星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

映画「麻薬3号」

2011-05-15 | 演劇・ダンス・映画・音楽・古典・TV
タイトル  麻薬3号
映画館   元町映画館
日時    2011年4月30日

いやー、ことのほか面白かったんですよ、これが。
元町映画館でGWに開催されていた「モトマチセレクション
vol.3 元町が俺を呼んでるぜ」

日活アクション映画+元町映画館のメイキング。ホントは全
部観たかったし、予告編にあった『赤い波止場』にも惹かれ
たけれど、時間の都合で『麻薬3号』1本に。
が、昔のモノクロのアクション映画がこれほどとは。画質と
映画の技術的なことは全くわからないけど、ツラツラ書くう
ちにこんなに長くなっちゃいました~。

↓元町映画館の手作りポスターがステキ~!
※ポスターのメイキング話は元町映画館支配人のブログへ。



<キャスト、スタッフ>
●キャスト
長門裕之(慎二)
南田洋子(啓子)
河野秋武(五味と名乗る医者くずれの作家)
二本柳寛(料理屋の主人、実は大阪のヤクザ組織のボス)
白木マリ(大阪のヤクザ組織にいる女)
近藤宏(大阪のヤクザ組織の一員、海岸で殴り合う相手)
大坂志郎(「文化レポート」社の真面目な社員)
柳谷寛(映画館の支配人)
日守新一、小園蓉子、高原駿雄、小林重四郎、植村謙二郎、
丘野美子、西村晃

●スタッフ
監督/古川卓巳
原作/五味康祐
脚本/松浦健郎
撮影/山崎善弘
音楽/小杉太一郎


<あらすじ>
「文化レポート」という新聞社を経営する慎二、実態は神戸の
港町にはびこるヤクザ。
ある日安部啓子という美しい女性が東京からやってくる。啓子
は小田という男を捜しているのだと慎二の会社を訪ねて言う。
慎二は彼女を連れ、麻薬中毒患者たちの巣窟に行くが、その中
に自称作家の五味や、仰向け向けに寝転んで新聞で顔を隠して
いる男がいた。啓子があまりの光景に驚いて逃げ去った後で、
慎二は新聞で顔を隠している男が小田であることを知る。彼は
「俺は人を殺した、啓子を頼む」と慎二に言い残して自首する。
啓子と慎二はやがて恋に堕ち、啓子は慎二のいる神戸で生活を
始めるが・・・。



<神戸・コウベ・KOBE・こうべ>
どこを切っても神戸の金太郎飴♪
いまの神戸を知る者にとっては、どこか見覚えのある懐かし
い風景のようでもある反面、客観的に観た昭和30年代の港町
コウベの圧倒的に猥雑なエネルギーに魅了されてしまった。
なんといえばいいか、現代のようにたまたまその街をロケに
使ったのではなく、当時の神戸でないと成り立たない題材を
「神戸」として撮影しているから、街も人物も生きている。
映画が大ウソであることはわかっていても、ムリなく気持ち
よくのめりこめる。そんな映画だと思う。

<やるやん! ジャポンノワール>
こんな言い方はないのかな?↑
タイトルの「麻薬3号」とはヘロインのことらしい。
その取引現場に立ち会うことになった慎二(長門裕之)。
真っ暗闇の海で、彼らが乗った船に神戸の水上警察の船(だ
と思う)がどこかから嗅ぎ付けて迫ってくる緊迫感。
かと思えば中国のアヘン窟もおどろくヘロイン中毒人間たち
のアヤシイ巣窟。その戸口番の老女の死人のような顔・・・。
はたまた、スーツでキメタ組織の男たちのカッコよさと本音。
ヤクザの親分がいきなり慎二の手の甲に突き立てたフォーク
の本気の迫力。

