…あ、やばい。またこの人の口癖がでた。
あー参っちゃう、またダリー話が始まるわー。
まあこの人に付き合ってやって来た私が悪いんだけど、
顔だけは好みなのよねー顔だけは。。
あーもうまたビールの話だわ、あんたはおとなしく麦茶でも飲んでりゃいーのよ。
ホントまあ話がくどいったらこの上ないわねー。
どのくらいくどいかっていうと、
養蜂をひっそりと産業にしている村があるのね。
春になると休耕している田や畑にはそれはもうたくさんのレンゲが咲くの。
養蜂園の箱の中には蜜蜂たちがこれまた数え切れないほどいて、
朝になると太陽の光を浴びて金色に輝きながら無数の蜂たちがレンゲ畑に向かうの。
その光景はまるでキラキラしたピンク色の絨毯に金色のシャワーが降り注ぐみたいなの。
そんな風にして集めた蜂蜜が甘くないはずはないわ。
丁寧に瓶詰めされて可愛いラベルを貼って出来上がり。町の小洒落た雑貨屋の店頭に並ぶのよ。
そこに買い物にやってきたナチュラル系ファッションに身を包んだ綺麗なお母さんが、
少し値の張るその蜂蜜を値札も見ないで買い物カゴにいれて、他に買ったものと一緒に
オーダーメイドのトートバッグにいれて帰る。
さて、家に帰って託児所に預けていた5歳の男の子を迎えに行くわ。
帰りに高級スーパーの前で毎日お菓子をせがむの。
しょうがないわねと言ってこの日は棒付きの丸いキャンディを買ってあげた。
家に帰り着くと、お母さんは買い物を丁寧に棚にしまい、外に出て洗濯物を取り入れる。
男の子はさっそく買ってもらった棒付きのキャンディの包装紙を慌ててはがすわ。
ストロベリーミルク味のキャンディを舐めながら、男の子は良いアイデアを思いつく。
今日お母さんが雑貨屋で美味しそうな蜂蜜を買って戸棚にしまったのを見てたのね。
そっと棚を開けて蜂蜜の瓶を開けて、その黄金の表面に舐めていた丸いキャンディを沈める。
さらに男の子はそれだけじゃ飽き足らず、隣に置いてあった砂糖壺のなかでキャンディを転がし
シュガートッピング。
さあ、出来上がり!これはとびきり甘くてびっくりするくらいおいしいはずだ!
今まで味わったことのない素晴らしい甘さを想像し、うっとりした顔で男の子は
口に真っ白くコーティングされたキャンディを運んで口の中でゆっくりと転がした…
その男の子の口の中ぐらいくどいって話よまったく。
あら、まだ喋ってる。別の話してるわね。
はあ、もう飽きちゃった。この人ともフェードアウトかしら。
寝たふりしましょ。
music * yeah / wannadies