪花花形歌舞伎以来。
あとは仁左衛門さんと玉三郎さんの舞台映像を見たことがあるだけ。
かさねを演じる役者さんによってかなり印象が変わる演目だと思う。
以下、うろおぼえだけど、とりあえず自分用覚え書き。


傘をさし、花道を小走りに出てきた女。
ここで「亀ちゃん!」と声がかかり、場内、一瞬笑いが。
遅れて本舞台に男が登場。
くるまった糸立てを取り去ると、すました顔の与右衞門♪
ああ、もうなんてええ男や~! オペラグラス越しにしばしあんぐり。
糸立てをたたんで抱えたまま、髪についた雨を左手で、そして右手で
順に払い、次に糸立てを両手で持って雨を振り払う。
一連の所作がとにかく小憎らしいほど素敵。
(もうここを思い出しただけで当分は生きていけそうだ~~~。)

かさねのほうは見るからに与右衛門のことが好きでたまらない様子。
与右衛門の手をとって自分のお腹に触らせ、与右衛門ビックリ。
自分の子が?
全然うれしそうに見えない与右衛門。
お腹の子までいるのに心中するのは不憫なことだと。
短いながら愛之助さんの台詞は味わい深く、じっくり聞かせてくれた。
このクドキの場面の亀治郎さんの饒舌な手が、さきほどの勘吉郎さんの
柔らかな手の動きとだぶる。藤間流振付の見せ場のようだ。

川に流れ着いたものを拾い上げる時の与右衛門の所作がリアルで細かい。
手を伸ばして刀の鞘で引き寄せ、鞘についた水を拭き取ってからよく見
ると、拾ったものは・・・なんと髑髏!
この後から話はだんだん悲惨さを帯びてくる。
驚いたかさねが逃げて、土手の上に現れる。
かさね、最初は客席に顔を見せず、横すわりのまま与右衛門に迫ってゆ
く。が、与右衛門の様子がおかしい。おびえている。
こっちを向いたかさね。顔が半分醜く晴れ上がっている!
歩き方もおかしい。
これこそ与右衛門がかつてかさねの母と密通し、その夫を殺した報い。
因果がめぐったかさねに殺気を抱いた与右衛門。ついに鏡を見せる。
(ナント2回も! 残酷な男だよ。)
わたしがおそろしい?
おそろしいのはお前のこころ~~~、とゆっくりした口調で迫るかさね。
亀治郎さんの台詞回しも情念がこもり、聞かせどころになっていた。
与右衛門、かまを持って斬り掛かろうとするが、うまくいかない。
かまを口にくわえたまま花道七三で見せる、気迫のこもった見得。
逆に与右衛門のかまを取り上げて口にくわえ、ほどけた自分の帯を手に
持って上から何度も何度も叩き付けながら与右衛門を追い回すところ、
かさねの凄い迫力にア然。思わず唸ってしまった。
与右衛門に蹴り出され、横向きに坂道を転がり落ちる、かさね。
激しく派手な立ち回りに客席も盛り上がる。

かまを取り戻した与右衛門。ついにかさねを殺し、逃げ去る。
花道を駆け出してゆく、その速さと力強いおみあしにニンマリ~♪
やがて付け打ちの音と呼応して、花道に引き戻される与右衛門。
苦しそうな顔をしている。が、こんな時にもええお顔なのよ~♪
(花道では両側の観客に顔が見えるように左、右に体を振っていた。)
舞台まで戻って、また逃げようとする。
花道七三で、引っ張られる力に抗い、なおも逃げようともがく与右衛門
の手の動きに力がこもる。形相もすごい。
その動きがだんだん衰え、舞台中ほどまで戻される。
その間かさねは、横になったまま後ろ向きになり、左手だけで与右衛門
を引っ張っていた。
そして、立ち上がり、与右衛門のほうに徐々に徐々に向き直ってゆく。
うう、コワイ~。
いや、怖いのは色男の与右衛門。こんな私に誰がした。(by かさね)


いやはや。あまりの激しさにしばらく呆然としてしまった。
迫力満点、怖さ百倍。
これが「芝居心」なのですね。
亀治郎さんのエンターテインメント性というのか、サービス精神という
のか、パワフルな芝居には脱帽。
最後はかさねよりも与右衛門のほうが哀れに思えた私はヘンかしらん?
夜の部だけではあったけれど、行って観て、ほんとうによかった。
怖いものを見た後なのに、幸せな気分になっていた。
これで当分は元気出して生きてゆけます~、わたし♪

<追記>
この舞台観劇を機に、こちらによく遊びに来てくださる、とみたさんと
お会いすることができました。
コメント欄でしかおしゃべりしていなかったのに、なぜか懐かしい気持
ちがして(笑)うれしかったです~♪
私信です・・・ご挨拶しかできませんでしたがまたお会いしましょうね。
ありがとうございました。


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2 コメント

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はい、またお会い致しましょう (とみた)
2009-10-05 12:28:05
亀治郎さんは本当にすごいと思います。玉三郎が大好きで、他の人のかさねなんか見る価値もないと思ってた私の心を動かしました。機会があったら、亀治郎さんは踊る前にどんな打ち合わせをするのか、愛之助さんにお聞きしたい。
返信する
とみたさま♪ (ムンパリ)
2009-10-07 00:16:16
亀治郎さんの舞台でこんなに驚いたのに、玉三郎さんのかさねを
ナマで見たらいったいどんな感じなんでしょう!!
愛之助と亀次郎さん。
去年の博多では団子売りを仲むつまじく踊ってましたが、今回は
ほんとにどんな打ち合わせをしたんでしょうかね?
私も尋ねてみたいです(笑)。

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