<やって来るのは男、待ち続けるのは女>
男と女の見せ方にも注目してみた。
源氏物語以来の男と女の古風な関係をカッコよく、しかもエ
ロチックに見せてくれる映画でもある。
待つ女をバカな女と見るか、可愛い女と見るか。
とにかく南田洋子さんがきれい~~~!可愛い!
気の強いナマイキな東京のOLが、ふらりとやって来た神戸で
ヤクザな男に急速に惹かれてゆくところなど、思うように話
が進んで面白い。
恋に堕ち、男の側で暮らし、待つ身となるそのロマンと悲劇。
一夜を過ごした翌朝、仕事に行く男の手をとって「私もそこ
までいっしょにいきたい」と甘えて歩く女。
その手をふりほどき「俺、女の人のそういうところが大っ嫌
いなんだ」という男。だけど男はそう言いつつも優しい笑み
を浮かべながら女の顔を見つめている。ここにクウ~ッとき
たワタシ。こんな表情ができる若き長門裕之にナント惚れそ
うになったではないか。
二人はこののち本当に夫婦になるんだという歴史上の事実が
頭に浮かぶものだから、さらにロマンチックが止まらない♪

<実は●●>
歌舞伎や文楽によくある役名「漁師鱶七 実は金輪五郎今国」
みたいなカンジ、といえばいいか。
男たちの仕事の隠れ蓑と実態が極端に違うことをあからさま
に見せているところが、戦後から経済成長期へと移ってゆく
昭和30年代らしい。

「文化レポート」という新聞社の看板を掲げているのは、
主人公の慎二。実はヤクザ。
映画館の支配人(だっけ?)は実は元ヤクザ。小遣い稼ぎに
今もヤクの取引に首を突っ込んだりしている。
料理屋の主人は実はヤクザの親分で、やたら男前。

若い慎二が経営する新聞社の新入社員として働くことになっ
たのが、真面目さが取り柄のヨボい男(大坂志郎、役名失念)。
といっても社員はこの男一人だけれど。
大金を動かすヤクザの生活感覚と、一般の人間の庶民感覚と
の対比がこの二人を通して浮き彫りにされる。
最初はカッコイイ慎二 VS ナサケない社員 だったのが、堅気
の人間の暮らしはイカシてないけどワルクない、と。
(この新聞社にいること自体、堅気とは言えないが・・・。)
啓子が行方をくらます時に慎二宛のメモを託す相手が、この
真面目男なのだ。
慎二が女のために堅気になろうとする、その気持ちに寄り添
ってなにげに言う台詞と、それに慎二が返す台詞。あの屋上
での二人の素朴なやりとりがこの映画のかなり重要なシーン
として心に刻まれた。大坂志郎、ええやん!

最後になったが、原作者は『柳生武芸帳』を書いた五味康祐
1957年に同名の小説「麻薬3号」を文藝春秋新社から発表し
ている。Wikipediaによれば、実家は映画興行師。ほほお~!
キャストはネットで調べたが、西村晃はどこに出てたのか?

