※これはNODA・MAPの舞台「ロープ」という作品に登場した戦争の実況中継シーンの形式を真似て書きました。
ギィ、ギギギー、ギィーーー。
あの朝。マンションの高層階はまるで難破船のようだった。
恐ろしさのあまり、最初は声も出なかった。建物が天井から崩れてくるように感じてからは叫び声をあげ続けていた。
揺れがおさまってから、物が散乱して足の踏み場もない部屋を這い出た。電気はつかず、なんとか状況を把握しようと夫と二人、闇の中でようやくたどりついたベランダ。そこから見た光景は・・・(あえて実況中継風に)
「ただいま視界270度のベランダにいます。大阪から神戸、淡路島まで見渡せる風景が何やら異常であります。いつも見えているはずの高速道路の照明、ハイウェイランプが真っ暗なんです。
いえ、それどころか、街の灯りらしきものが何一つ見えません。いったい何が起こったのでしょう。
あ、闇が。さっきまで1色にしか見えなかった闇に色が混じり始めました。
その色は・・・朱色です。あれは、炎ですね。
すでに立ちのぼっている炎が三つ、四つ。あ、また一つ。おお、向こうにも一つ。
人魂のようにポッ、ポッと生まれてきています。
あ、西の空が赤いです。あれは神戸のほう。須磨よりも東側です。
炎とともに白くたなびいているのは煙でしょうか。
はっきりとはわかりません。
まだ空は闇に包まれています。
空が少しずつブルーに変わってきました。
ああ、なんという眺めでしょう。
いま目の前にひろがっている風景をそのまま口にしてみます。
阪神電車の車両がストップしたまま。ぶら下がって見えるのはレールでしょうか。
正面の大型マンションがゆがんでいます。
有名菓子メーカーのビルもつぶれて傾いています。
阪神高速湾岸線は橋が落下した状態です。
阪神高速神戸線の道路が、なんと横倒しになっています。道路が横転です。
あっちこっちに見えた炎はさらに大く広がっています。
この光景を何と呼べばいいのか、私にはわかりません・・・。」
たった数十分の間に起きた出来事を、もしも冷静に実況したとしたらこんなふうになったかもしれない。
私が見た事が、そのあと具体的に犠牲者の数となって発表されてゆくのがいたたまれなかった。生き残ったことにほんの少し後ろめたさがあるとしたら、阪神大震災の当事者でありながら、この朝あまりに多くの出来事を傍観者として目撃してしまったせいだと思う。
あの時、私が窓から情報を得ている間に命を落とされた方々のことを思いながら、今年も1月17日を祈りの日にしよう。
最新の画像[もっと見る]
-
祈りの日。 3週間前
-
祈りの日。 1年前
-
祈りの日。 2年前
-
祈りの日。 3年前
-
「Runaway」配信スタート。 4年前
-
モンクリロスと自主IP企画。 4年前
-
モンクリロスと自主IP企画。 4年前
-
モンクリロスと自主IP企画。 4年前
-
「Take Over」限定版、アスマートでフラゲ。 4年前
-
あの人の10年 4年前