星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

御園座「吉例顔見世 通し狂言 仮名手本忠臣蔵」観劇メモ(2)

2009-10-29 | 観劇メモ(伝統芸能系)
●狭之助、定九郎、喜多八編
先日の続きを書く前に、覚えているうちに愛之助さんメモを書いておこう。
備忘録なのでムダに長いです! 以下、すべて愛之助さんダイジェスト版。

関容子さんによれば、判官と勘平のそれぞれの話は、美男の切腹を主題にし
た遁走曲(フーガ)であるとのこと。
(フーガとは一つ、または複数の主題が次々と複雑に模倣・反復されていく
対位法的楽曲のこと。←辞書丸うつし♪)
ならば、師直の若者イジメが繰り返される、若狭之助と判官の関係も似たよ
うなフシがあるゾと思った。むしろ、イジメに合う時間が長いのは若狭之助
のほう。判官=非業の死をより鮮明に印象づけるために、イジメられパート
を若狭之助に割り振った感じ(笑)。
左團次さん演じる憎っくき師直相手にどう立ち向かう? 愛ちゃん若狭之助!







<大序 鶴ケ丘社頭兜改めの場> 桃井若狭之助
幕が下手から徐々に開くと、まず人形がいて、人間では3番目に愛之助さん
の姿が見えた。
目をつむってうつむいた顔・・・そっかー、ここまでは人形の設定なのだ。
若狭之助。顔は白く、眉尻があがり、口は真一文字に結んでいる。
浅葱色の衣装が目を閉じた顔によく映えて、うっとりするほどきれい~♪
浄瑠璃語りに名前を呼ばれて目をあけると一瞬、右にクイッと首を動かす。
(いや、私が師直に気をとられている隙に、もっと動いたかも・・・。)
続いて、両手をぱっと広げて袖をつくろった後、手を前に。
しばらくして、判官と二人そろっておじきをする。
判官がはんなりした気品を感じさせるのに対し、若狭之助は凛々しく、勝ち
気が顔に出ている感じ。

案の定、義貞の兜の扱いをめぐって、先輩大名の師直に異を唱える若狭之助。
(若く、子供のようにまっすぐに行動しちゃうから、若狭之助なのか?)
判官の妻、顔世が呼ばれて義貞の兜を選定した後、判官とともに奉納の準備
のために大名たちを引き連れ、その場を去る。
去り際に師直に一礼。が、無視され、アレ?という顔をし、再び一礼。
今度は明らかに無視されたことがわかり、ムキになって正面に回り、大げさ
な一礼! なおも無視され、フン!という感じで上手に出てゆくのだった。
こういう時の怒った表情の愛之助さん、まず最初に眉がピクッと上がるのが
遠くからでもよくわかった。

残された顔世に結び文を渡す師直。
ていうか、セクハラにおよんじゃってるんですけど~。そこへ正義の味方!
という感じで若狭之助が上手から登場し、顔世を立ち去らせる。
またまた怒る師直、ついに若狭之助のことを罵り始める。
お前など私の一言で明日から喰えなくなるんだぞ・・・みたいなことを
チクチク、ジリジリ。
若さゆえか、その悪口を聞き流すこともできず、いったん刀に手をかける
若狭之助。
が、直義の帰還のタイミングと重なり思いとどまる。

直義が去った後、またまた師直のいびりが。
眉がピクッとあがって、みるみる怒りがあらわになってゆく若狭之助。
わざと焚きつけるような師直のいびり。
若狭之助の怒りが忍耐を越え、ついに刀に手をかけたところへ判官がやっ
てきて引き止め、セーフ! しかし、遺恨は残ったまま。

<三段目 足利館松の間刃傷の場> 桃井若狭之助
登城の日。今日こそ師直を討ち取らんと花道から早足で登場する若狭之助。
七三で裃の右肩を肌脱ぎして、師直に斬り掛かろうとする。
が、先日のことは悪かったと、平謝りの師直。
討とうとする若狭之助の足を持って引き止めるのは師直の家臣、伴内。
興奮状態の若狭之助が肩で息をしているのが、遠くから肉眼でも見えた。
これは若狭之助の家臣である加古川本蔵が、事前に進物を届けてあったから。
鼻薬は効果テキメンというわけだ。
しかもいま、本蔵は衝立の陰に隠れて様子を見ている~~~~~。
刀まで差し出して、平身低頭の師直。あげくに今度は褒めちぎる!
判官は遅いが、あなたは早く来て感心感心。休息所へどうぞ、と。
若狭之助、その応対に「心地悪しゅうござるわい!」と叫ぶと、背中をさす
ろうとするので慌てて拒否、もうすっかり討つ気が失せてしまう。
そこで「ばかな侍だっ!」とだけ言い捨てスタスタ歩いて上手に引っ込む。
このことが塩冶判官を追い込むきっかけとなってしまうのだった・・。
思えば、刃傷におよぶチャンスは若狭之助のほうが何度もあったのに、なぜ
か切腹にいたるのは判官なんだよねぇ~。


<五段目 山崎街道二つ玉の場> 斧定九郎
花道から傘をさして出てくるのは、家老の息子から盗人に成り果てた定九郎。
「松嶋屋」の声がかかり、七三で見得をきめる。
黒羽二重で裾はからげてある。チト「かさね」の与右衛門みたい~。
ひゃあ、このアヤシサはなんなんだぁ~?
顔も手も足も白塗り。眉、目の化粧は若狭之助よりも濃いめ。
ムダに艶っぽい。色悪だそうだ。そのまま傘をおいて稲架に隠れる。