以下、自分用備忘録。

<ロケ場所エトセトラ>
●メリケン波止場
慎二(長門裕之)が啓子(南田洋子)を連れて小田という男
を探しまわる1シーン。
麻薬取引のために慎二たちが待ち合わせる場所も港のどこか
らしいが不明。
●モダン寺(外観)
麻薬中毒患者たちの巣窟。通称モダン寺で本名は本願寺神戸
別院。1階に柱のあるピロティ構造の外観が使われていた。
ただ、アップ映像では「別院」ではなく「寺院」という縦書
きの漢字が読めたのが少しひっかかる。当時は呼び名が違っ
ていたのだろうか?
神戸教会も上部だけ映っていたと思う。
●須磨浦ロープウェイ
ロープウェイに乗る必然性はまったくないと思うけど、なぜ
か二人きりで立ったまま乗っている。啓子が東京に帰ると言
い出し、引き止める慎二。二人の初めてのキスシーン。
初めにもたれかかっていったのは啓子のほうだった。
●高架下のジャヴァ
慎二が支配人?(柳谷寛)に会うときの喫茶店。その店がま
だあることがスゴイ。店内もおそらくあまり変わっていない
のでは? 映画では看板にネオン管が使われていた。
●移情閣
舞子の移情閣前の道路は「風の歌を聴け」にも登場した。
麻薬の取引のために2台の車を止め、車の修理を手伝ってい
ると見せかけて二人で車の下に潜りこむシーンに感心した。
2台のバイクで警官が近づいてきた時のスリリングなこと。
●外人墓地(神戸市立外国人墓地)か追谷墓園?
慎二が小田という男に会うために墓地を訪れるシーンがあっ
た。坂の下から上のほうを見上げた時の風景が外人墓地のよ
うでもあり、追谷墓園のようにも見えた。
●須磨の海岸
砂浜の決闘シーン。拳銃を持っているくせに素手で殴り合う
男どうし。なぜ素手なのかはわかっているけれど、思いっき
り堂々と青春しているのがテレるやらカッコイイやら。
敵ながら「だれだって堅気になりたいんだ」というストレー
トな心情吐露にドギマギ♪ カッコイイぞ、近藤宏(←感想を
書くために調べた。)やがて、映像が砂浜から切り替わった
途端、鳴り響く銃声! 車の中で待つ女(白木マリ)が嘆きの
表情に変わる。この銃声の意味を知っているのは観客だけな
のだ。くう~っ、泣かせるやん! ソフト帽にスーツをガチ
ガチにキメた近藤宏の男の友情にヤラレタぜ。
●神戸栄光教会
啓子が「教会に連れていって」と慎二に頼み、二人で行くの
がこの教会。俯瞰から観た映像には、1970年3月まで走って
いた市電(山手・上沢線)が、教会の美しい建物と道といっ
しょに映っており、ファンタスティック!ワンダフル!

このほかにも三ノ宮から元町にかけての高架下、北野町から
中山手一帯にかけての入り組んだ界隈・洋館など、懐かしい
ような、まったく知らないような神戸の風景がいっぱい使わ
れている。どこにでもあるきれいな街ではなく、まだ戦後の
面影が残るチョットアヤシイ港町の香りがプンプンした。


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2 コメント

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ありがとうございます。 (おもしろ)
2011-05-23 15:26:57
元町映画館支配人 おもしろ でございます。
『麻薬3号』ご来館ありがとうございます。
とてもおもしろかったでしょ?
DVDも出てないので、超貴重フィルムです。
そして、とうとう長門さんお亡くなりになりましたね。
ご冥福をお祈りいたします。合掌。
しかしこんなにおもしろい映画なのに、お客さんが全然
入りませんでした。T_T
悔しいです。
ムンパリさんのように楽しんで頂けると元町映画館も
嬉しいです。ありがとうございます。
それに、こんなにちゃんとした感想はとてもありがたいです。T_T

ちなみに、慎二の隠家の屋上は当時の讀賣新聞のビルの屋上だそうです。
そしてプチ情報(笑)。
ジャヴァの関係者は最初4人!でお見えになりました。
そしておかみさんは5日間!通ってくれました。
よっぽど嬉しかったのでしょうね。とても感謝されました。

今後とも元町映画館をよろしくお願いしまーす。

返信する
おもしろさま♪ (ムンパリ)
2011-05-23 17:15:38
コメントをいただきありがとうございます。
こちらこそポスターを勝手に紹介&掲載させていただき
まして恐縮です!

長門さんのこと、ビックリしました。
と同時にこの映画のことを思い出し、お二人はこれから
ずっとごいっしょなんだと思い熱いものがこみあげました。
長門さん&南田さんご夫妻が出演された貴重&素敵な映画を
見られたことにあらためて感謝でございます。

スプリング・フィーバーといい、観客の少ない映画を
好んで拝見している私です(笑)。
いやー、あとのお客さんたち、皆さんとても真剣で、
いったいどういう方たちなんだろう?と。
同じ空間でジャヴァのおかみさんか関係者の方と
ごいっしょできてたら嬉しいんですけど♪
神戸とか懐かしさを抜きにしても面白い映画だったと
思いますよ。眠っているのはホントにもったいないです!

> 慎二の隠家の屋上は当時の讀賣新聞のビルの屋上だそうです。
あ、それはわからないはずですね!
そうでしたか。ありがとうございます♪
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