そこへお軽の父の与市兵衞が現れ、稲架の前でひと休み。独り言を言う。
お軽を身売りしてもらった半金の五十両!ありがたい~と、縞の財布をおし
いただく。その瞬間、稲架の間から白い手がヌッと伸びて財布に。
話の一部始終を聞いた定九郎の手が上から財布を掴んだかと思うとすぐさま
与市兵衞を後ろから刺してしまった。
稲架から出てきて、刀を鞘におさめる所作がきれいにきまる。
腰に差した2本の刀は束の色が赤。なんだかたっぷり芝居がかった感じだ。
定九郎、あらためて見るとゾクゾクするほど色っぽい~♪
悪びれもせず平然と髪にかかった稲架の雨しずくをゆっくりと払う。
右手、左手、また右手。(これも与右衛門を思い出す仕草だ。)
ついでに、からげた裾のしずくを両手で絞る、左、右。
そして、さっきの財布の紐を手慣れた感じでクルクルとほどくと、長い紐を
自分の首にかけてから財布の中に手を突っ込む。
数えるわけでもなく、重さをあらためるようにし、ニヤリとして言う。
「ごじゅ~りょう~~。」
押し殺したように沈みこんだ感じの、でもドスの利いた声が2階まで響いた。
ひゃあ~、ゾクゾクッ!
(弁天小僧の、もう化けちゃいられねえ、よりも低く暗く凄みのある声。
ああ、間近でその響きを体に感じたかった~。)

すぐにその場を去ろうと花道へ。
行こうとするが、猪が現れ、押し戻されるように再び稲架に隠れる。
猪が行ったので様子を見に姿を現したところを、ズドンという銃声が!
・・・と、裾をからげた白い右足太ももがみるみる赤い血に染まってゆく。
見ると口から血が!
血は口から太ももに落ち、そこから右足の甲にポタポタ流れ落ちていた。
白い肌に赤い血。刀の赤い束。黒の羽二重。
異様な光景が、白、赤、黒の世界になり、わけもなく美しいと思ってしまう。
両手を前に突き出してもがく定九郎、頭を上手に向けて倒れる。
右足は伸び、左足はくの字に折れたまま、両手を広げて仰向けになった。
まるでキリストのようなポーズだが、顔は右(舞台奥)に向けたまま。
そこへ勘平がやってきて、猪だと思って暗いなか手探りで縄をかける。
が、引っ張ろうとするが動かない。紐を引っ張ると首が持ち上がる。
それ、さっき定九郎が首にひっかけ財布の紐だよ~と思い出して笑えた。
けどちょっと悲哀も感じてしまった。だって愛之助さんだから・・・。
ここから先は勘平の物語へ。


<十一段目 高家奥庭泉水の場> 竹森喜多八隆重
討ち入りの場の立ち回りはエンターテインメント性があって楽しかった。
男女蔵さん演じる小林平八郎が、泉水のまわりで浪士たちとやりあっている。
ここへ現れる喜多八、一対一での勝負に。
雁木模様の衣装にたすき掛け、鉢金つきのハチ巻姿がカッコいいんだな~。
歌舞伎にしてはスピード感あるし、けっこう迫力ある殺陣。
かと思えば、池の前で雪を握って投げ合ったりもする。
そのうち喜多八は池へと落っこちてしまう。(エーッ!)
小林が他の浪士たちに囲まれている間に、池の中から顔を出し、這い上がっ
て小林の腹を突く喜多八。相手がひるんだところへ背後に回りトドメ。
・・・・・・
師直の首を討ちとって勝どきをあげる浪士たち。
笑顔の皆に混じって、仲間に話しかけ、うれしそうな顔の喜多八がいた。
皆が並ぶと、喜多八と力弥だけが白い顔♪
そういえば愛之助さん、3役とも白塗りのメイクだったなあ~。

ダイジェスト版、完!


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4 コメント

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最後は面白かったですね (とみた)
2009-10-30 12:28:47
みんな、やれやれという雰囲気で言葉を交わしているのが。声は聞こえなくても、「この後一杯どうですか」とは言ってなさそうでした。

若狭之助の、目をつぶってる写真ありましたか?あれが今月一番気に入った顔です。
返信する
いやはやなんとも (来夢)
2009-10-30 21:43:37
すごいですね、
読んでいると
「ああ確かにそうだったね」って思うけれど、こんなに正確に記憶しているなんて。
感服つかまります。
愛之助さん、いつお休みするんですかな、来年3月は日生ですって。三月花形歌舞伎 染さまとともに。
おいらもがんばらなくっちゃ
返信する
とみたさま♪ (ムンパリ)
2009-10-31 13:27:59
いやあ,最後があそこで終わるとは思いませんでしたが
結末がわかっているせいか、十一段目は楽しく見られました。

> 「この後一杯どうですか」とは言ってなさそうでした。
あはは~。
最前列なら聞こえてきたかも(笑)。
皆さん、晴れ晴れした表情で気持ちいい幕切れでした。

若狭之助の舞台写真・・・う、それは記憶がないです。
あれば気づいてるはず~。
今回は早めに行ったほうがよかったんですね。
いま頭の中にある顔が消えてしまわないようにしよっと♪
返信する
来夢さま♪ (ムンパリ)
2009-10-31 13:30:23
備忘録なんで・・・エヘヘ。
愛之助さん出演の舞台は映像化されないことが多いので、
メモに残しておきたくてつい長くなってしまいます。
三月花形歌舞伎の「染模様恩愛御書」は3年前に大阪で
初演を見ました。東京の再演はバージョンアップするとか?

> おいらもがんばらなくっちゃ
はい、ムリせず、私もきばります~♪

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